消えないアップルのM&A観測、ネットフリックス買収はあるか

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ただ単に手元にお金があるからといって、それを使ってしまうというのは危険な戦略だ。利益を積み上げている企業が、多額の手元資金があるというだけの理由で他社を買収し、それで利益を得た投資家はもう何年も前からほとんどいない。

だが、アップルが次の四半期(10-12月期)に業績回復を実現した場合、巨額に上る手元資金をどう使うのかに関する議論が高まる中、同社のティム・クック最高経営責任者(CEO)がそうした考えに陥ってしまうことは、あるかもしれない。

アップルは10月25日、2016年第4四半期(7-9月期)の決算を発表。手元資金が2,376億ドル(約24兆8,400億円、短期保有の有価証券を含む)に上っていることを明らかにした。恐らくどんな企業でも傘下に収められるほどの金額だ。

アップルのエコシステムにおけるコンテンツの重要性や、今月22日に米通信大手AT&Tが850億ドルでHBOの親会社、タイム・ワーナーを買収することで合意したと発表したことを考えれば、アップルがコンテンツ企業の買収に乗り出すのではないかとの観測が出始めても不思議はない。

各社アナリストの見方は

ゴールドマン・サックスのアナリストは、決算発表時にクックCEOが述べた次の言葉の真意を読み取ろうとしている。

「わが社がより良い製品を顧客に提供し、より革新的になるための戦略的価値があれば、規模にかかわらず買収を行う可能性はある」

CEOのこの発言は、「コンテンツ事業と合併・買収(M&A)への意欲の高まりをうかがわせる」サインだとみているのだ。

モルガン・スタンレーのアナリストもまた、これと同じ考えだ。「アップルはコンテンツ事業のてこ入れ、あるいは再構築につながる買収に意欲的だとみている」という。

一方、J.P.モルガンのアナリストは、買収の可能性はそれほど高くはないとの見方だ。

「アップルは依然、(メディアに)強い関心を持っていることを明らかにしている。だが、数は少なくとも独自コンテンツによって規模を拡大していくことが可能なアプリストア(App Store)に流通チャネルを絞る戦略に舵を切る可能性もある」

アップルが過去に行った買収のうち、最大規模となったのは約30億ドルを費やしたヘッドフォン・メーカー「ビーツ(beats)」の買収だ。だが、数年前からしばしば話題に上り、数百億ドル規模になるとされる動画配信大手ネットフリックスなどの買収に比べれば、色あせてしまう規模だろう。ネットフリックスの時価総額は、530億ドルを超えている。

投資家のいら立ちは解消される?

投資家たちがいら立ちを募らせているのは、アップルがその豊富な手元資金を成長のためのイニシアチブに転換できずにいることだ。

大規模なコンテンツ事業の買収観測を支えている要因の一つは、アップルのサービス事業が成長を加速させていることだ。第4四半期の売上高は前年比24%増を記録。その他の部門に比べても、好調ぶりが際立つ。だが、金額にすれば63億ドルと、iPhoneの売上高282億ドルに比べればわずかな額にとどまっている。

ただ、ネットフリックスのような企業を買収すれば、サービス事業の売上高には容易に、数十億ドルが上乗せされるだろう。しかし、その事業が成長軌道に乗るまでには、何年もかかる可能性がある。

アップルが来年第1四半期に増益に転じることができれば、大規模な買収への支持はさらに強まるだろう。観測筋には、増益は次の四半期にも実現されるとの見方がある。米証券会社レイモンド・ジェームズのテイビス・マコートは、「われわれは、アップルの売上高と一株当たり利益は今後増えるとの確信を強めている」と述べており、同社の収益は今後、大幅に増加するとみている。