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10月30日、羽田にて日米間の昼間便が就航となる。両国に10路線をどう振り分けるのか注目された中で、もうひとつの話題となったのはデルタ航空の動向だろう。デルタが進める戦略の核心を、航空会社創業経験もある航空ビジネスアドバイザーの武藤康史氏が日本支社長の森本大氏に迫った。

○日本市場へのコミットは今後も継続

デルタが羽田で就航するロサンゼルス線とミネアポリス線の裏で、成田は5路線(ニューヨーク/ロサンゼルス/ミネアポリス/関空/バンコク)を運休。他方、同じスカイチームの大韓航空との共同運航便の拡大で、"日本離れ"もささやかれていた。そうした中で、森本氏が示したデルタの日本市場に関する戦略は以下である。

■成田から羽田へシフト、今後も日本はデルタにとって最も重要な国際市場のひとつ

そもそも羽田は国内線、成田は国際線という位置づけがあったため、デルタは成田をハブとしてスタッフや格納庫、また、ラウンジなどへ長年投資をしてきたという経緯がある。羽田に関してはスロットや施設スペースが確保され次第、投資を検討。日米両サイドで販売促進と広告展開を行い、都心に近いという羽田の立地を生かした法人営業を強化。特に羽田から近い大田区・品川区・川崎市の企業への営業に注力し、新しい需要の創出を狙う。

デルタのアジア太平洋路線において、売上シェアは日本と中国とで半々を占めているという。成田から羽田に移行するとアジア路線との接続がなくなるため、その分、日本での座席販売数は増えると見ている。今後、日本経済が悪くなるとは想定していないが、中国の成長はしばらく続くと予想され、相対的に日本よりも中国の比率が高まることにはなるだろう。

■"ハブ紛争"へ提議、あくまでも利用者目線で有利な環境を提携会社と築く

日米間のpoint to pointであれば就航地が成田か羽田かは大きな問題になるが、例えばアメリカから東南アジアへ行く場合は、乗り継ぎ空港が成田でも羽田でも仁川でも大して変わりはない。仁川から多くの路線を展開している大韓航空と提携し、その路線を活用するメリットは大きいと考えている。アメリカ人の利用者目線で見れば、どの地を経由するかという議論は重要ではない。成田では今後も、デルタが高いシェアを持っている路線(アトランタ/デトロイド/シアトル/ポートランド)、 乗り継ぎ需要の高いアジア路線(シンガポール/マニラ/台北/上海)、日本人向けリゾート路線(ホノルル/グアム/サイパン/パラオ)は継続していく。

■羽田=ミネアポリス線は乗り継ぎ空港としての利便性を訴求、羽田=ロサンゼルス線はビジネス需要にもレジャー需要にも対応する目的地として訴求

ミネアポリス空港には2015年に全米初のゴルフ複合施設がオープンするなど、乗り継ぎ空港として充実した施設を備えている。日本からの乗り継ぎを意識し、米国内主要都市間のスケジュールを調整。ビジネス利用者の場合は1時間〜1時間半の乗り継ぎを、レジャーパッケージ利用者の場合は2時間の乗り継ぎを意識してスケジュールを組んでいる。それとともに、目的地としての観光需要を喚起していく。"世界一混んでいる空港"とも称されるロサンゼルス空港では、第2/第3ターミナルを新改装することで顧客エクスペリエンスの向上を図り、乗り継ぎの利便性を高めていく。

羽田路線にはボーイング777を導入するが、全席通路側のフルフラットベッドシートを備えたビジネスクラス「デルタ・ワン」では、ウエスティンホテルと共同開発した枕とコンフォーター、TUMIブランドのアメニティキットを搭載。エコノミークラス「メインキャビン」でも機内用スリッパを提供するほか、ハーゲンダッツやベン&ジェリーズなどのアイスクリームを提供するなど、きめ細かく日本向けのサービス向上を図っている。

デルタが2017年後半に運航を開始するエアバスA350-900型機に関しては、日本路線への早期導入を検討しているという。同機には、フルフラットベッドシートにスライド式ドアを加え、個室タイプになるビジネスクラス「デルタ・ワン」スイートを搭載。高く設けられた囲いでプライベート空間を確保できる。

○羽田国際化に向けて国に希望すること

武藤氏:「成田撤退」という刺激的なタイトルに目が走ってしまう傾向がありますが、今回は新規路線開設ではなく成田からのスイッチで、羽田発着であることの強みをより大きく発揮していければということだと思います。

森本支社長:実際には、ハブの変更とは全くストーリーは違っていて、もともとデルタと合併する前のノースウエスト航空の時代から、羽田をハブとしてきました。日本の民間航空会社がスタートする前、1947年から日本に乗り入れていましたから。1978年に「これから国際線は全部、成田です」ということになり、成田をハブにするため投資したところ、「今度は羽田を国際化する」と言われたわけです。それで、羽田に戻すなら全部戻させてほしい、一部だけではハブとしては機能しないから、と主張してきました。

そこから、デルタは羽田の国際化に反対していると報道されることもありましたが、実際は反対しているのではないです。羽田を国際化し、アジアまたは日本のハブ空港と位置づけるのであれば、乗り継ぎ路線に必要なスロット数を確保してほしいと希望したのです。

2016年2月の日米航空協議でその議論が進みました。今はまだ、夜間も入れて日米間路線全体で12枠しかなく、米国側はそのうち半分の6枠を4社で分けなければいけませんでした。デルタとしては、できるだけ早くより多くの路線を羽田に移したいと思っています。一方、長年デルタが投資してきた成田は今、アクセスもよくなっています。羽田の国際化がさらに進むのであれば、成田のように充実した公共交通機関が必要になります。

森本支社長:空港から都心に行くのに、成田の73kmと羽田の26kmという物理的な距離の差はものすごく大きいです。特にビジネス利用者にとっては、羽田ならタクシーで30分くらいで着くので成田より便利ですよね。訪日のお客さまにとっても、空港からタクシーに乗って50ドル出せばどこのホテルにも行けるので、羽田を国際線に活用するという方向性自体は魅力的だと思います。

武藤氏:他方、やはり成田自体がこれから萎んでいくのか、もしくは更に膨れていくのかとなかなか将来の姿がはっきり見通せない中なので、外航の日本戦略としてやや表面的な議論になりがちなところがあるかもしれません。日本路線にはpoint to pointの需要が底固くあります。アメリカとアジアの輸送のハブとして機能している成田から羽田に移動したとしても、十分に収益はカバーできるというお考えでよろしいでしょうか?

(松永早弥香)