撮影当時を振り返った
半野喜弘、青木崇高、大野いと

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 パリを拠点にホウ・シャオシェンやジャ・ジャンクーらアジアの巨匠たちと組んできた音楽家の半野喜弘が、初めて監督に挑んだ「雨にゆれる女」が10月28日、第29回東京国際映画祭の「アジアの未来」部門でワールドプレミア上映された。

 上映後に主演の青木崇高、ヒロインの大野いととともにティーチインに臨んだ半野監督。「感無量。映画音楽を20年近くやって、自分で脚本を書いて映画を撮りたいと人に話した時は、そんなに簡単にできないよと言われた。でも、時間をどう利用し人の心を誘導し結末に至る芸術という点においては、映画と音楽は近いと思っている。演出はコンダクトしているような気分だったし、それが具体となって目の前に現れることが楽しく、驚きでもあった」としみじみ話した。

 青木は、周囲との関わりを断って生きる謎の男を演じ「セリフの出し方で、語尾を切れという演出が印象的だった。衝動を声に乗せて相手を拒絶する精神状態を表すという、すごいアドバイスを頂いた」と感激の面持ち。半野監督は、「青木に求めたのは、主役として立つとはどういうことか。それをクランクイン前にさんざん話し、すべてを否定するようなことも言った。だが、初日に現場に現れた時に主役のたたずまいだったので大丈夫と思った」と称えた。

 半面、そのアプローチが大野にとっては、「撮影の時以外はほとんど話をしなかったので、正直に言うと青木さんが苦手で最低な男と思っていた」と映ったという。それでも「あるシーンの顔を見て、すっごく嫌いだったけれどすごい人なんだと思いました」とフォロー気味に明かした。

 当時の大野の気持ちを初めて聞かされた青木は、「光栄です。ツンデレですね」と苦笑い。そして、「いとちゃんが一生懸命頑張っているのは知っていたから、めちゃめちゃ見守っているつもりだったんだけれど。まあ、作品が良ければ何でもいいです」と自らを納得させようとしていた。

 「雨にゆれる女」は、本名を隠して生きる男と、その生活に入り込んできた女が互いに心を開きながらも、互いの過去が明らかになることで人生の歯車が狂っていくいびつな愛の物語。11月19日から全国で順次公開される。

 第29回東京国際映画祭は11月3日まで開催される。