麻薬というものの特徴や危険性を時間をかけて浸透させていくべきだと語るモーリー氏

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『週刊プレイボーイ』本誌で「モーリー・ロバートソンの挑発的ニッポン革命計画」を連載中の国際ジャーナリスト、モーリー・ロバートソンが麻薬問題を抱える東南アジアの「麻薬対策」について語る。

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麻薬撲滅を掲げ、“超法規的措置”による密売人の大量殺害を奨励するフィリピンのドゥテルテ大統領が国際社会から批判されていますが、同じく深刻な麻薬問題を抱える東南アジアの国タイでは、まったく別の「麻薬対策」を考えているようです。

その対策とは、ひと言でいえば麻薬の“非犯罪化”。モデルケースとなるのがポルトガルです。

ポルトガルでは2001年以来、大麻からヘロインまで、ほとんどの薬物の少量所持に対して刑罰を科していません。これにより薬物使用率は下がり、過剰摂取による死亡事故や注射器の使い回しによるHIV感染件数も減少。さらに中毒患者の治療や社会復帰も含め、包括的な施策が効果を上げているといいます。

もちろん、人口1000万少々の欧州の民主国家と、7000万近い人口を抱える軍事独裁政権で、しかも隣国(ミャンマー)で大量の覚醒剤が製造されているタイとでは事情があまりにも違う。同じやり方でうまくいくかどうかはわかりません。ただ、麻薬の非犯罪化という方向性は、今やWHO(世界保健機関)も推奨する世界的潮流なのです。

1990年代、国際社会は麻薬を取り締まり、厳罰を科すことで根絶やしにしようとしました。しかし、麻薬は地上から姿を消すどころか、むしろ世界中に蔓延(まんえん)してしまった。言い換えれば、人類は麻薬との戦争にすでに負けているわけです。

できるはずのない「根絶」を目指すより、人間社会が麻薬というものの特徴や危険性を“咀嚼”(そしゃく)できるよう、時間をかけて浸透させていくべきだ―。近年、世界各地で麻薬の非犯罪化や合法化が検討されているのには、そんな背景があります。

非犯罪化のメリットのひとつは、薬物が「普通に流通する」ことによる品質の向上です。日本では終戦直後、闇市に出回ったメチルアルコールを飲んで失明した人もいたそうですが、酒と同様に薬物も、品質管理の行き届いたものが出回れば、危険な“混ぜ物”を摂取して命を落とす人はかなり減るでしょう。

また、非犯罪化して取引がオープンになれば価格は劇的に下がり、闇市場に巣食うカルテルやマフィアに大打撃を与えることができる。健全化されたマーケットで得られた税収をもとに治療プログラムを組めば、薬物で身も心も滅ぼしてしまうような人も減る……といった効果も当然、期待されています。

ところが、日本はこうした世界の潮流に乗るどころか、今もなお「ダメ。ゼッタイ。」の世界。大麻合法化の議論さえタブー視されています。代表的なのはこんな意見です。「そもそも日本には深刻な麻薬問題が存在しない。なぜ、わざわざ問題をつくる必要があるのか?」

今の時代、こういう現状認識を間違えたような態度はものすごく危険です。世界中に薬物は蔓延し、グローバル化で物理的なハードルは低い。いつ何時、日本に津波が襲ってくるかわからない状況です。

その第一波が2020年に来るのか、もっと前かはわかりませんが、いずれにせよ完璧な防波堤などつくれないことは過去の世界中の事例が証明しています。となれば、できることは波の衝撃を緩和する―つまり、「麻薬のある社会」への準備を進めること。まずはタブーなき議論を!

●Morley Robertson(モーリー・ロバートソン)

1963年生まれ、米ニューヨーク出身。国際ジャーナリスト、ミュージシャン、ラジオDJなど多方面で活躍。フジテレビ系報道番組『ユアタイム?あなたの時間?』(月〜金曜深夜)にニュースコンシェルジュとしてレギュラー出演中!! ほかにレギュラーは『NEWSザップ!』(BSスカパー!)、『モーリー・ロバートソン チャンネル』(ニコ生)、『MorleyRobertson Show』(block.fm)など