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NHKは10月26日、『クローズアップ現代+』で「"老化"を止めたい女性たち〜広がる卵子凍結の衝撃〜」と題した特集を放送。卵子凍結の実態や出産例などについて明らかにした。放送内容を見て、不妊治療の専門医は何を思うのか。

人工授精・体外受精などのほか、卵子・卵巣凍結も実施している京野アートクリニック(仙台・高輪)理事長・京野廣一 医学博士に話を聞いた。

○駆け込み寺としての卵子凍結は必要

同番組では、NHKが医療機関を対象に行った独自調査により、多くの健康な女性が卵子凍結を行っているほか、実際に出産例も複数あることが明らかにされている。また一方で、卵子凍結によってかかる、女性の体や金額面での負担、なお出産まで至ることの難しさについても言及されていた。

まず京野氏は「大前提として、妊娠出産はできるだけ、25〜35歳のうちにというのが理想です」とコメントした。妊娠する確率が高く、安全な出産が可能という理由からだ。その後の育児にも余裕がうまれ、3世代が潤滑にまわる。「小学生から20歳台の女性に加齢と妊娠についての啓発が不可欠」と訴えている。

一方で、女性の社会進出により、晩婚化が進んでいる社会背景をかんがみれば、一概に卵子凍結を否定することはできないとしている。「パートナーのいない40歳間近の女性にとっては、卵子凍結も選択肢の1つになりうる。日本だけでなく、他の先進国においても同様です」と京野氏。この年代で卵子凍結を希望する女性に対しては、治療についてのメリット・デメリットなど正しい情報を提供した上で自ら選択する場合には、支援するという。

同クリニックではこれまで、医学的適応で300名、社会的適応で150名以上の卵子凍結を実施。医学的適応では60名以上の子どもが実際にうまれていて、社会的適応のケースでも、2名が妊娠継続中とのことだ。融解した凍結卵子あたりの妊娠率は良好。また今のところ、子どもへの影響は確認されていないという。

○もっと女性の意見が反映されるべき

確かに凍結卵子の利用率は、現状では比較的低いと言えるだろう。しかし京野氏は、「一部の女性においては、卵子凍結保存を行っていなければ、妊娠の可能性はなかったとも言える訳です」と主張する。

「卵子凍結治療の是非は、女性の意思を反映させたものであるべきと思います。具体的には、身体的・経済的な負担、利用率の低さや高齢出産に関するリスクなどの否定的側面に加え、治療効率やメリットなどの情報が女性に正しく理解され、選択されることが望ましいのではないでしょうか」。

同時に、女性のキャリアを途絶えさせない社会作りも大切だと指摘した。

日本産婦人科学会では、若い健康な女性が将来の妊娠・出産に備えた卵子を凍結保存することについて、妊娠の高齢化につながることを懸念し、「推奨しない」とする見解をまとめている。一方で多くの女性は、将来の妊娠・出産を思い、いわば駆け込み寺として卵子凍結に望みを託している。この現状を、医療界はどのように受け止めるべきなのだろうか。

※写真と本文は関係ありません

(今中なぎさ)