【対談】ISAK小林りん x ビズリーチ南 壮一郎 vol.3「経営者としてのスタンス」

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外資系金融出身者は、多かれ少なかれ同じようなことを言う。外資系金融企業は「道場」。優れた人材を育てる最良の学校である、と。本連載では、この学校を卒業し、活躍する人々を紹介する。

全4回でお届けするモルガン・スタンレー出身の小林りん氏(インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢=ISAK 代表理事)と南壮一郎氏(ビズリーチ 代表取締役社長)による対談、第3回は”経営者として”の話。それぞれの考え方、困難との向き合い方とは?[第1回・第2回]

谷本有香(以下、谷本):お二人とも経営者になるのは今回初めてですが、恐怖感のようなものはありましたか?

小林りん(以下、小林):恐くはなかったですね。私は26歳のときから3年ほどベンチャー企業で取締役をやっていたので、小さな会社でしたが「経営をするってこういうことなんだな」というイメージを何となく持っていました。

当時私が一番感じたのは、社長の相当な覚悟があって、心の底から自社の事業を信じていないと、ベンチャーは簡単につぶれてしまうということ。そのときの社長は本当に諦めない方だった。

だから、私も同じくらい思い入れのあるものに出会ったときしか起業してはいけないと思っていました。ISAKは、これだったら自分の全てをつぎ込んでやってみたいと思えた初めてのプロジェクトだったんです。

南壮一郎(以下、南):僕がラッキーだったのは、前職で楽天イーグルスを立ち上げたときに、三木谷さんや島田さん(島田亨氏:楽天野球団 元代表取締役社長)、小澤さん(小澤隆生氏:同元取締役事業本部長)のように起業経験のある先輩たちの背中を間近で見ながら、彼らの大きな事業創りに参画できたこと。それが後の自分の働き方や価値観に大きく影響を与えてくれました。

僕の起業そのものについての考え方は、極めてシンプルです。「世の中にインパクトある事業を仲間と創っていきたい」、その一心です。ビズリーチの事業領域は「インターネット×人材」ですが、各々が自分の得意分野を持ち込みながら、とにかく大きな事業に取り組みたい。ですので、結果論ではありますが、最初から周囲を頼りながら、みんなでこの会社を創ってきました。

創業メンバーが互いに信頼し合い、自分のできることで事業に貢献するという”チーム経営”。それが経営者として一番学んだことであり、だからこそ創業7年で700人近いベンチャー企業へと成長することができたんだと思います。

そしてベンチャーにしては珍しく、最初の創業メンバー全員がまだ在籍していますし、その後の創業期からの仲間の多くも主要なポジションでともに戦ってくれています。一人ですべてを背負わず、背中を預けられる仲間たちと一緒に日々悩みながら前進してきたので、「一人でやってきた」という感覚は一切ないですね。

苦労を苦労と捉えないメンタリティ

谷本:経営者として苦労された点を強いて挙げるとしたら、どのようなことが思い浮かびますか?

南:何でしょう・・・。たぶん苦労しているんだと思いますが、僕は何もない状態から何かを創り出すことを楽しんでしまうタイプなんだと思います。

自分の人生を1本の映画としてプロデュースする感覚で、学生時代から「自分が死ぬ瞬間から振り返ったとき、どうなったら一番面白いだろうか?」という思考でいるので、恐怖や苦労も”映画に必要なシーン”として捉えながら、乗り越えているのだと思います。

映画の脚本を書くなら、山あり谷ありという展開があった方が面白いじゃないですか。だから、びっくりするような強いライバルや到底乗り越えられないような壁など、大変な状況に遭遇すると「この局面はどう打開しようかな?」と余計に燃えてしまう(笑)。

小林:わかる(笑)。苦労した点、私もあまり思い浮かばないです。基本的に外敵に強いタイプなので。

許認可が下りないとか資金が集まらないとか、いろんなことがあって開校が年単位で遅れて、周りから見たら悲惨な状況が続いていたと思います。でも、私自身は全く苦ではありませんでした。いつか必ず開校できるだろうと信じていましたから。

南:きっと、りんさんも僕も、まだ挑戦してから10年に満たず、それぞれの業界や会社の歴史という観点でみればまだまだ旅を始めたばかりなので、これから本当に大変な時期がお互いやって来るのではないかなと。その苦労を、社内外の仲間とともに乗り越えていく場面こそが、今後の仕事の醍醐味になっていくと思っています。

小林:松下幸之助さんの言葉で「成功する人は諦めない人だ」というものがありますが、ISAKに限って諦めないことだけは自信があったんです。なぜなら、自分の大好きなことをやっているから。自分が経営者になって良かったと思うのは、他人にやらされていることではなく自分が心底信じていることに打ち込める点ですね。

もう一つ良かったのは、自分が組織のトップにいると、ワーキングスタイルの定義ができる点です。私は4〜5年前に、第一子の後追いが顕著になったのをきっかけに働き方を大きく変えましたが、これは自分が経営者だからできたこと。「17時以降は働きません」という働き方は、雇われていたら通用しないと思いますが、経営者であれば自分で調整できます。トップになったメリットだなと感じましたね。

だから、女性はどんどん起業すれば良いと思っているんです。自分が経営者なら、ワークライフバランスは自分で決められますから。

ISAKは女性職員が多くて、抱っこ紐で赤ちゃんを抱えて授業をしている先生もいます(笑)。私も、大臣が出席する政府の委員会に子供を抱えて出たこともあります。職員たちは私の働き方を見て、ここなら子育てしながらでも柔軟に働くことができるという雰囲気を感じ取ってくれているんでしょう。

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地域を巻き込んだ新しい取り組みも

南:ISAKの立ち上げ当初、資金が思うように集まらなくてりんさんが毎日のように支援者への説明を繰り返す姿を見てきましたが、最近は「ふるさと納税」を活用した寄付も募集されているんですよね。一般の方からも気軽に支援してもらえる素晴らしい取り組みだなと感じました。

小林:軽井沢町へのふるさと納税は、使い道として指定教育機関への寄付を選べるんです。それでISAKを選んでいただくと、金額の95%が奨学金に充てられます。もともとは納付額の1/3が軽井沢町の教育行政へ振り分けられる仕組みだったんですが、軽井沢町のご厚意でISAKへの割合を引き上げていただきました。

南:僕も個人的にふるさと納税を通じてISAKへ寄付させてもらっていますが、誰でも自分のできる範囲で教育を支援できるのは素晴らしいシステムですね。

谷本:ISAKにふるさと納税すると、どのような特典があるんですか?

小林:牛肉やお米などの返礼はご用意できていないのですが(苦笑)、学校から生徒たちの生の声をお手紙にしてお送りしたりしています。ありがたいことに、昨年は寄付金によって82人分の奨学金を出すことができたんです。今秋からはご支援いただいた方に実際にキャンパスへいらしていただいて生徒たちと交流できるイベントも実施しています。