役所、ベンチャー、オーナー系……商談相手別「ウケるツボ」

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この商品の導入で○○円のコスト削減効果があります── 一見、どの企業にもウケそうな文句。「役所では嫌がられる可能性が高いですね」。コピー機販売のトップ営業マンとして、様々な企業、団体との商談を行ってきたAMマイスター代表 渡辺茂一郎氏は言う。相手別の攻略法を聞いた。

■改革派首長率いる役所には実績より斬新さを

いわゆる「勝つ提案書」には、共通点がいくつかあります。まず重要なのは、表紙。何を提案したいのか、その結果どのような効果がもたらされるのか、一目でわかる表紙であることが第一条件です。抽象的なタイトルでは目に留まりません。具体的で、かつ相手企業が大事にしているキーワードを盛り込みましょう。

中身では、「成果」「達成」という言葉を多く使うといいでしょう。もちろん表紙に使っても構いません。私たちの提案は、あなたがたのビジネスの成果や「事業課題・目標の達成」につながるということを、具体的に伝えましょう。

では、商談相手別に考えてみましょう。まずはお役所です。役所が大事にしているのは何よりも実績。「◯◯市で導入済」「これまでに○件の実績がある」「過去にも同じような仕事をいくつも受注し、お客さまから好評を得た」といった数字や事実を、積極的に盛り込みましょう。

また、役所にはその時々で掲げているスローガンがあります。いまでいえば、「女性活用」や「ダイバーシティ」などでしょうか。スローガンを探して、資料の中にちりばめるといいでしょう。

NGなのは、「効率化することで部署の人数が少なくなります」といった言葉。役所は現状維持を求める傾向が強いので、人や予算を減らされることを嫌がります。実際はこちらの提案が実現すると、仕事の効率が上がって結果として部署の人数が減るということはありうるのですが、口にしないほうがいいでしょう。

ただし例外もあって、改革派と言われるような若い首長を戴く役所だと、民間から企画スタッフが入ってきていることがあります。この人たちは、実績よりも提案の目新しさやユニークさに着目する傾向があるので、そのときはまったく逆の対応になります。

オーナー系企業はどうでしょうか。この場合、オーナーがすべての決定権を握っているので、そこに向けたアプローチが大切です。資料にキーワードを盛り込むのはほかと同様ですが、自社製品をアピールするよりも、発言を引用するなど、オーナーが目指すことにどう貢献できるのか訴求しましょう。

■オーナーには参考記事のコピー+一筆箋で

手紙を出すのも有効です。特に変わったことを書く必要はありません。「オーナーが目指しているのはこういうことだと理解しています。そのために私たちはこういった分野で貢献できると思っています。お手伝いさせていただけないでしょうか」といった、オーナーの考えに寄り添ったものであればOKです。手書きならより気持ちを伝えられるでしょう。

手紙を書くのはハードルが高い、と感じるのならば、その会社のビジネスに役立つと思われる記事のコピーなどを持参して、一筆箋で一言添えるだけでもいい。「少しでも御社のお役に立てればと思い、僭越ながら記事のコピーをお持ちしました」と書くだけです。私も、同じ企業にこういったことを5、6回ほど続けていたら、いきなり役員クラスが面談してくれた経験が何度もあります。

ベンチャー企業では、オーナー系企業とは正反対で、現場にいる肩書のない若手社員が決定権を持っていて、その場で即決されることもよくあります。オーナー系企業はオーナーを狙い撃ちしますが、ベンチャーは現場の担当者を社長だと思って話をするくらいでいい。提案の成果について具体的な数字を交えた資料を用意すれば、その場で意思決定をしやすいでしょう。

■「御社のことを調べました」はご法度

次に、商談のシチュエーションごとに考えてみましょう。最初のアポの際は、相手のことをできる限り知っておくことが大事です。たとえば、「御社のHPで拝見しましたが、新規事業にずいぶんと力を入れておられるのですね」などと言っただけで、関心を持ってもらえます。ここで注意したいのは「調べました」という言葉。そう言われると、あまりいい気分にはならないものです。「勉強させていただきました」といった言い方をするといいでしょう。

また、自社の独自性もこのタイミングで訴求したいものです。自社の特徴を事実・データや物語で裏づけると、お客さまの心に刻まれます。

お客さまと関係性ができてきたら、もう少し詳しい話を知りたくなってきます。その際の質問ですが、私はよく「そうお考えになった背景は何でしょうか」という聞き方をします。背景を聞くと、相手企業が目指すことや目的など、深い話を知ることができます。

本格的な商談が始まって、相手の感触を確かめたいときは、「何か気になることはございませんか」と聞きましょう。相手が言いにくいなと思っていることを話しやすくさせるためです。

私は商談の際、「あいうえお」を大切にしています。“あ”は相槌、アイコンタクト、アスク(問いかけ)、“い”は一生懸命、“う”はうなずく、“え”は笑顔、“お”はオウム返し、終わりまで聴く。相手の話をしっかり聴くために必要な心がけです。

ここまで商談相手に響く言葉の使い方を説明しましたが、相手の話をきちんと聴くということは、ある意味でそれ以上に大切なこと。お客さまに「こいつから買いたいな」と思ってもらうためには、論理も大事ですが、感情も左右します。そのために、話をする際は自分が3で相手が7、最低でも五分五分になるよう、心がけましょう。

■相手別「OKワード、NGワード」

※渡辺氏の話などをもとに編集部作成

▼役所
【OK】これまでに数々の実績があります!
【NG】業務の効率化で人件費を削減できます

▼ベンチャー
【OK】製品の導入で○○円の効果があります
【NG】うちに任せてください!

▼オーナー系
【OK】私に御社のお手伝いをさせてください!
【NG】競合他社と比べて当社は……

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AMマイスター代表 渡辺茂一郎
1955年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、富士ゼロックス入社。コピー機販売の営業マンとして全国トップに。2009年に退社し、11年に同社設立。そのほかNPOワクワク営業応援団理事長を務める。著書に『落ちこぼれ営業マンが見つけた「勝利の法則」』など。

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(AMマイスター代表 渡辺茂一郎 構成=衣谷 康 写真=PIXTA)