IoT搭載のメガネで認知症は予防できるのか?[医療トリビアpart.8]

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長寿を誇る日本だが、一方で3分診療、介護難民、破綻寸前の医療財政など課題は山積み。誰もが長い人生を健康で送るために、進行中のプロジェクトを紹介する。part.8ではメガネ型ウェアラブルデバイスを紹介する。

「メタボリック・シンドローム」が中高年の間でバズワードとなった2008年。「1日1万歩歩けば痩せる」といわれた真面目な日本の高齢者たちは、万歩計をつけて外に出た。仕掛けたのは、厚生労働省。国民の肥満解消による医療費削減を目指し、肥満の予防・改善に乗り出したのだ。
 
肥満を解消すれば、内科系の疾病に罹るリスクは減るが、「一方で、膝や腰の病気で苦しんでいる人が4,700万人いるというデータもある」と話すのは、井上一鷹。メガネの製造小売りの「ジェイアイエヌ」で事業開発に携わる。15年秋に発売された、メガネ型ウェアラブルデバイス「JINS MEME(ジンズ・ミーム)の開発担当者だ。

「メタボ対策をする人は増えていますが、体の活動量を増やすことだけが生活習慣病予防ではありません。たくさん歩いても姿勢が悪ければ、膝や腰を痛め、最終的には寝たきりになることもある。脳の活動量が少ないと、認知症を発症しかねません」と、井上は警鐘を鳴らす。
 
JINS MEMEは、メガネにつけたセンサーで視線の動きや瞬き、体の動きを計測する。データはスマートフォンに飛ばし、アプリで記録・分析する。
 
従来のウェアラブルデバイスでは、歩数や睡眠時間といった活動量を計測するのが一般的だった。これに対し、JINS MEMEは姿勢、すなわち活動の” 質”をデータ化するのが特徴だ。メガネをつける頭部は体全体の動きを捉えやすい。しかも、メガネは装着時間が長く、多くのデータを集められる。

「例えば体の軸が傾き、バランスが崩れた状態で長時間歩けば、片側に負担がかかります。けがの予兆が事前にわかったら、運動の仕方やメニューを見直すことができるようになります」

やみくもに運動をするのではなく、自身の状態を把握した上で、適切な運動をすれば、けがのリスクは少なくなるというわけだ。

こうした中でジェイアイエヌは、先制医療分野でのウェアラブル活用も模索し始めている。認知症になると、目の動きと体の重心のバランスに変化が生じると言われている。そこで、東北大学や慶ドイツのジーゲン大学などと連携し、産学協同で認知症予防の研究に着手している。
 
現在、JINS MEMEが提供しているアプリの監修は、ニンテンドーDSのヒット作「脳トレ」を監修した川島隆太(東北大学加齢医学研究所教授)が担当している。現時点では、集中、活力、落ち着きといった心の状態を示す「アタマ年齢」と、活動量、姿勢、安定性など体の状態を示す「カラダ年齢」によって、心と体のバランスを可視化することができる。さらに、ランニングフォームのチェックや、体幹バランスの把握ができるほか、運転中の眠気を感知して警告する機能もある。

「メガネにセンサーを搭載することが標準になればいい」と話す井上の頭の中には、まだまだたくさんのアイデアが詰まっている。

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