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QualcommおよびNXP Semiconductorsは10月27日(米国時間)、QualcommがNXPを買収することで合意したと発表した。買収の噂は9月末から流れていたが、その噂が正しかったことが証明された形だ。

この買収は、QualcommはNXPの発行済み普通株式を、1株あたり110ドルですべて買い付け、その買い取り総額はおよそ470億ドル(5兆円弱)と半導体業界としては史上最高額の規模となる。合併後の売上高は300億ドルを越える見通し。今後の成長が期待され、2020年には1380億ドル規模の市場に育つ言われるモバイル、自動車、IoT、セキュリティ、RFやネットワーク分野においてリーダーを目指すとしている。

○買収で新たなビジネス機会を創出

台湾に本拠を置く市場動向調査企業TrendForceは、「Qualcommは、最終的にNXPを470億ドルで買収することで合意したことにより、新たなビジネス機会を得たと同時に、大きな課題をかかえた」という分析を報じた。今回の買収により、Qualcommは自動車および産業用アプリケーションに関連した市場での足場を急速に確立できるようになるとTrendForceは指摘しているほか、多くのファウンドリと付き合いのあるNXPのおかげでQualcommはファウンドリとの生産委託価格交渉を有利に進められるようになるという。加えて、NXPのリソースは、システムレベルのソリューションに関してQualcommのポートフォリオを強化し、中国のスマートフォン市場で有利にビジネス展開するのに役立つだろうとしている。

○買収で生じる大きな課題とは?

一方、課題としては、QualcommがNXPを取り込むことで、サプライチェーンを管理することが著しく難しくなるとする。両社の主要製品があまりにも異なっているためである。9月末ころ、QualcommがNXPを買収するといううわさを一部のメディアが報道した時には、シナジー効果がないので、このような買収はあり得ないと複数のアナリストが断言していたほどだ(その割には、かなり短期間で合意に達したといえる)。

もう1つの大きな問題は、特定の市場セグメントにおける製品の重複を防ぐために、製品ラインアップの再編の必要性が生じることだという。例えば両社ともに、オーディオプロセッサとBluetoothに関して独自の製品群を有している。Qualcommは、自動車および組み込みコンピューティング・アプリケーションのために、独自のブランド製品を発売しており、将来的には、そうした従来の顧客基盤を維持しながら、NXPの顧客を取りこむことができるように、その製品ラインアップを再編成する必要があるとする。

また、Qualcommはファブレス、NXPはIDMであるので供給管理上の異なる見解を持っていると思われるともしている。主にスマートフォンメーカーのためのチップ設計を行ってきたQualcommは今後、NXPの年間売上高の半分以上を占める自動車やセキュリティアプリケーション市場向け製品を扱わなければならなくなる。しかし、スマートフォンのライフサイクルは、1年または2年で更新される非常に早いものであるのに対して、自動車やセキュリティチップは、はるかに長い製品のライフサイクルを求められることとなり、NXPを買収した後のQualcommの最初の仕事は両社の主要製品を見直し、その供給戦略を刷新することだとTrendForceは指摘している。

○買収により自動車産業への参入障壁を引き下げ

自動車産業やインフラ向け電子部品市場は、一般的に高い参入障壁があり、新たに参入してこれらの産業のサプライチェーンに加わるには時間とリソースを費やす必要がある。しかし、NXPの買収によりQualcommは最短の時間でこれらの市場で主要顧客を獲得することができるようになる。すでにスマートフォン市場は成長の鈍化により利益が低下していくと見られており、Qualcommは、1つの大きな市場に頼り切るリスクを軽減することができるようになるとTrendForceは見解を述べている。

○NXPのセキュリティ技術がモバイル分野での成長のカギに

また、互いの製品ラインアップを組み合わせることによるメリットも考えられるとする。例えば、NXPはすでにセキュアなモバイル決済市場のリーダー格であり、Qualcommは自社のアプリケーションプロセッサにNXPのこうしたセキュリティ技術を搭載することで高いセキュリティを付加価値として提供できるようになる。近年、モバイル決済が世界各国で活用されるようになってきており、関連するセキュリティ技術の需要は増加している。 NXPの買収により、Qualcommは、こうした分野での地位の強化を図ることが可能となる。

○将来の自動車市場での成長にも期待

さらに、これから普及が期待される電気自動車やコネクテッドビークルといった分野では、研究開発としては多少重なってはいるものの、2社ともに、それぞれが互いを必要としていたともいえる。NXPは電力管理およびその関連技術に対して取り組んできており、一方のQualcommは電気自動車用ワイヤレス充電などに投資を行ってきたためだ。買収以降は2社が一緒に、より総合的な、システムレベルのソリューションを開発することができるようになるため、自動車市場での進歩を加速するためのリソースも得たことになるといえるだろう。

(服部毅)