増谷栄一の経済コラム:米経常赤字の拡大止まらず
2005年06月19日23時45分 / 提供:ライブドア・ニュース
赤字埋める海外資金懸念でドル売り加速
【ライブドア・ニュース 2005年06月19日】− 米商務省は先週末、第1四半期(1−3月)の米経常収支を発表したが、経常赤字は前期(昨年10−12月)に比べて3.6%増の1951億ドル(21兆円)に膨れ上がり、過去最高を更新した。市場予想のコンセンサスである1894億ドルの赤字を3%も上回る大幅増加で、米国のエコノミストの多くは、今後も米国の経常赤字は拡大し続けると見ており、2005年の経常赤字は7600-7800億ドル(82−85兆円)、また、2006年には実に8300億ドル(90兆円)に達すると予想している。米国のGDPは約12兆2000億ドル(1320兆円)なので、2005年は対GDP比6.2-6.4%、また、2006年は同6.8%という巨額になるのだ。ちなみに、昨年10-12月期の経常赤字は当初発表の1879億ドルから1884億ドル(20兆円)に上方改定され、その結果、2004年全体では6680億ドル(73兆円)となり、過去最高を更新した。
今後も経常赤字が拡大を続けるという根拠は、米経済が春先にソフトパッチ(一時的な景気沈滞現象)の兆候が見られたものの、全体的には経済は着実に拡大を続けているのに対して、米国にとって最大の貿易パートナーである日本と欧州の景気が足踏みしているため、輸出の急激な増加が難しく、一方で輸入は米国の堅調な生産性の伸び(単位時間の労働者一人当たりの生産高)と原油高騰で輸入の急増が続き、貿易赤字が拡大すると見られているからだ。経常赤字の約90%が貿易赤字で占められているので、輸入の急増は経常赤字の拡大に直結するのだ。
第1四半期の経常赤字が過去最高となったのも同様な理由だが、日本と欧州の景気低迷と同四半期中がドル高で推移したため、輸出が伸び悩み、他方、輸入は米国内景気の堅調で、企業や家計の輸入品に対する需要が旺盛な上に、原油高騰も加わって伸びたため、財・サービスの貿易赤字は前期比1.5%増の1718億ドルに拡大した。ちなみに第1四半期で、ドルはG7(主要7ヵ国)の貿易パートナーの通貨バスケットに対し、1%上昇。原油も米国の標準油種であるWTI(ウエスト・テキサス・インターメディエート)が前期の1バレル=48.27ドルから同50.03ドルに上昇している。
市場では、こうした経常赤字は海外から流入する投資資金で穴埋めされているが、いずれは、海外からの米国の国債や社債、株式などへの投資が急減するリスクを懸念している。この統計発表を受けて、赤字の穴埋めに対する海外からの資金流入への懸念が強まり、ドル売りが加速し、対ユーロでは、1ユーロ=1.2285ドルと1.5%、また、対円でも1ドル=108.55円と0.4%、それぞれ下落した。
先週、FRB(米連邦準備制度理事会)のドナルド・コーン理事は講演の中で、経常赤字の膨大化が米国経済に悪影響を与えると警告している。理由は、海外投資家が米ドル建ての資産に投資しているが、より高いリターンを求めるようになると、企業の借り入れコストも上昇し、企業利益が圧迫され、景気に悪影響が及ぶと指摘する。この統計発表後、米議会でも、「危機的な水準にある」と指摘する議員もいて、これは海外の不公正貿易が原因として、ブッシュ政権に対し、対外貿易政策の政策転換を求める圧力が増す可能性が出てきている。
これに対して、アラン・グリーンスパンFRB議長は、この膨大な経常赤字は「持続不可能な水準」として、いずれ、市場メカニズムによって、米経済に深刻な影響を与えることなく、問題の解決が図られると楽観的な見方を示している。実際、どのくらいの海外からの投資が米国に流入しているかといえば、ネットベースで、海外からの米国債投資は前期の157億ドル(1.7兆円)から第1四半期は755億ドル(8.2兆円)に増大する一方、米株と米企業の社債など米国債以外への投資は前期の1582億ドル(17兆円)から882億ドル(9.6兆円)に減少している。その内訳は米株投資は、前期の457億ドルから289億ドル、米国企業の社債投資は693億ドルから586億ドルにそれぞれ減少している。
これらの数字は、民間部門の数字だが、これに外国政府からの投資(前期の945億ドルから第1四半期は247億ドルに減少)を含めた「外国投資家が米国に保有する資産」合計では、前期の4579億ドル(50兆円)から第1四半期は2318億ドル(25兆円)に半減している。ちなみに2318億ドルは1日当たり約20億ドルとなるが、赤字の穴埋めには今後、毎日21億ドル(2300億円)が必要と言われている。【了】
(経済コラム:http://blog.livedoor.jp/eiichimasutani/)
ライブドア・ニュース 増谷栄一記者
(参照:http://blog.livedoor.jp/emasutani/)
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