自らも果敢にシュートを放った長沼が日本の攻撃のアクセントとなった。ベトナム戦は点差以上の完勝だった。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 今大会、彼のコンディションは非常に良い。シャープな身のこなしと、正確なボールタッチを駆使して、バイタルエリアに侵入して行く。MF長沼洋一は攻撃にアクセントを加えられる存在として、個性を発揮している。

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 この土台となっているのが、彼の『観察力』だ。ピッチ内はもちろんのこと、ピッチ外でも冷静な目を持って、頭を働かせながらアナライズをしている。初戦のイエメン戦、彼の出番はなかった。
 
「全体の流れが良くなかったので、自分が入って流れを変えようと思った」と、イラン戦で先発出場をすると、思った以上にチーム全体が硬く、それが自らのプレーにも波及していることに気が付いた。
 
「イラン戦は相手が凄く引いてきたのにもかかわらず、ちょっとサイドに張りすぎたと思います。僕がサイドに張っていた分、サイドバックが上がれない状態になってしまった」
 
 それでもイラン戦は切れ味鋭いドリブルで相手のファウルを誘発したり、正確なクロスでチャンスを作るなど、質の高い動きを見せた選手のひとりだった。49分には縦パスを受けると鋭い反転で前を向き、FW小川航基に正確なスルーパスを送ったかと思えば、57分には素早い帰陣で身体を寄せ、相手のカウンターを阻止するなど、守備面でも存在感を放った。
 
 片鱗は見せたが、反省点が多かったイラン戦。この時に得たイメージを彼は鮮明に頭の中に残し、出番が来なかったカタール戦を見つめていた。
 
「外から試合を見ていて、もっと中に入った方がいいと感じた。カタール戦はあとから監督が『この試合がターニングポイントになった』と言っていたように、凄くやるべきことが出来ていて、『あ、こうすればいいのか』と思うシーンが多々あった。自分が出たら何をすべきかを整理することが出来ました」
 
 自分がやるべきことは攻守においてサイドをアップダウンするのではなく、カットインをしたり、中に絞ってボールをレシーブしたりと、バイタルエリアに出入りすることで、周りにスペースを与えること。準々決勝のタジキスタン戦は残り5分の出場だったが、準決勝のベトナム戦はスタメン出場。これまで頭の中で整理し、イメージが出来ていたことを実践する時がやってきた。
 
 この試合、まず彼がやったことは、イメージを実践しながら『相手を観察する』ことだった。イランはラインを下げて来たが、左MFの自らに対してサイドバックは積極的に食いついて来た。
 
 しかし、ベトナムは食いついてこなかった。それに気が付いた長沼は、これまでのワンタッチプレーや裏に抜けながらのボールの引き出しをするのではなく、敢えてディフェンスラインのスペースの前でボールを受けてから仕掛けるスタイルを選択した。
 
「内山監督にはよく『止まってプレーをするな』と言われているのですが、ベトナムはサイドバックが来ない分、(最終ラインの前で)止まってボールを受けた方が、チームコンセプトとは若干違いますが、有効だと思った」
 
 彼のプレー選択は効果的だった。10分にFW中村駿太の追加点をアシストする結果を残したが、それ以上にボランチやCBの縦パスを引き出して、最終ラインの前で起点を作ってから、アタッキングエリアに侵入して行くプレーは、ベトナム守備陣を大いに苦しめた。
 
 26分にはMF原輝綺の縦パスを受けて、飛び込んで来たDFを鮮やかなボールタッチで交わしてミドルシュートを放ち、66分にも強烈なミドルシュートでゴールを脅かした。
 
「相手がどうディフェンスをして来るかを見ないと、効果的な対応は出来ません。試合中にしっかりと自分で分析をして、判断をすることは重要なことだと思います」
 
 どこまでもクールな彼は、試合を無駄にしない。出ていなければ情報を収集する重要な機会と捉えてイメージを膨らませ、出ている時はイメージをベースに相手を分析し、ベストな選択をする。決勝では、その冷静な目でどんな分析力を見せてくれるのか。広島のクールな頭脳に注目だ。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)