運動不足が気になっていた服部克哉さん(52歳・仮名=以下同)は、身体を鍛え直そうと、一念発起して自宅近くのスポーツジムに入会しようとした。ところが、受付で血圧が基準値より高いことを理由に断られたという。服部さんのその時の血圧は、180/100mmHgだった。
 一方、会社の健康診断でコレステロール値が高く、太り過ぎと診断された高木洋一さん(56)も、秋と言えばスポーツと言ってダイエットを始めた。糖質制限食を始め、大学時代に熱中したテニスの再開を宣言。飲み屋で知り合ったテニス好きを集め、準備運動もそこそこにコートへ勢いよく走り出た。しかし、突然“バチン”という大きな音が足元で響き、左足首が動かなくなったという。アキレス腱断裂だった。

 北里大学北里研究所病院の新井雄司氏は言う。
 「このところ、高木さんのようにスポーツを始めたばかりの中高年の患者さんが増えています。頭の中には若い頃の“動ける自分”のイメージがあるから、無理な動きやオーバーワークにつながってしまうのでしょう」
 アキレス腱は主にコラーゲンでできており、年齢を重ねるとともに柔軟性を失い切れやすくなる。コレステロール値が高い人は、コラーゲンにコレステロールが沈着するため、アキレス腱が太くなり劣化しやすいのだ。

 また、血圧が高いことでスポーツジムの入会を断られた服部さんの場合も、こんなことが背景にある。
 「服部さんのようなケースは、入会前に断られているのでまだいい。通常、ジムに入会申し込みをすると、あちらも商売ですから、よほどのことがない限り断りませんからね。しかし、血圧や血糖値などが高い人は、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高く、自己流の運動は命に関わる可能性もあります。“健康のために”と一生懸命運動したことで、心筋梗塞などを発症するケースがあることも知っておく必要があります」
 こう語るのは、全国健康指導協会の指導員・保健師の立花祐樹氏だ。

 さらに、61歳、自営業の大畑実さんの場合。大畑さんは50代の頃から肥満解消のために何度かダイエットや運動に挑戦。その都度、半年ほどで4〜7キロほど痩せたが、いつもリバウンドを繰り返していたという。
 さらに、肥満のほかにも糖尿病や軽度の高血圧と脂質異常も加わり、かかりつけの医師から「無理をしないで適度の運動を」と指摘されたため、熱心にウオーキングなどの運動を心掛け、1日の歩数は平均で1万2000歩前後、マシントレーニングなどもこなした。

 しかし、ある日、ジムのスタッフが運動負荷テストを行った際、トレーニングで一定の強度を超えると心臓が酸欠状態になることが確認されたため、病院で詳しく検査を受けるように勧められた。
 結果、大畑さんは冠動脈が99%狭窄を起こしていたことが判明。いつ心筋梗塞を起こしてもおかしくない状況と分かり、運動どころではなかったのだ。病院では直ちにステント(金属製の網)を使って血管を広げる手術が行われ、事なきを得たという。

 こうした例を含め、前出の立花氏はこう警鐘を鳴らす。
 「検診で悪い数値を指摘されると、頑張って運動をしなくては、と思う。しかし、それが命を落とすことに繋がることがあるのです。運動より先に、食事療法や薬の服用で現在の高い数値を下げた方がいい人もいる。動脈硬化のリスクが高い人は、スポーツジムに通ったり、ジョギングや水泳といった運動を自己判断で始めることは慎むべきです」