亡きキアロスタミ監督に思いを馳せた

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 今年7月4日に76歳で他界したイランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督を追った追悼ドキュメンタリー「キアロスタミとの76分と15秒」が10月27日、第29回東京国際映画祭のワールド・フォーカス部門で上映され、撮影・編集・プロデュースを兼ねたセイフラー・サマディアン監督が、TOHOシネマズ六本木ヒルズでのティーチインに臨んだ。

 第50回カンヌ映画祭パルムドール受賞作「桜桃の味」など、数々の傑作を生み出してきたキアロスタミ監督。多くの時間をともに過ごしたサマディアン監督は、「今回が3度目の来日ですが、キアロスタミ監督が亡くなったことをきっかけにした作品で、日本を訪れたことが残念でならない」と故人を偲んだ。

 黒澤明監督、小津安二郎監督の名前を挙げ、「キアロスタミ監督と黒澤さん、小津さんは“家族”だったんじゃないかと思う。さらに言えば、キアロスタミ監督と小津さんは“双子”。同じ目線で世界を捉えていた」と語る。今作の撮影期間を問われると、「監督と一緒に過ごした25年間の映像で構成した。ただ映るだけで力強い存在だから、インタビュー映像は一切なし。タイトルの“76分と15秒”というのは、キアロスタミ監督が生き抜いた“76年と15日”からつけたものです」と明かした。

 サマディアン監督は、「キアロスタミ監督が亡くなった後、約1カ月は監督が映った映像も見れず、墓に訪れることができなかった。監督の長男からの依頼があり、どうにか映画を完成することができた」と述懐。また、ともに登壇した通訳者のショーレ・ゴルパリアンさんを観客に紹介した。長年キアロスタミ監督のアシスタントとして活躍したことに対して敬意を示し、「ショーレに拍手を!」。会場は大きな拍手で包まれた。

 「キアロスタミとの76分と15秒」は、撮影や打ち合わせの光景を含めたキアロスタミ監督の素顔や日常を詩的に捉えたドキュメンタリー。また、この日はキアロスタミ監督による最後の短編「Take Me Home」が併映された。南イタリアが舞台で、キアロスタミ監督のカメラが、路地や階段など街の佇まいを独特の映像美で描出していく。

 第29回東京国際映画祭は、11月3日まで東京・六本木ヒルズほかで開催。