過激な「反米発言」を繰り返すフィリピンのドゥテルテ大統領。南シナ海問題で対立する中国に「急傾斜」とも伝えられるが、「反米」を自らの政権の求心力と外交戦略の“一石二鳥”に使っている節もある。

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2016年10月28日、オバマ米大統領への暴言など一連の「反米発言」で物議を醸すフィリピンのドゥテルテ大統領。南シナ海問題で対立する中国に「急傾斜」とも伝えられるが、「反米ナショナリズム」を自らの政権の求心力と外交戦略の“一石二鳥”に使っている節もうかがえる。

フィリピンで米国の存在感は圧倒的。植民地支配の歴史や公用語の一つが英語、アジア唯一のキリスト教国ということもあり、太平洋を隔てているとはいえ、ほとんど隣国に近い。日本は出稼ぎ先の一つにすぎないが、米国はあこがれの移住先だ。米国には西海岸を中心に日系人の3倍にも上る約250万人規模のフィリピン人社会が存在する。

それだけに、フィリピン人は愛憎半ばする屈折した複雑な対米感情を抱いている。ドゥテルテ氏の影に隠れて目立たないが、証券取引委員会委員長などの経歴を持ち、米国通とされるヤサイ外相も9月に米ワシントンで講演した際、「フィリピンはもうアメリカの茶色い弟ではない」と発言している。

沖縄県で米軍関係者の行動がしばしば問題視されるように、米空軍クラーク、海軍スービック両基地があった当時は米軍人の傍若無人な振る舞いが非難を浴びてきた。事件が起きるたびに反米感情が高まり、基地撤去が叫ばれた。

こうしたことから、フィリピン国内では旧宗主国に対してはっきり物を言う政治家は人気を集める。最新の世論調査によると、ドゥテルテ大統領の支持率は、対麻薬戦争への共感も手伝い86%にも上る。国内の政治基盤が弱い大統領にとっては、国民の支持が最大のよりどころだ。

マルコス元大統領も就任当初は民族主義者を標ぼうし、支持を集めた。米国からの再三のベトナム派兵要請を拒み非戦闘部隊の派遣にとどめたほか、1975年に中国、翌76年に旧ソ連と国交を樹立し、それまでの対米一辺倒外交からの転換を試みた。

25日からの日本訪問前、フジテレビとのインタビューに応じたドゥテルテ大統領は米国などへの過激発言を繰り返す理由を問われ、「誰も話を聞いてくれないとき、どうやったら、気がついてもらえるか。『汚い言葉を使って叫んでいる男は誰だ』となり、私に気づき、耳を傾け始める。(では、暴言はわざとだと?)もちろん」と言い放った。

18日からの中国訪問中、ドゥテルテ大統領は習近平国家主席との首脳会談で南シナ海問題を「棚上げ」した。その後、軌道修正したものの、わざわざ米国との「決別」を宣言。中国から、鉄道建設などのインフラ整備を含む総額240億ドル(約2兆5000億円)もの支援を引き出した。

一方、26日の安倍晋三首相との会談では冒頭から南シナ海問題に言及して、「平和裏に問題を解決したい。(中国と)いずれ話をしなければならない」とした上で、「私は日本側に立つつもりだ」と表明。中国の主張を退けた仲裁裁判所の判決については「判決の範囲外の立場をとることはできない」と述べ、日本と中国を使い分けるしたたかな一面ものぞかせた。(編集/日向)