日本ハム・大谷翔平【写真:田口有史】

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今オフ移籍も「ファンは受け入れる」!? MLB球団にとって大谷は「唯一の選択肢」

 日本ハムが29日の日本シリーズ第6戦に勝利し、10年ぶりの日本一を決めたことで、米国では大谷翔平投手の去就に注目が集まっている。メジャー挑戦は来オフ以降になる可能性が高いと見られているが、MLB球団は早期の渡米を熱望。早くも今オフには注目が集まることになりそうで、日本シリーズ制覇を受けて、米メディアは「ファンはオオタニの移籍を幾らか容易に受け入れることだろう」と伝えている。

 米CBSスポーツは「ファイターズ日本シリーズ優勝後、注目はショウヘイ・オオタニの移籍決断へ」と題した特集記事を掲載。まずは、今年の日本シリーズの結果について伝えており、「もし、第7戦目が行われていたら、ヒロキ・クロダvsショウヘイ・オオタニの豪華投手対決に注目が集まっただろう。ドジャースとヤンキースに在籍していたクロダは同世代で最高の日本人投手のひとりだ」と詳細に記している。

 その上で、「22歳のオオタニは世界最高の投手だ」と断言。今季の投打両方の成績や、日本最速記録を何度も更新した事実に触れつつ、「日本シリーズが終了した今、注目はオオタニ、そしてファイターズが彼をMLB球団に移籍させるかどうかに集まるだろう」と言及している。

 まずは、「日本ハムが大谷を移籍させる理由」について説明。現在のポスティングシステム(入札制度)では、譲渡金の上限が2000万ドル(約21億円)に設定されているとした上で「オオタニは素晴らしい選手なので、ファイターズは譲渡金を2000万ドルに設定するだろう。大きな収入である。日本の野球は活気こそあるが、財政面ではMLBに遠く及ばない」と指摘している。譲渡金は日本ハムにとって大きな理由になるというのだ。

「MLB球団はオオタニの移籍が分かるまで、大物選手との契約は控える」

 そして、日本ハムが日本一に輝いたことで、メジャー挑戦への可能性は高まったと予想。「ファイターズは優勝したので、ファンはオオタニの移籍を幾らか容易に受け入れることだろう。もし日本シリーズで負けていたら、オオタニ放出は困難だったのではないか。彼は最高の投手であり、最高の打者のひとりだ。そして、勝利のカギとなる選手である。ファイターズは良いチームだ。勝利のためにオオタニを手放したくない気持ちがあっただろうが、今は違う」。今オフに移籍に踏み切ってもいいのではないかというトーンだ。

 一方で、日本ハムが今オフにはポスティングを容認しない理由については
「ファイターズがオオタニを移籍させると決断すれば、オフシーズンならいつでもポスティングに出すことができる」と指摘。確かに、来オフ以降でも、これまでの選手より若いうちにメジャー挑戦に踏み切れることになる。ただ、大谷の去就が決まるまでは、メジャー球団も動きづらくなるという。それだけ、二刀流右腕はすでに大きな注目を浴びている。

「MLB球団はオオタニの移籍が分かるまで、大物選手との契約は控えるだろう。彼らは資金を早い段階で使い果たしたくはないし、オオタニの移籍が決まった時に市場から除外されたくないのだ。オオタニのポスティングが決まるまで、FA市場は微動だにしないだろう」

 記事では、このように説明。大谷獲得に興味を示している球団は、それだけ多いということだ。また、今オフにメジャー挑戦が実現すれば、FA市場に有力投手が少ないことで、大谷にもプラスに作用するという。

「全チームが彼を欲しがり、オファーを出したいと思うことだろう」

「オオタニは世界中の名だたる選手たちと勝負したいだろう。しかし、結局のところ金がものを言う。今シーズン、クロダは日本球界で最高年俸の選手となった。しかし、たったの490万ドル(実際は6億円=推定)だ。MLBでは中継ぎ投手がもらう額だ。2016年、オオタニの年俸は183万ドル(約2億円)。MLBで彼は容易に10倍の額を手にするだろう。14、5倍になるかもしれない。 

 今度のFA市場は極端に目玉選手が不足している。先発投手としては、リッチ・ヒル(ドジャース)とジェレミー・ヘリクソン(フィリーズ)が最高の選手になるだろう。今冬、ファイターズがオオタニをポスティングに出せば、彼は市場で一躍最高の投手となり、入札合戦は熾烈を極める。若いエースがほしい? オオタニが唯一の選択肢だ。FA市場に彼の代わりはいない。彼は大金を手にするだろう」

 大谷は現時点で年平均20億円以上の年俸を「容易に」手にできると分析。30億円に迫る可能性もあるという。入札金が無制限で、落札した1球団しか交渉権を獲得できなかった旧ポスティングシステムに比べ、2000万ドルを支払う意志があればどの球団も交渉のテーブルに着くことの出来る現在のシステムは、選手に有利とされている。FA選手とほぼ同じ条件だ。記事では、旧システムで移籍したダルビッシュ有(レンジャーズ)は6年総5600万ドル(約59億円)だったのに対して、新システム第1号の田中将大(ヤンキース)は7年総額1億5500万ドル(約162億円)と超大型契約になったことを「非常に大きな違い」と指摘。大谷の年俸が跳ね上がることも確実だ。

 さらに、大谷が海外FA権を取得するまで待つのは現実的ではないことや、米国内では長期的には投手として期待されていることなども紹介。その上で、「彼は22歳のエース級投手である。彼はチームの短期的、長期的プランにあてはまる。全チームが彼を欲しがり、オファーを出したいと思うことだろう」と締めくくっている。

 まだ先と見られている大谷のメジャー挑戦だが、日本シリーズを制したことで、早くも“狂騒曲”が始まることになるのかもしれない。