BBCより

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 10月24日、英国BBC放送の『PANORAMA』という番組で、未成年を含むシリア難民がトルコで過酷な労働条件の中で働いていることが明らかにされた。その対象にされたのがマーク・アンド・スペンサー(M&S)、オンラインショップエイソス(ASOS)、ザラ(ZARA)、マンゴー(MANGO)であった。(参照:『BBC』)

 現在、250万から300万人がシリアからトルコで避難生活をしているとされている。番組の中では、未成年の少年4人が大人の中に混じってM&SやASOSのブランド製品を生産している工場で働いている姿や、ZARAやMANGOブランドのジーンズを漂白するのに危険な化学薬品を前垂れも身に着けることなく作業しているシリア移民労働者の姿が報道された。しかも、12時間の労働を強いられているとしている。もちろん、厳しい生活環境の中でシリア難民がトルコで労働許可証を取得して働いていることはまずあり得ない。

 この報道に対して、対象になった会社側ではそれを「知らなかった」と回答するか、「労働規定を守るように要求しているが実行されていない」といった判で押したような回答があるだけであるとBBCは報じている。

 世界の6000社余りの労働環境などを調査しているロンドンのビジネス・人権資料センターのダニエル・マックミュラン氏は、同番組内で<今回のようなブランドメーカーが責任感をもって取り組んでいない>と指摘している。

 この報道にいち早く反論したのがZARAである。同社の親会社のインディテックス(Inditex)は、<BBCがゴアテックスの漂白洗浄工場における労働条件の不規則を報道する以前に、インディテックスは既にそれを検出していた>という。それは商品の安全規準を満たしていないということから、インディテックスでは<今年12月までの6か月間にその改善を義務づけた>。<それが満たされない場合は、この工場はインディテックスの生産工場のリストから外されることになる>と主張している。同社は<シリアのNGO難民支援センターと協力して同社の繊維工場で働く難民の置かれている環境解決に取り組んでいる>こともつけ加えている。(参照:『El Espanol』)

 しかし、スペインの労働組合のひとつスペイン労働者委員会(CCOO)はインディテックスと契約している中国の現地工場の労働条件について厳しい評価をしている。

 CCOOは、<毎週20-34時間の残業は習慣化しており、ひと月の残業は85-145時間>となっていることに強い憤りを表明しており、<月曜から土曜まで11時間の労働、日曜は8時間、ひと月に休みは2日間、バケーションは15日>、<これは中国の労働条件や国際労働機関が規定している条件を無視したものである>と指摘している。

 ただ、CCOOの報告書では、<インディテックスやインダストリオール・グローバル・ユニオン(IndustriALL Global Union)が推し進めている手段を、中国の企業側で労働基準に取り入ようとしないことである>ということや、労働者側にインディテックスが要望していることが伝わっていないことも強調されている。(参照:『Dirigentes』『Economia Digital』)

 アジアでインディテックスの仕事に従事している労働者が最も多い国はバングラデシュで34万6311人、その次に中国の25万8126人となっている。アジア全域では80万人がインディテックスの仕事に従事している。BBCで問題になった<トルコでは10万29人がインディテックスの仕事を請け負っている。勿論、同じ工場で別のブランド社の商品も生産している場合も往々にしてあり、以上挙げた労働者全員が独占的にインディテックスだけの仕事に従事しているわけではない。(参照:『El Espanol』)

 請負工場側の問題なのか、発注企業側の問題なのかは定かではない。しかし、どこかの国の「安価な衣服」が、他の国や難民からの搾取の産物であってはならない。インディテックスが主張するように、労働環境の改善が周知されることを願わずにいられない。

<文/白石和幸>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。