クリス・クラウス監督とプロデューサーのカトリン・レンメ氏

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 第29回東京国際映画祭コンペティション部門出品作「ブルーム・オヴ・イエスタディ」が10月28日、TOHOシネマズ六本木ヒルズで上映され、クリス・クラウス監督、プロデューサーのカトリン・レンメ氏が会見した。

 ホロコーストのイベントを企画する研究者が、強引な性格を理由に担当を外される。納得のいかない男は、風変りなフランス人インターン女性と独自に準備を続けるが、やがて意外な事実に行き当たる。ホロコーストという歴史に新たに向き合う世代を、ユーモアや恋愛を交えて語るドイツ=オーストリア合作映画。

 歴史を学んでいたクラウス監督が、自身の家族の過去を調査したことが、本作製作のきっかけになった。「自分自身の家族の過去を発見するために、ヨーロッパ中の歴史資料館を探し、まずは自分の家族についてのドキュメンタリーを書きました。そして最後のプロセスで、資料館にいるときに、犠牲者と加害者の孫たちが冗談を言い合っている様を見たり、そして恋愛があるということを聞き、コメディで味付けしたフィクションができると思ったのです」

 家族の重い過去がトラウマになっている男と女の交流を、ブラックジョークで軽さを持たせて描いた。「どのジョークシーンの裏にも暗さがある。その暗さを裏切ってはいないと思います。痛みの扱い方がコメディになっているのです」

 レンメ氏は、クラウス監督による脚本が仕上がった後、2012年の半ばから資金集めを行い、完成まで3年半の月日がかかったと明かす。「このテーマで新しいアプローチをとっているので、時間がかかりました。出資者を募る時には、気に入ってくれる人、大嫌いという人という対極の反応がありました。ホロコーストの映画はたくさんありますが、私たちの世代の作品がなかった。加害者は亡くなっているので、祖父の世代が何をやったかをリサーチしやすくなったのです」

 現在ドイツではシリアからの難民受け入れに伴い、移民や難民の排斥デモが各地で起きている。クラウス監督は「脚本を書き始めた5年前には、そのような問題はありませんでしたが、映画が完成し、まさかこのような状況になると思わなかった。いろんな世代がホロコーストを学んできているにもかかわらず右翼が台頭してきています。理論的には学んできたが、自分たちが結びついていないと思う。それを結び付けるのがこの作品だと思います」と語った。

 東京国際映画祭は11月3日まで開催。