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●観客の喜びが佐藤プロデューサーへの恩返し
藤原竜也のキラ・夜神月、そして松山ケンイチのL。名前を書いた人間を殺すことができるという死神のノート"デスノート"を巡って2人は頭脳戦を繰り広げ、命と引き換えに互いの正義を守り抜いた。今でこそ当たり前となっている2部作連続公開の先駆けともいえる実写映画。『デスノート』(06年6月)は28.5億円、『デスノート the Last name』(06年11月)は52億円の興行収入を記録し、漫画原作映画の成功例としてもその後の邦画界に影響を与えたと言われている。

それから10年後、「新世界の神」は息を吹き返す。続編となる『デスノート Light up the NEW world』が公開されると発表されたのは、昨年9月のこと(当時の仮題は『デスノート2016』)。ドラマ版の最終回終了後に告知され、わが耳を疑った。舞台は月とLの死から10年後の世界。6冊のノートの存在が判明し、3人の天才が三つ巴の戦いを繰り広げる。その中心に立つのが、デスノート対策本部捜査官・三島創を演じる東出昌大(28)だ。

Lの遺伝子を継ぐ世界的名探偵・竜崎(池松壮亮)、キラ信奉者でサイバーテロリスト・紫苑優輝(菅田将暉)。 役者としても手強い2人を脇に従え、"デスノートオタク"は人気シリーズを背負うプレッシャーを吹き飛ばすように熱のこもった演技を披露する。演じるのは天才。しかし、彼は自身を「凡才」と言い切る。俳優デビュー作『桐島、部活やめるってよ』(12年 以下『桐島』)で学んだ「逃げない心」が、インタビューの言葉からも伝わってくる。

――映画化されると聞いて、本当に驚きました。

同じです(笑)。えっ? 何やるの!? と。僕も多くの方と同じように前作のファン。そして、リアルタイムで観ていた世代。まさか、Lと月のどちらかをやるなんてないよな……。ファンの方が「え? マジで?」の後と同じようなことを、僕も考えました。

その後、大場つぐみさんがアイディアを考えてくださって新しいストーリーになっているというのを聞いて、それならぜひと。台本が楽しみになりました。ただ、前作までがかなりの完成度で、マンガも完結している上に支持している方も多い。

10年後……まさかニア、メロの10年後ではないよな……。そんなことも頭をよぎりました(笑)。

――実際に上がってきた脚本を読んで、その心配の種は無くなりましたか(笑)?

台本をいただてからは楽しみでしょうがなかったです。何よりもうれしかったのは、『桐島、部活やめるってよ』(12年)でもお世話になった佐藤貴博プロデューサーが10年前から手がけているシリーズに加わらせていただけること。外さないものは作らない方だとわかっているので、その指揮の下でやれる喜びもありました。

佐藤プロデューサーは、ものすごい熱い方なんです。『デスノート』に対しての思いが、人一倍強く、生粋の『デスノート』ファンでもある。ファン10人分ぐらいの熱量でやっている方なので、大船に乗ったような気持ちというと失礼かもしれませんが、一緒に情熱を注ぎたいと思いました。

僕が出させていただいた舞台『夜想曲集』で、終演後に楽屋あいさつに来てくださって。「よかったよ」と褒めていただいた後に、「ちょっとデカイ作品がある。お前でいくから」と言われたんです。その時は何のことか分からなかったんですが、それが去年の夏前ごろ。秋口にお話をいただいて、その時の言葉がピンと来ました。楽屋に来てくださったときの目つきが本当に真剣な目つきで、大きな期待と同時に、「覚悟しろよ」と言われている気がしました。『デスノート』は、佐藤さんにとっての宝。真正面から向き合わなきゃいけないと思いました。

――東出さん、池松壮亮さん、菅田将暉さんの共通点が、日本アカデミー賞で新人俳優賞を受賞したこと。東出さんは壇上のスピーチで、「『桐島』のスタッフと俳優として再会したい」とおっしゃっていました。

こうしてご一緒できるのはもちろんうれしいことですが、出演が決まったときは、プレッシャーとも違って……もっともっと考えないといけないことが先々に山積みになっています。

映画が完成して、たくさんの方に観ていただいて「よかったよ」と言われた時に、ようやく"恩返し"になるのかなと思います。出演が決まった段階では、まだ恩返しではない。400メートル走であれば、「再会」はほんの2〜3メートル程度と思っています。

●「夜神総一郎に引き抜かれた」を捨てない
――公開間近の今、400メートル走も佳境だと思います。現時点ではどのような思いですか。

そうですね……。あっ! 映画、いかがでしたか?

――10年後の続編と聞いて勝手に心配していたのですが(笑)、デスノートをうまく活用した物語に仕上がっていると感じました。良い意味で裏切られてしまった。あとは東出さんの演技が凄まじかった(笑)。

ありがとうございます。今おっしゃったことをそのままを記事にしていただけると、最大のウリ文句になると思います(笑)。

――でも、ネタばれになるから多くを語れないんですよね。

そうなんですよ。僕らは劇場さえ来てくださったら、逆転に次ぐ逆転を楽しんでいただける絶対的な自信を持っているんです。ただ、いかんせんネタバレが多い(笑)。もし、一緒にご覧になっている方がいたら、答え合わせを絶対にするじゃないですか? これは『デスノート』シリーズが受け継いでいる魅力そのもの。そのポイントは外していません。

――終わって、誰かと一旦整理してみたくなるあの感じですね。そういえば、東出さんが演じた三島。彼の正義感の背景などは、描かれていませんでしたね。

準備稿の段階ではありました。「上司を殴って窓際部署の対策本部に配属された」という設定でしたが、「実は夜神総一郎に引き抜かれた」という裏の設定も。夜神総一郎はいずれまたデスノートを巡る事件が起こると予感していて、有能な三島を引き入れたんです。これらは台本から削られましたが、僕にとっては捨ててはいけないこと。佐藤(信介)監督からも、「頭のなかに残しといて」と言われていました。

――佐藤プロデューサーは、「内面を表現してもらうように、試行錯誤してもらった」と。具体的にどのような試行錯誤だったのですか。

デスノートには、単純に人を殺せるということだけではなくて、独特の魔力があります。あの世界に身を投じて、デスノートの怖さをさらに知っていくことが大切でした。手に入れると人格が変わってしまう。それが『デスノート』。三島、竜崎、紫苑はそれぞれの正義感があったはずなのに、その正義感が歪んでしまう。

月だってあんなに爽やかな青年だったのに、一歩道を踏み外すとそれがどんどん加速していく。そういう心情を、台本を読み込みながらどんどん掘り下げて、感情を追うだけではなくて、そこにはデスノートの何が作用したのかも考えるようにしました。

――デスノートのルールはとても複雑です。三島の部屋に積まれたノートには実際にそれらが書き込まれているそうですね。細かいルールも頭に入れていたんですか?

僕も原作ファンなので、原作ファンの裏切られたくない気持ちがすごく分かります。だから、仮に「ルールを無視」と言われたら、「それはファンとしてできません」と断っていたと思います。そういう共通認識をこの作品に関わる人はみんな持っていて。台本が改訂していく中でも、どのルールが作用しているのか、確認し合いながら進めました。

――デスノート対策チームの現場では、撮影後に酒盛りが行われていたそうですね。どなたのアイデア?

たぶん、池松くんだったと思います。毎晩(笑)。ロケ地の神戸に入って、監督、プロデューサーさん、美術部さん、俳優部で焼肉食べに行った後は、連日デスノート対策チームで酒盛りです(笑)。深夜2〜3時までかかることのほうが少なくて、22時ぐらいには終わって。家族と談笑するように、自然とみんな部屋に集まって語り合い、そうやって役の皮を一旦剥がして寝ていました。

――その目的は? 相手を知るため?

それもありましたね。子どもの会話みたいなんですが、「デスノートを手に入れたらどうする?」とか。ある時に、「電車の中で嘔吐した人がいたら?」という話になって。そこはそれぞれの人間性が出るというか、みんなディベートのように自分の考えを真剣に話していました。

翌日、池松くんが「昨日のように、人の核となるような話をしたかった。お互い話せないこともなくなるから」と言っていたのが印象的で。確かにそうだなと。それからは、お互い遠慮することもなく、思っていることを確認し合えました。あの時間があるのとないのでは、演じる上でも大きく違っていたと思います。

●『桐島』ラストの葛藤「泣けるのか?」「泣けない!」
――以前からお酒がお好きとおっしゃっていましたね。東出さんにとって「お酒」はどのような役割がありますか。

緊張感がある中で、副交感神経を和らげる効果があります(笑)。リラックスできるので、人と話す時は本当に便利ですね。お酒を理由に暴れたりするのはちょっと違うと思うんですけど、「お酒を飲んでるから何でも話していいよね?」みたいな方向に持って行けるのがありがたい(笑)。そういう力を借りて、みんな腹割って話すのが好きですね。

――だいたい共演される方と飲みに行かれるんですか?

作品によって異なります。今回は「デスノートを敵」として集まった対策本部の面々だったので。でも、役者でもいろいろなタイプがあると思いますが、仮に思いっきり敵対して憎しみ合う役だったら、一緒に飲みたいとは思わない。そういう気持ちで、現場で顔を合わせないようにすることもあります。

――俳優デビューとなった『桐島』の時と比較して、現場の人や作品との向き合い方は変わりましたか?

ちょっとずつ、逃げなくなってきたのかなと思います。ちょっとずつですが。まだ、自分は弱くて、もっともっと深く突き詰めなければいけない。言い訳せず肩の力を抜いて楽になれば、より良くできるのかなと思う時もあるんですが。いかんせん、それに気づかなかったり、挑戦する勇気が出なかったり……その時は、意外と精一杯だったり。終わってみて、もっとこうすればよかったと思うことばかりです。

――数年前を振り返ると、自分は逃げていたと。

それは思います。『桐島』のとき、ラストで泣きの芝居があったんですが、あの時、余計なことばかり考えていて。「泣けるのか?」「泣けない!」とか。役の感情になればいいんだからと言われても、「そんなこと言われても!」と受け入れられなかった(笑)。でも、そこで逃げないで向き合っていれば、もっと素直に演じられたはず……。役者として駆け出しだったのもありますが、ほかの役者さんだったら僕よりも間違いなくうまくやっていた。今振り返ってみても、本当にご迷惑をかけたなと思います。

――逃げない心。鍛えるにはやはり場数ですか?

そうですね。天才と言われる人たちは、そこに「素直さ」があるんだと思います。お芝居というものを瞬間的に信じる力が強かったり。僕は凡才だし、不器用だし、ガチガチに理詰めで考えたりするので、もっと素直になりたいなと思うこともあります。でも、恐怖もあったりして……。

――最近では『聖の青春』(11月19日公開)で演じた、羽生善治さんが話題になっています。「役者・東出昌大」としての周囲の目が最近変わりつつあるような気がするのですが、ご自身としては?

うーん……変化はあるのかもしれません。ただ、人は頑張っている姿を見たいのではなくて、良いものを見たい。だから、僕は一生懸命頑張っていても、「頑張っているつもり」になったら絶対にダメなんです。

だから、もっと楽にやってみよう。そう思ったのが半年ほど前のこと。でもそれはもともとあった感情でした。『桐島』のころにはあった感情だったのに、いつの間にか損なわれていた。今、『桐島』を観ると、「これはできないかも」と思ったりして。

ただ、「楽にやる」というのが間違った方向に行き過ぎると、「お前、楽するなよ」という"小さな東出"が騒ぎ出す。周囲の方からも、そう思われているかもしれない。でも、ちょっとずつ、ちょっとずつ。成長しているとは絶対に思う。思わないとやっていけないんです(笑)。役者として、これからもまだまだ考えることが山積みです。

■プロフィール
東出昌大
1988年2月1日生まれ。埼玉県出身。身長189センチ。A型。高校時代にメンズノンノ専属モデルオーディションでグランプリを獲得し、モデルとしてパリコレのステージも経験。2012年、映画『桐島、部活やめるってよ』で俳優デビューを果たし、第36回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞した。NHK連続テレビ小説『あまちゃん』『ごちそうさん』で多くの人に知られる存在となり、『クローズ EXPLODE』(14年)、『寄生獣』(14年・15年)、『アオハライド』(14年)、『GONINサーガ』(15年)、『ヒーローマニア』(16年)『クリーピー 偽りの隣人』など映画に多数出演。現在の公開待機作は、本作のほか『聖の青春』(16年11月19日公開)、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(16年12月17日公開)。
(C)大場つぐみ・小畑健/集英社 (C)2016「DEATH NOTE」FILM PARTNERS

(水崎泰臣)