ベトナムの風俗産業は地下へ潜りつつある

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 近年ベトナムでは驚くほどインターネット規制が緩和され、速度も目に見えて速くなっている。たとえば、「フェイスブック」のユーザーは、3000万人を超え、フェイスブック社の調べでは、10代、20代ユーザーだけで約7割を占め、1日の平均フェイスブック利用時間は2.5時間を超えるなどある種のフェイスブック中毒とも言える状態になっている。

 しかし、今の状況からは信じがたいが、実はベトナムのフェイスブック全面解禁は遅く、2013年ごろまでは、中国や北朝鮮などと同様にフェイスブック規制国の1つだった。2013年になってからも中国のように一切アクセスできないわけではなく、接続業者によってだったり、パソコンからがダメだったりと不安定だった。ちなみに「LINE」も同じように不安定だったが、現在は、どちらもサクサク利用できる。

 ベトナムのチャットアプリのシェアを見てみると、フェイスブック(フェイスブックメッセンジャーも含む)がトップシェアで、他にはベトナム国産アプリの「Zalo」も高いシェアを持ち、「スカイプ」やLINEも利用されている。

 興味深い点としてベトナムではシェアがかなり低い「WeChat」が本来とは違う目的で大活躍していることだ。

  WeChatは中国大陸において国民的アプリ。中国人のスマートフォンユーザーは、ほぼ全員インストールしていると言っても過言ではないお化けアプリだ。そのWeChat、ベトナムではチャットアプリという用途だけでなく、とある用途で活用されまくっている。

 それは、デリバリーヘルス紹介ツールとして、だ。

◆「近くにいる人」機能を活用

 WeChatの“近くにいる人”というGPSを使って近くのWeChatユーザーを探し出す機能で自分の現在地を周辺へ伝えると、数分も経たないうちに何通も挨拶メッセージが届く。内容はかなり直球なサービス内容を英文で送ってくるのでひと目でそれだと分かる。

 この機能はLINEやフェイスブックにも搭載されているが、これらのサービスとWeChatとの最大の違いは、検索対象が全ユーザーである点だ。

 商都ホーチミン市の場合は、サービス料1時間50〜60ドルと伝えてくる。多くの場合、自己紹介もなく機関銃のような連射で大量チャット攻撃を受ける。

 何人かとやり取りして気づくのは、サービス料がほぼ統一されていることだ。1人の女性へ聞いてみると各女性はフリーランスのように見えて、実は組織化されており、エリアごとに元締めのような存在がいるとのことだった。

 ベトナムにおけるWeChatのこのような活用方法は、2014年ごろから増え始め、本家中国でも極一部の地域では存在するも一般的ではない(中国では監視が厳しいことも影響していると思われる)。ベトナムはWeChat=デリヘルアプリとして、本家とは違う活用をされているのだ。

 そもそもベトナムは風俗産業への規制が厳しく、当局と店側のいたちごっこ状態でオープンしても数か月も経たないうちに消滅することも珍しくない。そのため最近は地下へ潜る傾向がありそこへインターネットが受け皿となっている形だ。

◆デリヘルを呼んで拘束される例も

 しかし、ベトナムは未婚の男女(外国人同士は問題なし)が1つの部屋で宿泊することを原則禁じている。そのため、デリヘリを利用してうかつに部屋へ呼んでしまい拘束される邦人も後を絶たない(多くの場合はフロントで断られる)。これらの点でベトナムと中国は非常に似ている。

 ベトナムがインターネット規制を年々緩和している背景には、中国との差別化や政府によるインターネット監視システムがある程度構築できたからだとホーチミン市在留邦人は話す。

「現在でもインターネット上へ政府批判をするとすぐに特定されて拘束されるほど監視はとても強力です。フェイスブックなどの全面解禁は、インターネットサイトを監視する体制が整ったことを意味しており、何か問題があれば当局によってすぐに削除や切断することができます」

 また、反中国ムードが強いベトナムで中国アプリが利用されているのは不思議だと思い尋ねると、

「多くのベトナム人はWeChatを国産アプリと思っています」(同)

 規制緩和したはいいが、ベトナム政府は、若年層のフェイスブック中毒を問題視しており、規制なり対策を打ってくる可能性があるという。そうするとデリヘルアプリ状態のWeChatもそう長くはないのかもしれない。

<取材・文・撮影/我妻伊都(Twitter ID:@ito_wagatsuma)