U-19代表を率い5大会ぶりにU-20W杯へ導いた内山監督。コーチとして参加した前回大会の経験を踏まえた強化が実を結んだ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 東京五輪世代で構成されるU-19日本代表が、過去4大会連続で世界大会出場を阻まれてきた負の歴史にようやく終止符を打った。

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 これで来年はU-17に続き、U-20年代もワールドカップを戦うことになる。同年代のトップレベルと真剣勝負を演じることが、4年後の東京五輪、その先のA代表チームの強化に向けて貴重な財産になるのは間違いない。
 
 もちろん今大会での経験も活きてくるはずで、内山篤監督は「この舞台で勝っていかない限り経験は得られないので、それを積んだことは今後の東京五輪に必ずつながってくる」と力を込める。また「キャリアにおいても、アジアの1位を取ればデカい」(神谷優太)というように、いまだ成し遂げていない優勝を勝ち取ればその価値はより高まるだろう。
 
 ここまでの戦いを振り返るうえでひとつ注目したいのが、内山監督の強化策だ。タジキスタン戦後に、内山監督はこうコメントしている。
 
「前回大会でコーチとして鈴木(政一)監督の下で一緒にこの大会を戦い、準々決勝のタイミングで敗れたこと。そこで得たものと、そこから継続してどうしたら準々決勝を越えられるか。私自身にその経験があり、日本協会がチャンスを与えてくれたことが大きかったと思います」
 
 つまり、2年前のミャンマー大会でコーチを務めていた内山監督には前回大会の経験値があったのだ。“なぜ準々決勝で敗れたのか”を肌身で感じ取り、そこから逆算してチームを強化する方針を打ち出したのである。
 
 では、前回大会のチームにはどこに一番の問題があったのか。今大会のメンバー発表の席で、こう指摘していた。
 
「所属チームでポジションを勝ち取っていければいいんですけどそれは難しい。前回大会もゲームフィーリングが高くなく苦労してしまった」
 
 この年代において、試合勘が不足してしまうのは長年の課題でもある。もちろん、なかにはチャンスをモノにして出場機会を掴んでいる選手もいるが、プロ1、2年目の選手たちがトップチームでレギュラーに君臨するのはなかなか難しく、総合的に見ると試合勘にばらつきが出てしまう。
 
 今大会のメンバーを見ても、中山雄太(柏)や冨安健洋(福岡)、三好康児(川崎)らのようにJ1で出場時間を伸ばす者や、J1で出場できなくても、堂安律、市丸瑞希(ともにG大阪)のようにJ3で実戦感覚を磨ける者は確かにいる。その一方で、小川航基(磐田)の場合は、ベンチ入りがやっとの状況に置かれているのも事実だ。
 
 もっとも、内山監督にとってそうした状況が起こるのは想定済みだった。「90分久しく戦っていない状況で大会に入るのは厳しい」(内山監督)という過去の教訓を活かし、6月以降はアメリカやフランス、UAE遠征を決行。積極的に実戦機会を設けることで、重要な候補選手に試合勘を失わせないように努めたのだ。
 代表活動において試合勘を養わせてきた効果は、ピッチに立つ選手たちも実感している。今季、神戸のトップチームに昇格したものの出場機会のないDF藤谷壮は「自分自身、90分プレーできる機会がなかったので、(90分やれたのは)自信になりました」と話す。
 
 藤谷は、グループリーグ1、2戦目をベンチで過ごしたが、「コンディションがだいぶ良くなってきた」(内山監督)3戦目のカタール戦で起用されると、スピード豊かな突破を活かし攻撃を活性。「緊張した」と内心を明かしながらも、すんなりと試合に溶け込めたのは事前に90分戦えるイメージを持っていたことも多分にあったはずだ。
 
 前回大会を経て「課題を克服すればいける」との確信を、内山監督自身が持っていたからこその結果。5大会ぶりに世界大会への道を切り拓いた要因は、まさにそこにあるのだと思う。
 
 試合勘を養わせたうえで、指揮官は「自分たちのサッカーができれば必ず勝てる」という信念も選手たちに植え付けた。
 
 全体をコンパクトに保ちながら攻守にアグレッシブに戦うことをベースに、判断やプレーの精度を突き詰める。昨年の立ち上げ当初から一貫して求めてきた戦いを90分間やり続けられれば優位に戦えると、そう信じ込ませた結果、チームは厳しい環境下でも結果を残し、確実に成長を遂げつつある。
 
「(カタール戦の出来は)70点と言ったと思います。でももっと上へ行けますね」
 
 そう自信たっぷりに語った内山監督は、チームをいまだ見ぬ頂点へと導く覚悟だ。
 
 
取材・文:橋本 啓(サッカーダイジェスト編集部)