日本橋三井タワー photo by  Angaurits at English Wikipedia(CC BY-SA 3.0)

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 10月24日、日本再生医療学会、再生医療イノベーションフォーラム、ライフサイエンス・イノベーション・ネットワーク・ジャパン(以下LINK-J)の3者が主催し、「第1回再生医療産学官連携シンポジウム」が開催された。

 上記3番目のLINK-Jという一般社団法人は、三井不動産とアカデミア有志が中心となって設立されたものである。

 三井不動産が中心となって設立されたことに違和感を持つ読者もいるかもしれない。不動産会社が再生医療? もちろん、三井不動産が再生医療の研究をするわけではない。しかし、三井不動産は、不動産会社としてハコだけを提供するだけでもない。

 三井不動産は、事業内容のひとつに「ベンチャー共創」を挙げている。(参照:『三井不動産』) 同社は<街づくりで築きあげた幅広いノウハウやネットワークを、ベンチャー企業とともに事業を創る力へ>変えていきたいとしている。すでに「ベンチャー共創」事業として「31 VENTURES」が立ち上げられている。

「31 VENTURES」は、<三井不動産グループによる国内外の幅広い事業領域を活用し、ベンチャー企業の成長を「コミュニティ」「支援」「資金」を核に総合的に支えるプラットフォームを構築>することを標榜している。

 つまり、三井不動産は、不動産というハコを提供するだけでなく、人材、販路、資金など、あらゆるものをワンストップで提供していこうとしているわけだ。その流れの一つがLINK-Jであり、「第1回再生医療産学官連携シンポジウム」の開催なのだ。

 そして、この三井不動産が日本橋を本拠地にしているのは、医学、理学や工学、ICTや人工知能といった新たなテクロノジーなど、あらゆる科学の複合領域であるライフサイエンス領域におけるオープンイノベーションや、分野を超えた内外の人的交流・技術交流を目指す上で非常に好都合だと言える。

 というのも、江戸時代から日本橋には薬問屋が集まり、現在も日本を代表する医薬品企業の本社が多い。アステラス製薬株式会社、興和株式会社、三共株式会社、ゼリア新薬工業株式会社、第一製薬株式会社、中外製薬株式会社、鳥居薬品株式会社、万有製薬株式会社、わかもと製薬株式会社などの本社がある。また、同エリアに集積するライフサイエンス関連の企業は400社とも言われるのだ。

 また、豊富な商業施設や宿泊施設などの魅力的な都市環境を備え、国内外から情報・人・投資家の注目を集めることができる場所でもある。

 実際、「第1回再生医療産学官連携シンポジウム」の「第3部 LINK-J創立記念シンポジウム〜エコシステムの構築について〜」にで登壇したノーベルファーマ株式会社 代表取締役社長 塩村仁氏は、日本橋の良さとして、主要な製薬企業、大学、病院、研究機関と1時間でアクセスできること、厚生労働省や文科省とも距離が近いこと、新宿や六本木などよりも家賃が安いことを語っている。

 東京都は、『「東京都長期ビジョン」平成28年度の事業展開』の中で、「世界をリードするグローバル都市の実現」を都市戦略のひとつに掲げ、「世界から資本・人材・情報が集まり、新たなビジネスが次々と生み出される国際経済都市を実現するため、外国企業の誘致や国際ビジネス環境の整備を促進する。また、国際金融センターや国際的なライフサイエンスビジネス拠点となるための取組を着実に促進する」ことを目標としている。

 ライフサイエンス分野の関連企業が集積する日本橋において、ものづくり中小企業と医療機器製販業者等とのマッチングや研究会の場を提供する「医産学連携・医療機器開発支援センター(仮称)」を整備するとしている。

 このように、日本橋は、ライフサイエンスの歴史やバックグラウンドがあり、立地も良く、政策も後押ししてくれている場所である。

 伝統の町日本橋。不動産会社による新しい試みは、ライフサイエンスのイノベーションをも促進させることができるか?今後も注目していきたい。

<文/丹羽唯一朗 photo by Angaurits at English Wikipedia(CC BY-SA 3.0) 、photo by bryan… via flickr(CC BY-SA 2.0) >