「静脈産業」パイオニア、会宝産業の挑戦

写真拡大

前回紹介したBoPビジネス3.0は、世界においても事例数が限られており、これからその増加が望まれるビジネスモデルである。

しかし、すでに日本企業でもその萌芽事例ともいえるビジネスを展開している企業がある。そのうちの一社が、金沢に本社を構える会宝産業だ。

会宝産業は、日本を代表する自動車リサイクル企業。テレビ東京のカンブリア宮殿で、インタビュアーの村上龍氏が「会宝産業こそ真のグローバル企業」と称したように、その活動は国内に留まらず、海外に広く展開されている。

ものを製造する「動脈産業」の対義語として、作ったものを循環させることを「静脈産業」という。会宝産業はその静脈産業のパイオニアとして、使用済自動車を正しく解体し、資源として活用することに取り組んでいる。

日本において中古車、廃車を高額で買取り、それをリサイクルする際に中古部品を取り出し、その中古部品を輸出する--。海外に自動車リサイクルネットワークを構築することで世界74か国への販売を実現しており、売上に占める輸出の割合は75%を超えている。

会宝産業の自動車リサイクル事業は、廃棄物処理という観点から世界で共通して必要とされる環境ビジネスである。今回はそれをBoPビジネスの視点で紐解いていく。

リサイクルビジネスは近頃、循環型経済のいちカテゴリーとして再び注目を浴びている。アクセンチュアの推計によれば、2030年までに世界の中古品に関する市場は約108兆円、リサイクルに関連する市場は約156兆円にもなるとされている。

こうした成長市場において、会宝産業は、自動車の廃車解体を通じて素材のリサイクル・中古部品の輸出を行う。中古部品の販売先には、最終的にBoP層の修理業者等が含まれるため、BoP1.0のビジネスとして捉えることができる。

また会宝産業はここに留まることなく、リサイクルの仕組みやそれを成り立たせている法制度までをナイジェリアやブラジルに輸出している。それが、現地のインフォーマルセクターで廃車から中古部品を違法に回収・販売しているBoP層を育成していくことにもなり、その市場拡大・共創の活動はBoP2.0のビジネスとして捉えることができる。

【BoP2.0としての会宝産業のビジネスモデル】
aa

さらにBoP3.0として、こうした市場に他社が積極的に参入できるようなプラットフォームを創造している。まず、誰もが中古部品の品質を把握できるようにする「JRS(Japan Reuse Standard)」という仕組みを構築した上で、誰もが参加可能な「中古部品オークション」を設立している。

「JRS」とは会宝産業独自の品質表示規格で、例えばエンジンであれば内部のオイル汚れや年式、始動状態などを5段階で評価し、タグをつけて表示をしている。これにより、目利きがなくても中古部品の品質が分かるため、経験値や交渉力が無いバイヤーや最終顧客が品質の悪い部品を高く買わされるといった状況を防げるのだ。

「中古部品オークション」とは、数千の中古部品業者が集まる世界最大の物流拠点、UAE・シャルジャに設立されたオンライン入札の部品オークションのこと。従来、自動車部品は品質による価格差がつきにくい状況であったが、オークションで「JRS」の評価を基準に入札が行われることで、高品質なエンジンには高値が付くなど取引の透明性が改善されている。
 
こうして中古部品の調達、販売の双方において誰もが参加できる仕組みを構築するとともに、品質表示規格を導入することで、会宝産業は市場自体を拡大させ、透明性、安全性の改善を行っているのである。

さらに、こうした市場に日本の中小企業が参入する障壁を下げるために、国内の競合他社をアライアンス先企業と捉え、バイヤーの紹介やコンテナ積込管理、貿易書類作成、資金回収などの業務を代行する商社機能を備えることでネットワークの強化に努めている。

【BoP3.0としての会宝産業のビジネスモデル】

BoP3.0においては、会宝産業を中心として多様なステークホルダーが参画するようになったことがわかる

もちろん、販売代行をする場合には個別バイヤーとの取引だけではなく、先述した中古部品オークションを通じた販売も行われる。これらの取組を核としたネットワークの構築により、国内の車輛調達基盤を拡大し、海外需要の高まりに対応できる体制を整え、結果として中小企業一社では難しい途上国の急成長にあわせた継続的な成長を実現している

会宝産業は、こうしたプラットフォームの創造・活用により、透明性の低い市場における透明性の向上を実現し、中古部品の利用者である新興国・途上国のMoP層、BoP層、バイヤー、日本の中小企業等の全てのステークホルダーが安心して中古部品市場に関われるようになる仕組みを作り、それを自社の継続的な成長につなげていっているのである。

次回も、BoP3.0ビジネスの事例を紹介する。