トークショー第2夜「作家性の萌芽 1999-2003」に登壇した細田守監督

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現在行われている第29回東京国際映画祭では、アニメーション特集「細田守の世界」に合わせて全7回のトークイベントを開催中。国内外を問わず高い支持を獲得しているヒットメイカーの細田だが、はたして彼の映画作りの原点とは?

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映画監督・是枝裕和を迎えて“家族”というテーマを語った第1回目のトークショーに続き、氷川竜介(アニメ・特撮研究家)と初期作品を振り返る第2回「作家性の萌芽 1999-2003」でその発言をピックアップ。細田が“映画”にこだわるようになった、そのきっかけとなるエピソードが語られた。

■ 「演出デビューしてから3〜4年で監督デビューできたのは幸運だった」

スタジオジブリの入社試験を受けるも、不合格となり、東映動画(現・東映アニメーション)へ入社した細田。アニメーターとして、映像制作に関わりはじめて数年たった頃、同社でたまたま演出採用試験が実施され、この試験を機に演出家としての人生をスタートさせた。細田は「チャンスだと思った」と当時の気持ちを振り返る。

「自分が演出になったのが29〜30歳だったんですけど、この年齢ってアニメの世界では遅い方です。演出って、大体22歳とか若いころ体のやっている人がほとんどなので。でも96年に『ゲゲゲの鬼太郎』を初演出して、99年に『デジモンアドベンチャー』で監督デビューと、遅咲きの自分が演出としてひとり立ちしてから3〜4年という短期間で、映画監督の仕事ができたのはすごく幸運でしたね」。

■ 「『デジモン』には未来を背負う子どもへの期待が盛り込まれている」

今もなお、子どもたちから絶大な人気を誇る「デジモン」。「海外の映画祭でも『小さい時にデジモンを見てました』と握手を求められることがある」と細田が語るように、17年前に公開された『デジモンアドベンチャー』を皮切りに、子どもたちに大きな影響を与えてきた。そんな細田が手がけた「デジモン」には、今も彼の作品テーマであり続ける、“子どもたちへの期待”が込められているという。

「大人はしがらみというか、いろんなものがあってややこしいんですけど、社会に出る前の子どもはそういうものを自由に軽々と飛び越えていけるパワーがある。そんなポジティブに突っ走る子どもの姿を描きたくて、インターネットが今ほど普及していない2000年に公開した『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』では、アンダーグラウンドとして描かれがちだったインターネットを、子どもたちが軽々と使いこなすシーンが盛り込まれてるんです。ここには、いずれ未来の社会を支えていく子どもたちへの期待が込められているんです」。

■ 「TVアニメを作っている時も映画を作るつもりで演出していた」

『時をかける少女』(06)をはじめ、『サマーウォーズ』(09)『おおかみこどもの雪と雨』(12)など、数々の大ヒット作を生みだしてきた細田。TVアニメをメインに演出を手がけていた東映動画時代も、常に映画を作りたいという思いは根強く心のどこかにあったそうだ。そんな映画に対する思いが、東映動画時代に制作した作品にも反映されているとか。

「東映動画にいた頃は、座付きの演出家なわけですから、要するに、職務的な依頼をこなすことが多かった。ただ今振り返ってみると、作品に“自分”の表現が出てしまっていることが多かったかもしれないですね。『デジモン』みたいな短編映画を作っていた時も、『おジャ魔女どれみドッカ〜ン!』みたいなTVアニメの1本作っている時も、映画を作っているつもりで創作してました」。

■ 「映画を作りにこだわるようになったのは師匠の言葉がきっかけ」

東映動画に所属していた頃、大泉学園の飲み屋で師匠にいわれたある言葉。「ある意味、いまだに解けない呪いです(笑)」と細田が語るこの言葉は、東映動画を辞めたいまでも彼の作品作りに大きく影響している。細田が映画作りにこだわる理由が、ここに隠されていた。

「僕の師匠の角田紘一さんという、宮崎駿さんと同期のアニメーターの人がいて、その人からずっと『お前、TVアニメじゃなくて、劇場版こそがアニメなんだから映画をやれ』と言われていたんです。『映画をやらなきゃ、この仕事をやっている意味がないんだ』と、洗脳みたいなものをさんざん受けていまして(笑)。でもこの師匠の言葉が、僕が映画を作ることにこだわる大きなきっかけになりました」。

独自の表現を模索しながら、創作活動に没頭した東映動画時代。この頃の経験が、現在の映画監督・細田守の作品の世界観や活躍に繋がっているのは間違いないだろう。次回の第3回のトークショーでは『サマーウォーズ』をフィーチャー。細田の初のオリジナル原作ということもあり、より熱い“映画論”が飛び出しそうだ。【取材・文/トライワークス】