本格的な4回転時代に突入した男子シングルで、どんな戦いをすればメダル争いに加わることができるのか。今季GP初戦のスケートアメリカは、それに対してひとつの答えが出た大会となった。

 世界で初めて4回転フリップを成功させ、ギネス記録の認定を受けた宇野昌磨は、今季からフリップとトーループの2種類の4回転ジャンプをSPとフリーに組み込むことができるようになり、SPで2本、フリーで3本の計5本の4回転ジャンプを跳ぶ構成にした。

 高難度のジャンプ構成ではあるが、すでに昨季の世界選手権のメダリストたちは成功させており、さらにフリーでは4回転を4本跳ぶ構成で戦いに挑んでくる選手もいる。

 今回、大会開幕よりも10日も早く現地入りした宇野は、時差調整にしっかり取り組み、万全のコンディションを整えてシニア2年目のGP初戦に臨んだ。「早く試合がしたい」と待ち望んだ本番では、SPで4回転フリップと4回転トーループに成功。フリーでも4回転フリップと4回転トーループ、4回転トーループ+2回転の連続ジャンプを、いずれも1点以上のGOE加点がつく完成度の高さで跳んだ。演技も滑るごとに一皮も二皮もむけて、成熟度が増してきているようだ。

「昨季とは違い、今季は練習通りの動きが試合で出るようになりました。自分の実力を出し切って、初めてシニアで1位になれたことは久々で嬉しかったです。昨季の経験だったり、悔しい思いだったり、1年前のすべてがいまの自分に繋がっていると感じています。自分の実力を100%出し切れば優勝争いができると思っていましたし、自分の実力を出し切って優勝できたので、あらためて昨季からの成長を実感しましたし、昨季の失敗が無駄ではなかったと思いました」

 今大会で宇野は、SPとフリーでそれぞれ転倒を1回ずつしているが、いずれも4回転ではなかった。計5本跳んだ4回転だけをみればすべて成功させており、出場10人中ただ1人、予定していた大技を成功につなげた。

 フリーでは技術点で100点台をコンスタントに出せるようになり、演技構成点においてもSPでは演技派のジェイソン・ブラウン(アメリカ)に次ぐ2番目。フリーではそのブラウンを抑えてトップの91.08点をマークした。フリーでは終盤の3連続ジャンプの1つ目となるトリプルアクセルで転倒するミスがあり、史上4人目となる200点超えはお預けとなったが、200点台に迫る勢いであることは間違いないだろう。

「フリーはとりあえず必死で、緊張を楽しむと思っていたんですけど、それどころでもなくなって、どれだけ体力消耗しても、初めから120%の力を出し切ろうという状態でスタートした。(踊り切れたのは)シーズンオフの体力づくりがあったからこそできたと思います。また、今大会に向けて取り組んできたステップからの4回転トーループが2本とも決まるとは思わなかったので、それだけに最後の失敗は悔しかったです」

 試合後は、この失敗を何度も口にして悔やんでいたが、この悔しさが次の成長につながるはずだ。次戦のロシア杯がますます楽しみになってきた。

 シニア2年目で優勝を争う位置に一気に成長を遂げた宇野に対し、今大会の優勝候補に挙げられていたライバルの"4回転ジャンパー"金博洋(中国)は、得意の4回転ルッツを含めた4回転ジャンプが絶不調。SPとフリーで計6本の4回転を跳ぶ予定の中、3本も転倒する失敗を犯した。

 特に失敗が許されないSPで4回転を2本とも成功させられなかったことは勝負においては痛恨のミス。8位と出遅れたことが表彰台を逃す大きな原因となった。フリーでは圧巻のジャンプ構成を披露したが、4回転トーループで転倒したほかにジャンプミスでの減点も響いて4位にとどまり、総合5位に終わった。

 一方、総合2位のブラウンは、SPとフリーで各1本の4回転トーループに挑み、フリーではアンダーローテーションながら初めて成功。試合後はその興奮が冷めやらない様子で顔を紅潮させていたのが印象的だった。

 また総合3位のアダム・リッポン(アメリカ)は、2位につけたSPでは4回転を跳ばず、フリーでは4回転トーループに挑戦したが、転倒に終わった。2人とも4回転をきちんとは跳ばなかったにもかかわらず、表現力に長けており、演技構成点で勝負ができたからこそ、表彰台に立てたと言っていい。

 このことからみても、4回転を必要以上に入れても、それだけ失敗のリスクが高まるだけで、必ずしも勝てるとは限らないということが分かる。成功と失敗が紙一重の4回転を自分でどれだけコントロールできるか。演技とのバランスを考えて何本がベストなのか。それをしっかり見極めることがメダル争いをする上で必要不可欠になってきそうだ。

 その意味でも、宇野が見せたプログラムとジャンプ構成はベストな戦い方だったと言えるだろう。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha