最強の動物スタンド使い、出てこいや!


前にもチラっと触れたが、「動物のスタンド使いは強い」はジョジョ読者にとっての基礎知識だ。
今回デビューした「猫草」もそうだが、まずスタンドの基礎体力ともいえる精神力が強い。動物の精神は生存本能と直結しているし、「生きること」や「殺すこと」に躊躇いがないからだ。それに概して、本体の身体能力が人間より高いのもヤバ目である。


その中でも、「最強の動物スタンド使いは誰か」は議論が白熱するテーマではある。第三部で「船ごとスタンド」が衝撃的だったオランウータンのフォーエバー(ストレングス)は、デカさだけならダントツ。でも、敵に船に乗ってもらえないと真価を発揮出来ないし、船に乗らせた時点で不公平じゃない?と物言いを入れられて脱落しやすい。

つい数ヶ月前、仗助&承太郎の主役コンビを追い詰めた虫喰いネズミ(ラット)も強敵だったが、動きの素早い動物にどれだけ射撃が当たるかは心もとないところい。それにダメージが局所に限られるため、巨体のフォーエバーには効きづらいかもだ。

最強候補の呼び声が高いのが、第三部でDIOに館の門番を任されたペットショップ。スタンドのホルス神は氷を操り、氷柱ミサイルを連続発射するわ、巨大な氷塊で車ごと押し潰すわとケタ外れ。しかも本体がハヤブサで、最高降下スピードが時速300km以上に加えて下水道でも水中でも追ってくる氷の執念。深手を負わせても、氷で傷口を凍らせて止血するしぶとさだ。

このペットショップのスペックを原作通り再現したカプコンの対戦格闘ゲーム「ジョジョの奇妙な冒険 〜未来への遺産〜」では、あまりに強すぎて「ペットショップ禁止令」が出たほど。なんせ空を飛ぶので攻撃が当たらず、ご主人様のDIOさえ敵わなかったのだ。

そんな反則クラスの鳥に勝った犬のイギーは、公式に「動物スタンド使い最強」かもしれない。スタンドのザ・フールは砂で構成され、打たれ強いし変身能力もあり。それ以上に、イギー本体が逃げ遅れた子供を助け、氷漬けにされた前脚を自ら切り落とし、ペットショップの嘴に噛みついて勝利をもぎ取ったカッコよさ。動物スタンド使い同士の戦いでも、最後は勇気が勝つ!

猫好きに送るハートフルな30分


この30分間、一つの家族と猫との心通わせる交流。ええ、たぶんウソは言ってない。吉良吉影が顔を変えて潜り込んだ川尻家を舞台ににしたお話に終始して、仗助や露伴先生たちレギュラーは一人も出ない。まるで吉良吉影=川尻浩作が主役のようだ。

徐々にサイズの合わない靴(本物の川尻浩作のもの)を入れ替える吉良吉影。その一方で、一人息子相手に「早人、行ってきます、は?」「行ってらっしゃい」と一生懸命パパを演じる健気さ。

「あなた!地下室で恐ろしいことが!」

どさくさで吉良に抱きついた妻・川尻しのぶ。登場当時、ふてくされていたあの主婦はどこに行ったのかという豹変ぶりだ。声優は「ガンダム Gのレコンギスタ」でアイーダ姫様を演じた嶋村侑さんだが、声がついて原作よりグンバツに可愛くなった。吉良も甘える攻撃の前に、殺人衝動を抑えるのに必死だ。

しのぶが怯えていた原因は地下室にいた。ミネラルウォーターを切らしたから地下室に取りに行って……と日本の住宅事情ばなれしたお話。そりゃ、吉良家の家賃も高いはずだ。

そこで寝そべっていたのは、見知らぬブリティッシュ・ブルーの猫。正式にはブリティッシュ・ショートヘアという種類で、代表的なカラーである青が特に「ブリティッシュブルー」と呼ばれる定番だとか。猫に詳しくなれるアニメ!

猫好きのしのぶは近寄ろうとするが、猫は爪をシャキンと出して警戒バリバリ。でも、いつまでも地下室にいられるのは困る。まず視線を外して近づき、警戒を解こうと「ほ〜ら。仰向けは降伏のポーズよ?」と腹を見せて誘うしのぶ、本当に可愛い。

しかし腹ばいになって後ずさりする可愛さも、猫には通じない。しのぶはカっとして、ものを投げるわ箒を振り回すわ。そのとき、猫は虫みたいに天井に引っ付いた。喉のところにポッカリと空いた穴から、鳴き声が……。その話を聞いた吉良は「あの矢か」と気づく。
箒を振り回す騒ぎの終わった地下室では、猫は死んでいた。破片がざっくり喉を切って出血多量だ。「これは事故だ。誰のせいでもない。運が悪かっただけなのさ。君は悪くない。誰も悪くない」となだめる吉良吉影、実にナイスガイ。殺人衝動さえなければ理想の紳士なのにねえ。

その死体を庭に埋める姿が実にハマっていて、実に殺人鬼らしい。これじゃ猫がスタンド使いかどうか分からないな……とボヤく吉良。大丈夫、明日には分かります。

吉良のへし折られた改心フラグ


雨が上がった翌朝。杜王町レディオの爽やかな放送は、すでに不穏な事態の前奏曲でしかない。吉良が猫を埋めた土に生えていた、猫の目をした怪しい植物!

「ここはどこだ?ウミャオ!なぜここにいるのかな?ウミャウミャ」「2日ほど前誰かに矢で攻撃されてそれは無事だったんだけど…」

猫草の内心のモノローグ、ぜんぶナレーションの大川透さんが担当! 「な…なんか俺の体いつもと違うぞ!変な形になってるぞ!おかしいぞ!どうしてこの場所から動けないんだ!?」と彼は困惑し戸惑った……など、「吾輩は猫草である」といった趣だ。

猫を死に追いやって、傷心のメインヒロインしのぶ。それを観た猫草はすごく嫌な気分がする……しのぶの持つ箒が記憶を呼び覚まし、こんな身体になったのもこの女のせいだ!という怒りが、スタンド発動の引き金になった。吹っ飛ぶしのぶの足親指の爪!

猫草はさっそく、能力で雀を撃ち落とし、朝ごはんにしてムシャムシャ。すぐにスタンド使いだと理解した吉良だったが、スタンド自体は見えなかった。しかし原作通りとは言え、平凡なサラリーマンを装う吉良が、ドクロの柄ネクタイを締めてるのスゴイな。

「最も重要な問題はこいつが敵かどうかということだ…大事を取って殺しとくか」

いつもなら迷わず殺ってる吉良が、とりあえず猫草を観察する。前脚を舐めたり毛づくろいをしたり、食事が終われば寝始めた。フツにー可愛いぞ猫草、アニメの「動き」が与える効果の恐ろしさよ。

「う〜ん。まるで呼ばれたと思って振り向いてしまっている所がまるで猫のようではあるが…。つい匂いを嗅ぎに来るという所もまるで猫だ」

そこに不意打ちでタバコを嗅がせてみるっ!は原作からカットされているが(吉良はタバコを吸わないので設定的におかしかった)、どうしてそこまで猫に詳しいんだ。

そうして敵意がないのを確認し終えたところで、しのぶが見に来た。はじめは猫草をしのぶに知られ、それを空条承太郎どもの耳に入れば……と自分の保身を気にかけていた吉良だったが、しのぶの姿に興奮した猫草が再び活性化。やはりこの猫、私にとって有害だった!と吉良もキラークイーンを発動し、根元の小石を爆弾に変えた。「可哀想だがこれでふっ飛ばす」と吉良が憐れむのも珍しく、人間には厳しく猫には優しい男である。

第一の爆弾スイッチオン、しかしなぜか起爆しない。そこにしのぶが近寄り、豊満な胸がぐにゃあと歪んで後ろにふっ飛ばされた。

「これ以上彼女を攻撃させるわけには行かない。貴様には消えてもらう」

ヒロインを守る吉良吉影、まるで正義の主人公だ。猫草のスタンドを「空気操作」だと理解した吉良と、本能で殺し方を理解した猫草と戦いが静かに始まる……。「このクソ猫!ぶっ潰してやる」と猫型のキラークイーンが叫ぶのはシュールな光景だ。

しかし猫草はキラークイーンの踏みつけを空気のバリアで跳ね返し、さらに空気の塊でサボテンを破裂させてトゲ攻撃する。そのとき、トゲのシャワーはしのぶにも降り掛かった。

(なんだ…この吉良吉影ひょっとして今ホッとしたのか…? 彼女の目にサボテンのトゲが刺さらなかったことに…なんだ…この気持ちは…)

自らの内面に、大きく動揺する吉良。もしや善人に改心するフラグか?と思われたこともあったが、そんなことはなかった。「悪は悪らしく、読者が同情する展開にはあえてしない」という荒木先生の美学ゆえだろう。

「その攻撃、もう無駄だ」というのは、死闘の中では負けフラグ。攻撃を防ぎきったと思ったら、吉良の血管には空気の塊が入れられていた。人間の血管内に10cc以上の空気を注射すると血管が塞がれて死に至る……と独白してるが、10ccでは大丈夫で20ccが致死量という説もある。

やるしかない……キラークイーンに自分の血管を爆破させ、空気を出す吉良。甘く見ていたことを後悔したが、次の攻撃が来るぞ!

が、猫草の前にゴルフボールを転がしたことで、戦いは終わった。怒りを忘れてボール遊びする習性は猫そのもので、吉良は猫好きのおかげで助かったのだ。

殺人鬼VS盗撮マニアの小学生


川尻家のキッチンでは、昨日出来事を顔を赤らめて思い出すしのぶの姿。彼の前であたしイキナリ失神しちゃってとっても恥ずかしいわ…子持ちの主婦が、全ジョジョシリーズ通じて最萌えだ!

しいたけをムシャムシャ食べる吉良。本物の川尻浩作が嫌いだったとは知らずにやった迂闊な行いが、料理を作ったしのぶには嬉しいことに思えるすれ違い。

その裏では、吉良とかりそめの息子・早人との攻防があった。靴ベラを使って靴を履いた、二種類の靴があるのはおかしいぞ。最近パパとママの仲がいいのもおかしい。なぜ何度も何度も自分の名前を書いてるのだろう……と監視カメラの映像を繰り返し見る早人。コナンくんでも、そこまでやらない!

そして早人は、パパがクローゼットの中に植木鉢とキャットフードを持ち込んでいたことに気づいてしまった。天井には屋根裏部屋に上がれる扉があった……。

植木鉢の中にたたずむ奇妙な形のもの。明かりを取ろうと窓を開けると、差し込んだ光に反応して動き出した……目玉があって動いてる! 植物じゃあない。フラワーロックだ!(違います)

その頃、吉良も早人の行動に胸騒ぎを覚えて、家に戻ってきていた。まさか今、屋根裏部屋に? どちらもカンが良すぎるニセ親子である。パパ(吉良)が帰ってきたことに気付いて焦る早人。しかし日の光を浴びて活性化した猫草が能力を発動した。

「こいつ…見えなくてパンパンに張ってる何かが…空気の塊のようなものが僕の腕と首を磔にしているぞ!」

吉良でも分析に時間のかかったスタンド能力を一瞬で見抜く早人。やはりあの小僧!と屋根裏部屋の異変を察した吉良が駆けつけるが早いか、時間との戦いだ。

(ま…窓を閉めようとしたら攻撃してきた…こいつ太陽の光で動くのか!そ…そうだ!これが空気の塊なら!)

ランドセルからコンパスを取り出して針をブスリ、同時に吹き出した風圧が窓を閉めて猫草もおとなしくなった。猫草の能力を特定し、太陽の光と関連づけ、一回の行為で2つの問題を解決してしまった早人は、おそらく非スタンド使いの中で最高スペックの小学生。その真価は、のちのち発揮されるだろう。

すべてが終わったあと、ようやく屋根裏部屋に踏み込んできた吉良。

「さっきの音…ストレイキャットのやつ……棚に置いといたキャットフードを空気操作で持ってこようとしてぶちまけたのか」

それは早人が物音をカモフラージュするためにばら撒いたものだ。しかし、あんな姿になった猫草を飼おうとしたり、しっかり「ストレイキャット」と名付けたり、どんだけ猫好きなんだよ吉良吉影。

「早人がここに来てるのではと思ったが……思い過ごしでよかったというところか。もしあの小僧が私のことに気付いたのなら殺さなければならないところだった……」

他人に聞かれるとヤバい内心をペラペラしゃべる吉良。うん、一人暮らしが長いと独り言も多くなりますよね。それを隠れた箱の中で耳にして、ガタガタ震える早人。パパの顔をしているけどパパじゃあない。誰なんだあいつは? 「君の名は。」がバレるまで、あと数話かかるんじゃよ。
(多根清史)