アニメーション監督・堤大介とのトークイベントに登壇した細田守監督

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現在行われている第29回東京国際映画祭では、アニメーション特集「映画監督 細田守の世界」に合わせて全7回のトークイベントを開催中。10日29日、六本木アカデミーヒルズタワーホールで行われた第6回は、細田監督とアニメーション監督・堤大介のスペシャル対談が実現し、作品を作る際の苦労や技術論が語られた。

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「神は細部に宿る」と言うが、ディティールへのこだわりこそ、細田作品を細田作品たらしめているのかもしれない。そう思わせるに十分だった対談内容から、印象的な細田の発言を紹介する。

■ 「手描きという技法を手放してCGに一元化してしまうとつまらない」

堤監督といえば、アートディレクターとしてピクサーの『トイ・ストーリー3』『モンスターズ・ユニバーシティ』に携わり、共同監督を務めた『ダム・キーパー』でアカデミー賞短編アニメーション部門にノミネートされた第一線のクリエイター。堤監督がピクサー出身ということで、手描き、CGという手法の違いについてのトークに。ここで細田監督は手描きアニメへのこだわりを明かした。

「取材とかで『世界中でアニメーションがCGで作られる時代になったのに、なぜ手描きでやっているのか?』ということをすごくよく聞かれる。僕自身、それはあくまで技法だから、もっと多様な技法があっていいと思っていて、全部CGっぽいルックで映画を作ると一面的になる。せっかくアニメーションには歴史的にも多様な表現があるにもかかわらず、それを手放してCGだけに一元化してしまうとつまらない。そういうなかで、堤さんの『ダム・キーパー』には表現の多様性、豊かさを感じてすごく嬉しくなっちゃう」。

■ 「アニメーションを作っていると、物語の主人公の苦労がシンクロする」

「作り手同士で共闘して、一緒に新しい表現を目指していきたい、一緒に壁を乗り越えていきたい」と話していた細田監督。「映画作りは苦しい」と言う堤監督とはクリエイター同士、苦労することで共感する部分も多かったようだ。

「アニメーションっていうのは時間も、人手も、予算もかかる。その割に苦労がものすごく大きい。映画を作るために苦労していると、物語の中で主人公がいろんな苦難に遭うことがシンクロしてくるんです。僕らはアニメーションが出来上がってくると、主人公が苦労することに重ね合わせてこっちが涙ぐんじゃうっていう(笑)。でも、そういうことがあればあるほど、たぶん映画は面白くなるんじゃないかなと思います」。

■ 「新海さんの光の使い方は“新海印”みたいなものだと思う」

イベント中、客席から光に関する質問が飛んだ。作品を作るうえで照明の演出で気を付けていることは?というもの。細田監督は「光の演出は重要。僕は美術やセルの色で光を表現したくて、後からCGで光を足すことはしたくない」とこだわりを語った。同じ質問者から、新海誠監督の『君の名は。』の光が印象的だったがいかがでしたか?と話を向けられると…。

「『君の名は。』は見ていないから、新海さんの過去作での光の使い方の話になるけど、いい?新海さんのはやつは光の演出というより、新海さんの監督作品のトーンというかな…。光というよりはご本人のトーン、“新海印”みたいなもののように見える。あれがないと新海さんの作品って感じがしないでしょ?そのことと、光の演出というのとはちょっと別なような気がする。あれは光の演出というよりも監督のカラーとして生かされていると思います」。

国民的映画監督としての評価が定着しつつある細田監督だが、堤監督との対談で見せた表情からは、あくまで新しい表現を模索しているクリエイターなんだ、と感じた人も多かったのではないだろうか。10月26日に始まり、ここまでに6回を数えたトークイベントもいよいよ大詰め。最終回となる次回は、『バケモノの子』の上映に合わせて、東京国立博物館の松嶋雅人と細田監督の対談が行われる。【取材・文/トライワークス】