映画「ブリジット・ジョーンズの日記」シリーズ、11年ぶりの続編「ブリジット・ジョーンズ ダメな私の最後のモテ期」が10月29日に公開されました。

レニー・ゼルウィガー演じる主人公のブリジットは、2作目「ブリジット・ジョーンズの日記 はちきれそうなわたしの12か月」で、弁護士のマーク(コリン・ファース)と結ばれたはずが、43歳になってもいまだ独身。恋愛もごぶさただったのですが、ひょんなことからイケメンのジャック(パトリック・デンプシー)とひと晩を共に。

さらに、その直後、再会した元彼のマークとも関係してしまいます。そして、まさかの妊娠! おなかの子の父親がマークかジャックかわからないままに、出産の日はどんどん近づいていく。そんなドタバタぶりで笑わせてくれます。実は原題は「Bridget Jone’s Baby」で、ロマンスよりブリジットが子どもを産むことが話のメインになっています。

映画版ブリジットは40代・独身・未婚のまま

このシリーズの原作は、イギリスの作家ヘレン・フィールディングが1996年に発表した自伝的小説です。主人公のブリジットはロンドンという都会でテレビや出版の仕事をし、自由気ままに生きているようで、恋愛もいま一つうまくいかず、ひとりきりの生活がさびしくなることも。

そんな“シングルトン”(独身女性)の生き方をリアルに描き、ベストセラーになりました。小説では2作目の後、ブリジットはマークと結婚して2人の子どもを産むのですが、今回の映画ではシングルのまま。40代になっても相変わらずひとり暮らしで、テレビ局での仕事もうまくいっているようでいってない。

同年代の女友だちはみんな結婚し、ゲイの友人でさえ養子をもらうと言う。誕生日にはアパートでひとりぼっち。そんな時、まさに神の啓示のように妊娠検査薬が「pregnant(妊娠しています)」の文字を告げるのです。

イギリスでも高齢出産は増加している

この映画が、時代にフィットしていると思う点は、ブリジットが30代ではなく40代で初めて妊娠するということ。ウートピにも「イギリスで高齢出産が増えている」というレポートがありますが、高齢出産の増加は世界的な傾向です。日本でも、厚生労働省の最新の調査*によると、高齢出産はこの20年間でも格段に増えています。

映画の中で妊娠が判明した後、ブリジットはテレビ局の同僚から「どうするの? 産むの?」と聞かれます。そして、43歳のブリジットはこう答えます。

“ブリジット「わからない。でも、これが最後のチャンスかも?」”

前出の記事には、「多くのヨーロッパの国では、43歳で人工授精の補助が打ち切られる」という報告もあり、ブリジットは自然妊娠ではあるものの年齢的にはまさにギリギリ。いつも余裕がなくてバタバタしていて、友達との約束にも遅刻しがちなブリジットらしい“駆け込み出産”です。

そして、ブリジットは妊婦健診で病院に通ううちに産むことを決意。2人の父親候補の助けがなくてもシングルマザーとして頑張るつもりでしたが、マークとジャックも父親になることに前向きになっていきます。

*平成27(2015)年人口動態統計(確定数)の状況

40代の出産だからこそ、ハッピーに思う

ブリジットも男たちも、40代になった今だからこそ、親になることを受け入れ、それに希望を見出しているように見えます。3人とも仕事第一でやってきた人生、40代になって初めて子どもができたことをハッピーと感じる。

それは、20代や30代で結婚・出産をクリアした人たちから見れば遅すぎる変化でしょうが、良い悪いではなく、これこそ、今の40代にとってのリアルなのでしょう。

このシリーズのファンである女性たちも、多くはブリジットと同世代。

これまでブリジットを自分の気持ちの代弁者として、つまり独身女性の代表として見てきましたが、たとえブリジットが自分と違う道を行くとしても、ラストチャンスとして子どもを産む展開は、応援できるのではないでしょうか。

実は原作者であり、映画のストーリーづくりにも関わったヘレン・フィールディング自身も、46歳と48歳で出産しています。ブリジットが40代で母になるのは、現代女性のリアルストーリーの帰結として必然だったのかもしれません。

(小田慶子)