国内ツアーの日本オープン(10月13日〜16日/埼玉県)で初優勝を飾った直後、松山英樹は新たなシーズンが始まった米ツアーに出場。マレーシアで開催されたCIMBクラシック(10月20日〜23日)に挑み、そこでも優勝争いを演じた。最終的には惜しくも2位に終わったものの、米ツアー4年目のスタートは、さらに"進化した松山英樹"をたっぷりと見せつけてくれた。

 このCIMBクラシックで2位となった松山は、世界ランキングのトップ10入りを果たした。日本人選手としては、尾崎将司以来、18年ぶりのトップ10入りとなる。とはいえ、尾崎がトップ10入りした当時は、日本ツアーのポイントが高かった。その後、米ツアー、それもメジャーを中心にポイントの換算方法が何度か改められているため、今回の松山こそ、正真正銘の世界トップ10入りという快挙である。

 松山の"進化"の要素をいくつか挙げると、まずは肉体改造だ。日本オープンで優勝を争った小平智は、「学生時代に一緒に戦っていたけれど、驚いたのは(松山の)あの肉体です。(以前とは)まったく違っていました」と語った。しかも松山の場合、単に筋肉をつけたのではなく、ゴルフスイングに必要な肉体改造を施したのである。

 ゆえに、スイングの軸がブレない。大きな慣性モーメントのクラブも振り切れる。もちろんその肉体は、瞬発力だけでなく、4日間を十分に戦える持続力を保持している。さらに言えば、小さな動き、ショートゲームやパッティングに大切な、体幹を太くすることも松山は忘れていなかった。

 その結果のひとつとして、「(松山は)ドライバーショットの距離も出ているし、アイアンショットでは、自分とは(使うクラブが)1番手違った」と、同じく日本オープンで優勝を争った池田勇太が語っている。その松山の"進化"には、池田も「自分がもう1ランク上に行くには、そこかな、と気づかされた。(松山は大学の)後輩だけど、いい勉強をさせてもらいました」と舌を巻くほどだった。

 また、松山の体幹の太さは、とりわけ手強いラフや、足場の不安定なショートゲームなどで真価を発揮していた。

 そしてもうひとつ、松山が大きく成長したのは、ゲームマネジメントだ。それも、18ホールのマネジメントだけでなく、トーナメントの72ホールを"デザインできる"マネジメント能力である。

 まるで4日間、4ラウンドが、それぞれ「起・承・転・結」のように流れるトーナメント。松山は、自分のそのときの好不調に対して、どう順応し、どう組み立てていけば上位に食い込めるのか、そして勝てるのか、それがよく見えている。

 だから、ゲームで焦らない。ジタバタして、自分からゲームの流れを壊さない。その強さが、松山にはある。

 松山が日本オープンで発したコメントを見ても、それがよくわかる。まず、初日はこう語った。

「そうですね、(内容は)よくないですけど、今日のスコア(1オーバー)以上に打たなくて済んだのでよかったと思います。すごく悪かったわけではないですから、もうちょっとできたかなとも思います。でも、こうやってボギーを極力少なくして、じっと耐えるのも大切ですからね。(今日は)ショートゲームで踏ん張れたと思います。(結果は)あんまり考えないようにしています。自分のベストを尽くした結果が、戦い(優勝争い)につながると思っています」

 2日目はイーブンパーと、秀逸な粘りを見せた。

「う〜ん、そうですね。スコアを(もっと)伸ばせなかったのは残念ですけど、今の状態でよく持ちこたえたな、というのが正直な思いです。(持ちこたえたのは)パッティングとティーショットですね。ティーショットは、ほとんどフェアウェーに行っていないですしね」

 いよいよ3日目、松山は「65」をマークして猛チャージを見せた。驚いたのは、9番から13番までの5連続バーディーという快進撃だ。聞けば、その兆候はスタート早々にあったという。

「1番のセカンドショットと、2番のティーショットを打ち終えたときですね。『あ、今日はうまくいけているな』と。前半からいいショットが出ていたので、かみ合えばいいスコアが出るかな、と」

 それが確信に変わったのが、9番のバーディーだった。そこからの5連続バーディーは、まさに圧巻だった。

 序盤からいい感覚でプレーできていた分、松山は心に余裕を持って戦えたという。おかげで、「前半はリラックスできていて、後半はいい緊張感の中でプレーできました」と、ゲームプランもしっかりしていた。そして、最終日に向けても気負いはなかった。

「アイアンショットがだいぶよくなってきているし、もし明日悪くなっても、悪いなりにまとめられるようにしたい。よければ、それなりにやりたいと思っています」

 迎えた最終日。首位の松山を1打差で追う同組の池田が、1番ホールで先にバーディーを奪った。それを見て、松山は2番ホールですかさずバーディー。結局、前半を終えて松山が4打リードして、バックナインに向かった。

 この4打のリードが、後半の戦いを左右した。

「後半の10番から14番まで、バーディーチャンスがいくつもありましたが、まずは3パットすることなく、しっかり2パットでいけたのが大きかったと思います」

 ラウンド後、そう語った松山。つまり、バーディーを逃しても、ボギーを叩かなければ4打のリードは変わらない。その間、相手が焦って無理をする。松山としては、それを傍観していればいいわけだ。実際、松山は前半につけた差をひとつ縮められただけで優勝を飾った。

 松山のゴルフは、紛れもなく世界のトップ10である。日本オープンで、新シーズンの米ツアー1戦目で、その仲間入りをしてもおかしくないほどの"進化"を見せてくれた。

 2016−2017年シーズン、松山にとって米ツアー4年目は、大いなる飛躍を果たすシーズンになると思う。

三田村昌鳳●文 text by Mitamura Shoho