2015年(1-12月)に新しく設立された法人(以下、新設法人)は12万4,996社(前年比4.5%増)で、6年連続で増加した。こうしたなか、老人福祉・介護事業者の新設法人は3,116社(前年3,627社)にとどまった。2年連続で減少し、減少率は14.0%減と2014年(4.4%減)より9.6ポイント拡大した。2010年に調査を始めて以降、3番目に少ない社数で、地区別でも9地区すべてで減少した。2016年1-6月の新設法人数も1,483社(前年同期1,691社)で、前年同期より12.3%減少しており、通年では3年連続で減少する可能性が高まっている。
 東京商工リサーチがまとめた2016年1-9月の老人福祉・介護事業者の倒産は77件で、過去最多だった2015年の年間76件をすでに上回り、本格的な淘汰の時代を迎えている。高齢化が進む中、実質賃金の低迷で要介護者を抱える家族の生活費への圧迫や、人手不足と人件費の高騰、施設への投資負担、過当競争や介護報酬改定など、内憂外患の厳しい環境が背景にある。ビジネスとして有望な市場から一転、新規参入に二の足を踏む状況が浮き彫りになった格好だ。


  • 本調査は、東京商工リサーチの企業データベース(対象309万社)から2011年〜2015年に新しく設立された法人のうち、業種コードの「老人福祉・介護事業」を抽出、分析した。

老人福祉・介護事業新設法人年間推移

業種別 特別養護老人ホームが6割減

 業種別では、最多は「訪問介護事業」の2,572社(構成比82.5%)だった。次いで、「通所・短期入所介護事業」が315社(同10.1%)、「有料老人ホーム」が107社(同3.4%)と続く。
 前年比では、前年と同数(4社)の「介護老人保健施設」を除き、6業種で減少した。減少率が最も大きかったのは「特別養護老人ホーム」の64.8%減(122→43社)。次いで、「認知症老人グループホーム」の56.0%減(25→11社)、養護老人ホームやケアハウスなどを含む「その他の老人福祉・介護事業」の49.2%減(126→64社)の順。減少した6業種のうち、「有料老人ホーム」以外の5業種で減少率が拡大した。

資本金別 1千万円未満が全体の約9割を占める

 資本金別では、「1百万円以上5百万円未満」が1,756社(構成比56.3%)と最も多く、「1百万円未満」が704社(同22.5%)、「5百万円以上1千万円未満」が342社(同10.9%)と続く。
 資本金1千万円未満の企業は2,802社(前年3,213社)で全体の89.9%を占め、少額の資本金で設立する法人が目立った。

地区別 すべての地区で減少

 地区別では、9地区すべてで前年を下回った。2014年に10.1%増で増加率トップだった四国は、29.2%減(130→92社)と減少率トップに転じた。東北も27.5%減(218→158社)と全国の減少率(14.0%減)を大きく上回った。2地区とも「訪問介護事業」が大きく減少(四国25社減、東北37社減)したことが響いた。
 このほか、関東が18.1%減(1,093→895社)、中国が15.2%減(164→139社)、北陸が14.8%減(47→40社)だった。

地区別 老人福祉・介護事業新設法人

都道府県別、大阪府が5年連続最多

 都道府県別では、増加が10県(前年18都府県)、減少が35都道府県(同29道県)、同数2県(同ゼロ)。新設法人数トップは、5年連続で大阪府の436社(構成比13.9%)だったが、前年比で11.0%減となり、業種別では「特別養護老人ホーム」の78.6%減(14→3社)、「訪問介護事業」の8.3%減(421→386社)などが目立った。
 減少率の高い県では、介護報酬改定や人材確保難などから収益試算を見直し、事業所の新規設立計画を立てる段階で断念したケースが聞かれ、今後も伸び悩む傾向がうかがえた。

都道府県別 老人福祉・介護事業新設法人

 老人福祉・介護事業の倒産は2016年1〜9月累計で77件に達し、過去最多だった2015年の76件をすでに上回った。経営基盤の弱い小規模事業者や事業計画の甘い新規参入業者などが淘汰される傾向が強まり、新設法人数にも影を落としている。政府の掲げる「1億総活躍社会」の実現には介護による離職者の抑制が欠かせない。だが、介護市場では小規模事業者を中心に倒産が増え、新設法人も減少をたどる状況が定着しつつある。それだけに介護離職ゼロの実現には老人福祉・介護業界の安定と同時に、家族を安心して任せられる環境作りが必要だ。新たな市場としてビジネスライクな視点だけでなく、ハード(施設)とソフト(人材)の両面から円滑な事業運営や新規参入を促す細やかな政策支援が今こそ求められている。