小型のロケットに民間人を乗せて宇宙空間の入り口まで打ち上げ、弾道軌道飛行による無重力体験を提供する「宇宙旅行」サービスは、ヴァージングループ総裁のサー・リチャード・ブランソンによる「ヴァージン・ギャラクティック」の宇宙船「SpaceShip Two」や、XCORエアロスペース社による宇宙船「リンクス」などが実現に向けた開発を進めています。これ以外にも、イーロン・マスク氏の「SpaceX」やジェフ・ベゾス氏による「Blue Origin」などがそれに続くようにロケット技術の開発を進めており、旅行会社が民間初の宇宙旅行ツアーを企画して日本人も予約済みというニュースも伝わっています。

そんな中、中国からは最大で一度に20人の乗客を乗せて宇宙空間まで上昇し、無重力飛行を経て地上に帰還するという世界で最も多くの乗客を乗せることが可能な宇宙飛行船の構想が登場しています。これは、従来は多くても定員が8名程度だった宇宙飛行船のキャパシティーを大きく超えるものとなっているのですが、その実現可能性をめぐって注目が集まる事態ともなっています。

China plans world’s biggest spaceplane to carry 20 tourists | New Scientist

https://www.newscientist.com/article/2107802-china-plans-worlds-biggest-spaceplane-to-carry-20-tourists/

この計画をたてたのは中国で最大のロケット製造業者である中国運載火箭技術研究院(CALT)で、2016年9月26日から30日にかけてメキシコ・グアダラハラで開催されたIAC - International Astronautical Congressで発表されました。

同院の構想によると、宇宙飛行船は他の構想と同様に翼のある機体を持ち、胴体部分に客席を乗せて機体後部のロケットエンジン搭載します。胴体の長さは求められる仕様によって変更することが可能で、最大で以下の図のような20人までの定員にも対応できるとされています。機体のサイズは最も小さな機体だと翼端幅が6メートル、機重は10トンで、最大の20人乗りだと翼端幅が12メートル、機重は100トンにも達する見込み。



打ち上げに際しては、別体式のブースターなどは使わず、機体のロケットエンジンで推進剤の液体メタンと酸化剤の液体酸素を燃焼させて全ての推力を得るようになっているとのこと。発射台から打ち上げられた機体は最大時速マッハ6で高度100km程度まで上昇し、2分間の無重力飛行を実施。その後、グライダーのように滑空して、空港に着陸します。



なお、上記の飛行プランは最小サイズの機体の場合で、最大サイズになると最大時速はマッハ8に達し、高度120kmまで上昇して4分間の無重力飛行が可能になるとのこと。このレベルになると、人工衛星を地球周回軌道に乗せることも可能になるため、宇宙開発への活用も視野に入ってきます。また、機体は最大で50回繰り返して使用することが可能とのこと。

同院で開発チームのリーダーを務めるHan Pengxin氏によると、「試験飛行はあと2年以内に完了するでしょう。なぜなら、すでにほぼ全ての地上試験を済ませており、付帯するサブシステムについても順調に機能しています」と自信のほどをのぞかせます。計画では、2020年までに実際のペイロード(積載量)の状態での飛行を完了させ、安全が確認されたのちに実際の乗客を乗せるサービスを開始する見込みを立てているとのこと。

この計画に対しては注目が集まっていますが、その中には懐疑的な見方を示す人も存在しています。宇宙飛行の専門家である、アメリカ国立航空宇宙博物館のRoger Launius博士はこの機体について「興味深いイニシアチブである」としながらも、同院が公表した4ページの資料に記載された技術詳細には不足があると指摘しています。

Launius博士は「最も不思議な箇所は、最大で20人の乗客を高度100kmの高さまで打ち上げられるという見込みと、さらにその打ち上げが補助ブースターを使わずに行われること、そして50回もの再利用が可能であるという点です。この点がどのようにして実現されるのかが記載されていません。また、2年以内に試験飛行を開始できると考えているところも、実に注目すべき点です」と同院の計画について語っています。

また、その説明責任は同院にあるとLaunius博士は指摘。「いつの時代でも、実際に宇宙船を作って飛ばすよりも、構想を描いて可能性を語るほうが簡単なものです」と、懐疑的な見方を明らかにしています。

一方で、寛容な見方を示す人物もいるとのこと。氏名の公表なしを条件にコメントしたある代表団のメンバーは、「技術的な観点からみれば、中国のチームが提唱している飛行計画は全て証明されているものばかりです」との見方を示しつつ、「しかし、計画を安全に実行できるか、また継続性のある宇宙旅行ビジネスを実行できるかは、別の問題です」とコメントしています。



By Mark Belokopytov