電通本社(ロイター/アフロ)

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 広告代理店最大手、電通の新入社員だった高橋まつりさん(当時24歳)が過労により自殺に追い込まれた問題を受け、14日には東京労働局が従業員の労働実態を調べるため、同社への立ち入り調査を行った。

 これを受け電通は、24日から東京・港区にある本社ビルにおいて午後10時に社内全館一斉消灯を開始した。しかし、25日付ニュースサイト「netgeek」記事などによれば、全館一斉消灯を開始以降、朝5時から電通館内に多数照明がついているとされ、夜の一斉消灯のあおりで一部社員が朝5時から早朝残業を強いられている可能性が指摘されている。

 電通のように、ある時刻以降の残業を原則として一律禁止する企業はここ数年増えているが、従業員にとってはかえって負担が増えるケースもあるようだ。

メーカー勤務の30代男性は語る。

「私も残業をすることがありますが、その理由は、突発的にお客さんから急ぎの依頼を受けたり、大量の社内会議用資料を作成しなければならなかったりして、規定の勤務時間内では終わらない量の仕事を抱えることがあるからです。そこで単に『早く帰れ』と言われても、社員にとってデメリットのほうが大きくなってしまう懸念があります。実際に私の会社でも夜9時以降の残業が禁止になったことで、仕事を自宅に持ち帰ってやったり、休日出勤が増えてしまう羽目になり、かえって家族に迷惑を掛ける結果になっています。社員の残業時間を減らしたいなら、根本的に会社が与える仕事量の見直しが先ではないでしょうか」

 また、金融機関勤務の20代男性会社員はいう。

「特に私たち若手社員は、上司から指示される細かい雑用的な仕事も多く、どうしても業務量が多くなりがちです。ずっと社員に残業させておいて、いきなり労働時間だけ短くされても、直前まで抱えていた仕事の調整はできません。強制的に帰らされることで仕事が終わらなければ、取引先にも迷惑が掛かり、トラブルに発展しかねません。電通も、もし一斉退社を強制することで社員が朝5時出勤を強いられているのだとすれば、本末転倒であり、本質的には何も変わっていないと思います」

●電通社員から不満の声も

 では、今回の施策について、電通社員はどう思っているのであろうか。30代社員は語る。

「一連の問題を受け、会社は労使協定で月70時間としていた所定外労働時間の上限を65時間へ引き下げる方針を表明していますが、現時点で大多数の社員が残業時間を過少申告している現状のなかで、形式的に残業時間の上限を5時間下げたとしても、なんの意味もありません。一方で40代以上の社員のなかには、残業代を稼ぐために無駄に遅くまで会社に残っている人も多い。この際、固定給を上げるかわりに『何時間残業したら残業代いくら』という制度を廃止して、いっそのこと完全能力給にしてしまうくらいのドラスティックな改革をしたほうが、社員はハッピーな働き方をできるのではないでしょうか。

 また、そもそもやらなければならない仕事が大量にあるから残業を強いられているのであって、そこで『夜10時に帰れ』といわれても、クライアントありきの仕事なので、残っている仕事はこっそり自宅に持ち帰ったり休日を使ったりして、片付けなければなりません。これでは、かえって面倒なだけで、本当に迷惑です。本質的な問題を放置したままで体裁だけ繕った小手先の対応を続けていれば、社員の苦労が増すばかりですよ」

 このように社員からも不満の声が上がる電通の対応だが、夜10時一斉退社を受け、朝5時から早朝残業を強いられる社員が発生しているというのは事実なのであろうか。電通は当サイトの取材に対し、次のように回答した。

「早朝から外部業者に清掃を行っていただいていることによるものです」

 いずれにせよ、一連の電通の問題は、他の日本企業にとっても他人事ではないだろう。
(文=編集部)