医師234人が23種類のコンピュータに勝利!(shutterstock.com)

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 『JAMA Internal Medicine』(オンライン版・10月11日)によれば、「医師の診断精度はコンピュータが蓄積した症状プログラムよりも優れている」という事実が報告された。

 報告によると、ハーバード大学医学校のAteev Mehrotra准教授は、医師234人と、コンピュータによる23種類の症状チェックプログラムを対象に、仮想の患者45例の病態や症状を明示したうえで、正確な疾患名を判定させた。

 23種類の症状チェックプログラムは、メイヨー・クリニック、米国小児科学会(AAP)、英国国民健康保険(NHS)などがウェブで公表している診断情報や、iPhoneやアンドロイドのスマートフォンアプリが使用された。

 その結果、単一の疾患名の正答率は、「医師が72%」、「症状チェックプログラムが34%」。3つの疾患名の正答率は、「医師が84%」、「症状チェックプログラムが51%」。

 いずれも医師の診断能力は、症状チェックプログラムよりも優れていた。また、結膜炎や副鼻腔炎などの単純な疾患名の正答率は、「医師が65%」、「症状チェックプログラムが40%」と大差はなかった。

 しかし、がんなどの難疾患名の正答率は、「医師が79%」、「症状チェックプログラムが24%」と、医師が3倍以上の好成績を示した。

 この研究によって、コンピュータに対する医師の診断精度の優位性を実証したことになる。

コンピュータやAIが医師を超える日は来るのか?

 コンピュータやAI(人工知能)の進化が医師の診断能力を超える日が来るかもしれない――。そんな予測を裏づける研究や調査もある。しかし、この研究のように医師の診断能力の優位性を再確認した研究も重要だ。

 米国家庭医学会(AAFP)のJohn Meigs氏は「このような診断プログラムは、あくまでも医師の判断をアシストするに過ぎないので、医師の確定診断に取って代わることはない。

 ただ、医師の確定診断の後に、医師が膨大な量のデータベースを活用して、ガイドラインや治療プロトコルを検索したり、選別するためには役立つだろう」と説明する。

 また、Mehrotra准教授は「プログラムの診断精度が上がれば、気になる症状のある人が受診の必要があるかどうかをセルフチェックできる。医師に問題ないと言われても、コンピュータで自己判断できれば、患者も医師も時間を有効に使えるはずだ」と評価する。

 ただし、Mehrotra准教授はコンピュータやAIが医師と同じ診断レベルに到達する可能性も否定しない。「10〜20年前なら、コンピュータに税金の処理を任せるのは不安だったが、今では毎年使っているからだ」と話す。

 コンピュータやAIは、どこまで医師をサポートできるのだろう?
AIの実用化が、医師の負担を減らし、患者との信頼関係も深める

 たとえば、東京大学医学研究所ヒトゲノム解析センターの宮野悟センター長は、2015年7月にIBMのAI「Watson(ワトソン)」を導入。

 Watsonが血液腫瘍を中心とする2000万件以上の研究論文や1500万件を超える薬剤の特許情報を学習し、患者の症状やゲノム情報から原因疾患と治療法を探索・推論する診療システムの開発をめざししている。

 また、自治医科大学地域医療学の石川鎮清教授は、ディープラーニング(深層学習)を活用した総合診療支援システムのホワイト・ジャックを複数の企業と共同開発。

 ホワイト・ジャックが自治医科大学に蓄積された8000万件の診療情報やレセプトデータの他、鑑別の感度・特異度に関する研究論文を学習し、患者の症状から複数の鑑別疾患を挙げながら、発症の確率を割り出す診療システムを構築しつつある。

 このように推論・学習するコンピュータやAIの実用化が進めば進むほど、医師の負担が軽減され、医師はより効率的に高精度の確定診断が行えるので、患者との信頼関係もますます深まるにちがいない。医師をサポートするコンピュータやAIの活躍に期待しよう。
(文=編集部)