カブドットコム証券は16年12月下旬から、証券業界で初めてとなる投資信託の「信託報酬控除前トータルリターン」の情報を配信開始する。(写真は、信託報酬控除前・控除後トータルリターンの比較チャートのイメージ)

写真拡大

 カブドットコム証券は16年12月下旬から、証券業界で初めてとなる投資信託の「信託報酬控除前トータルリターン」の情報を配信開始する。新しく開示する信託報酬控除前トータルリターンと従来の信託報酬控除後トータルリターンを比較することで、投資家が負担しているコストがより明確に理解できるという。同社UX戦略グループ長の伊藤充淳氏は、「取扱い投資信託のコストを一段と透明化することにより、フィデューシャリー・デューティーの高度化・徹底を推進する」としている。

 一般に投資信託の時価を表す数値として使われている「基準価額」は、信託報酬や監査費用などの投資家が負担するコストを控除後の数値になっている。したがって、投資信託のパフォーマンス(収益率)を示す指標の「トータルリターン」(値上がり益+収益分配)も、信託報酬等を控除後の数値になっている。信託報酬の水準はファンドごとに異なるため、運用会社の運用力やファンドのパフォーマンスを正しく評価するにも信託報酬等のコスト控除前の数値で評価した方が公正(フェア)といえる。

 そこで、目論見書をベースに、信託報酬や監査報酬、投資先ファンドの信託報酬など具体的な数値が開示されているコストを集計し、信託報酬控除後のトータルリターンにプラスすることで、信託報酬控除前トータルリターンを算出する。そして、信託報酬控除後と信託報酬控除前のトータルリターンを、過去1年、3年(年率)、5年(年率)、10年(年率)で並べて表記する。信託報酬控除前トータルリターンの算出は、モーニングスターが協力する。

 このような取り組みの背景について、「当社も所属するMUFGグループは、今年5月にフィデューシャリー・デューティー基本方針を公表し、その中で、『お客さま本位の情報提供』に取り組むことを宣言している。投資信託のコストは、比較的、投資経験の浅いお客さまからの問合せの中に『ノーロード投信は、ボランティアで販売して投資家に奉仕しているのか?』と質問があるほど、分かりにくくなっている。投資信託の残高に応じていただいている信託報酬が、基準価額から日々控除された形で公表されていることも投資家の視点からは不透明な理由のひとつ。あえて、控除前の数値を明らかにすることによって、投資信託のコストの透明性が高まる」(伊藤氏)という。

 同社は購入時手数料を無料にしたノーロード投信が、取扱い商品の半数を占める。「お客さまのコストに関する意識は高く、販売上位商品にはノーロード型、かつ、信託報酬の低いインデックス型が並ぶなど、投資信託の商品選定でトータルコストが考慮されている様子が分かる。今回の信託報酬控除前トータルリターンの開示も、より、コスト負担が明確にわかるように、控除前・控除後の比較チャートや棒グラフを掲載し、トータルリターンの源泉をコストと投資パフォーマンスに分解して投資家に明示する」(同社UX戦略グループ セールスクリエイティブディレクターの松永亜弓氏)。

 信託報酬控除前のトータルリターンの表示は、12月中に同社のPCサイトやスマートフォンサイトの投資信託パフォーマンス表に表記する。チャートや棒グラフによる可視化の表示は、年明けに対応する予定。投資信託のポートフォリオ提案アプリ「FUND ME」でも信託報酬控除前・控除後トータルリターンを表示する他、ファンド検索画面で「信託報酬控除前トータルリターン」でフィルタリングできるようにもする。

 「将来的には、たとえば、同じ原資産に連動するインデックス型投資信託とETF(上場投資信託)のコスト比較を検討している。また、個人投資家にもデリバティブを活用したヘッジ商品が低コストでアクセス可能となった状況下でカバードコールや通貨選択型、為替ヘッジ型など複雑なスキームを使った運用商品について、税制などは考慮する必要があるが、ネット証券のデリバティブ口座を使って直接ヘッジした場合とのコストを比較し可視化できるようにしたい。コストをより透明化し、比較できるようにすることによって、投資家の方々には、より低コストでパフォーマンスの優れた投資信託が分かりやすく、見つけやすい環境を提供したい」(伊藤氏)と、投資信託のコストの透明化に向けた取り組みに力を入れていくとしている。(写真は、信託報酬控除前・控除後トータルリターンの比較チャートのイメージ)