習近平夫人も愛する中国ファッションブランド 世界進出の野望

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「欧米の有名ブランドは、あなたに似合う服を理解していない。私に任せてほしい」。

クチュールデザイナーのグレイス・チェン(Grace Chen)は上海の自宅で開いたパーティで、大勢の友人や顧客を前に、中国のラグジュアリーファッションを担うのは海外ブランドではなく、自分たちだという思いを語った。彼女のクライアントには中国のビジネスエリートや政治家らが名を連ねている。

1970年代生まれのチェンは、ニューヨークとロサンゼルスで15年間暮らし、ヘレン・ミレンやオプラ・ウィンフリーのようなセレブに認められ、デザイナーとして名を高めた。その後、2009年に上海に戻り、自分の名前を冠したクチュールハウスを立ち上げ、中国の富裕層御用達ブランドになった。

チェンのブランドを愛用するセレブは中国の習近平国家主席の妻のポン・リーユエン(彭麗媛)、李克強首相夫人のチェン・ホン(程虹)、元駐英国大使のフー・イン(傅莹)、女優のチン・ハイルー(秦海璐)、リウ・シャオチン(劉暁慶)など枚挙にいとまがない。

チェンは、シャネルのスーツやアルマーニのパンツに満足できない裕福な中国人女性にとって、頼りになるデザイナーだ。

中国富裕層の「欧米ブランド離れ」

「私の顧客の多くは、ヨーロッパのファッションブランドが自分たちに似合うものや好きなものを理解していないと不満を抱いている。彼女たちは最近の欧米ブランドが提供するアバンギャルドな美しさではなく、シンプルでありながら時代に左右されない高級感、快適さを持つ洗練された服を求めている」(チェン)

チェンは「かつてはD&G、グッチ、プラダのような欧米ブランドの信奉者だった中国人は、ラグジュアリーの意味を深く理解するにつれ、自分たちの好みやスタイルを反映した服を着たいと考えるようになった」と語った。彼女のブランドの売上は2009年から倍々ゲームで増えている。

この夏、チェンは上海のフランス租界エリアの古い邸宅を”グレイス・チェンの館”としてオープンした。高い壁に視界を遮られたその建物は、コレクションのショールーム、VIPの試着サロン、アートギャラリー、図書館、ダイニングルーム、ファッションラウンジの機能を持ち、中国の有力プライベートファンドのChengwei Capital(成為創業資本)からも出資を受けている。

チェンの作る服は、クチュール仕立てのパーティ用ドレスだけでなく、カクテルドレス、礼服、普段着と幅広く、中国の素材に欧米のテイストをブレンドしている。「私たちはニッチのクチュールスタジオから、一人前のファッションブランドに巣立とうとしている」と、チェンは語った。

チェンのデザインは、海外のファッションや外交関係者の注目も集めるようになった。2015年、チェンはブリュッセルで、中国とEUの関係樹立40周年を記念するショーを開催した。今年3月には、パリの中国大使館の後押しを受け、既製服の新作発表会を行った。6月には、ロンドンのランカスターハウスで開かれたエリザベス女王の90歳の誕生日セレモニーの一環として、新シーズンのコレクションを紹介し、外交関係者や上流社会の人々を魅了した。

今後の目標について、チェンはこう言った。「私は国際的に認められる中国発のハイエンドブランドを作りたい」。クチュール新時代は中国から始まるのかもしれない。