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10月30日、羽田にて日米間の昼間便が就航となる。両国に10路線をどう振り分けるのか注目された中で、もうひとつの話題となったのはデルタ航空の動向だろう。デルタが進める戦略の核心を、航空会社創業経験もある航空ビジネスアドバイザーの武藤康史氏が日本支社長の森本大氏に迫った。

○成田活用の多様化で羽田と差別化

森本支社長:成田に対しての危惧に関してですが、特にこれは5年前だと確かにそうした議論はありました。ですが政府は、2020年までに訪日外国人を4,000万人にまで増やすと言っています。2015年ではほぼ2,000万人に近い数字を達成していますので、現状の約2倍ですよね。

森本支社長:もちろん、今後増えると見込まれる訪日外国人の多くは成田を利用して日本に来るわけです。普通に考えて、アメリカの航空会社が5,6便を羽田に動かしても、それ以上のアジア便が十分確保できるようになっているので、成田が衰退するのではという危惧はもう消えたんじゃないかなと思っています。ある程度、訪日外国人を成田でカバーできるという見込みが立っているなら、もう少し政策として羽田への移行を加速させてもいいんじゃないかと思うんですよね。

羽田は明確にビジネス路線、成田は観光路線やLCCの基地として充分に需要がある。千葉からの利用者も多いですし、国内線も使えますよね。アジアから来る人も、成田からそのまま東京へという人もいます。従来に比べて、今の成田はかなり選択肢が広がっています。その中で、特に北米などのビジネス路線を羽田に寄せていければと期待しています。

武藤氏:羽田への路線移行によって、貨物の場合は旅客とは逆の懸念がありますよね。成田路線の移管・撤退による貨物への影響はどのように感じていますか?

森本支社長:「国際線は成田でやりましょう」となって、デルタは貨物施設も含め、成田に投資をしてきました。旅客よりも貨物の方がスペースが必要になるんですよね。詰め替えなどの全てのスペースが成田にはありますが、羽田にはありません。デルタの場合は飛行機だけの問題にはなりますが、フォワーダーにとっては貨物施設やネットワークに乏しい羽田では無理です。デルタにとっても、羽田の貨物をどうやって成田に運ぶのかという問題はあります。それは羽田路線に就航する他の航空会社も同様です。

武藤氏:貨物に関してはノースウエスト航空時代から積極的に事業展開していたかと思うんですけど、最近の貨物事業の動向はいかがでしょうか?

森本支社長:時代の大きな流れで言うと、貨物専用機がなくなって旅客機を使って運搬しているところが多くなっています。そうなると固定費が事実上なくなるので、利益率が上がります。それでもコストを考えると、船の方が圧倒的に安いです。また、船の航行スピードは変わらないんですが船積みのスピードが格段に上がっており、船の所要時間がどんどん短くなっているという変化があります。

ただ、飛行機の貨物は役割が少し変わってきています。例えば、iPhoneの発売のようにスピードが勝負になる時、また、熊本地震でホンダのエンジン工場で1〜2週間滞留したものを一気に運びたいという時にも、飛行機の機動力が発揮されます。

○"ハブ紛争"に疑問、本質的なデメリットはあるのか?

武藤氏:話を今まで成田が担ってきたハブ機能というものに戻しましょう。これまでにはアジアのハブを成田から仁川にもっていかれるという議論もありました。それについてはいかがでしょうか?

森本支社長:アメリカから東南アジアに行く場合、日本と韓国とどちらを通るのかということに関して、すごく差があるのかという議論になると思います。アメリカとアジアの利用者にとってはどこの空港で乗り継いでも、それほどメリット・デメリットがあるわけではありません。

デルタは成田にずっと投資してきましたので、できれば成田をずっと乗り継ぎ拠点として使いたいと思ってはいます。かつてでしたら成田から北米7都市、今回ニューヨークをやめて6都市になり、その内の2都市が羽田に行くので、北米路線の3分の1が羽田になります。今後、羽田が2便、4便と増えていくとすると、事実上、羽田の方が成田より大きくなるので、羽田中心に戦略を立てなければならないと考えています。

武藤氏:日本人からすれば米国からの乗り継ぎが成田からなくなっても何も変わらないでしょうね。仁川のハブ機能を使って日本人は仁川経由で欧州に行くのか、というとそうはならない。ハブの両側の国がどこを通るのかというだけの話ですよね。日本の旅客にとっての本質的なデメリットはない。統計的なデータとしての離発着便数とか搭乗者数が多少動くくらいで、外国航空会社のハブが他国に移ってしまい大変、というのは日本国民の実感とは違うんじゃないかいう議論を以前からしていたので、お話をお聞きしていて、その通り、という思いです。

欧州との関係だと、日本がハブ的な役割になることはなく、日本と欧州はpoint to pointの旅客がほとんどで欧州から先にEU内のフィーダー需要が付いているくらいの状況ですが、アメリカに関しては先ほどからもおっしゃっているように、アジアとのつながりがあり、ハブの議論はあるんだろうなと。ただそれも、意味合い・意義が変わってきているのかなって思うんですよね。

デルタとしては、今後、どんどん羽田線が拡大することでビジネスのイールドが高くなるなど、会社としてのメリットも拡大するという印象ですよね。現状はまだ羽田の枠に限りがありますが、ビジネス利用者の拡大の他にも、今後羽田でこうしたことができるようになったらいいな、ということはありますでしょうか? 新たな就航地とか、提携関係とかです。

(松永早弥香)