第29回東京国際映画祭「歌舞伎座スペシャルナイト」のスペシャルゲスト・古舘伊知郎

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第29回東京国際映画祭クラシックス部門の目玉企画「歌舞伎座スペシャルナイト」が10月27日に歌舞伎座にて開催。今年で3年目となる「歌舞伎座スペシャルナイト」は、日本伝統文化の魅力を映画を通じて世界に発信していくイベントだ。今回は、映画とも歌舞伎とも一見縁遠い古舘伊知郎がスペシャルゲストとして登場!“現代版弁士”として、サイレント映画の活弁に挑戦した。

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古舘が活弁を行ったのは、江戸時代の赤穂事件を描いた『忠臣蔵』(1926)のスピンオフ作ともいえる『血煙高田の馬場』(1928)。藩主の仇討ちを果たし切腹した赤穂浪士たちの中でも、特に腕っぷしの強い安兵衛が主人公の物語だ。

弁士付きの上映は、通常、サイレント映画に独自の語りと演奏を付けるのが常だが、この日は古舘の語りのみ。安兵衛がケンカを仲裁するため激走するシーンでは、「早過ぎる!ドーピングでもやっているのか?医療大麻でもやっているのか?」と時事ネタに絡めた辛辣なツッコミが飛び出した。

そのほか流れる映像をスタッフに一時停止させるなど、随所に“古舘節”が加えられ、オリジナリティ満載の活弁を披露。昭和初期の無声映画を鮮やかな喋りで現代的に蘇らせ、会場は笑いと拍手で包まれた。

またトークセッションでは、『忠臣蔵』について独自の見解を力説。「赤穂浪士たちは、本当に藩主への忠誠心から仇討ちを行ったのか?」と提起した上で、映画の内容とは異なる、赤穂事件にまつわる歴史諸説を披露。「映画はファンタジーがなければ面白くない。そして、史実を知ったうえで見るとフィクションが映える」と、時代劇の面白さを説いた。

「『報道ステーション』ではコケラ落としのニュースを何度も紹介していたが、リニューアルしてから訪れたのは今日が初」と明かしていた古舘。歌舞伎座という大きな舞台でたった一人スポットライトを浴び、約45分間をノンストップで喋り倒す圧巻のパフォーマンスを見せていた。

この日はほかに、弁士・片岡一郎の活弁と生演奏が付いた『忠臣蔵』デジタル最長版の上映と、歌舞伎俳優・尾上菊之助による舞踊「鷺娘」を上演。

尾上は「歌舞伎の女形の美がギュッと詰まった演目でございます。“引抜(ひきぬき)”や“ぶっ返り”といった、歌舞伎の特徴でもある衣装の早変わりもありますので、初めてご覧になる外国人のお客様には楽しんでもらえるのでは」と見どころを解説。映画祭ならではの国際色豊かな観客を前に、歌舞伎の魅力をアピールしていた。【取材・文/トライワークス】