タジキスタン戦で岩崎がチーム4点目を決めたシーン。ゴールとは反対方向にトラップしたものの柔軟な身体を活かして強烈なシュートを叩き込んだ。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

写真拡大 (全2枚)

 世界への切符が懸かった大一番。余裕の勝利で出場権を掴んだとはいえ、その締めを飾ったゴールは、まさに圧巻の一撃だった。
 
 U-19アジア選手権・準々決勝のタジキスタン戦。3-0で迎えた88分、中盤でボールを持った日本は、中央でパスを受けたMF坂井大将が前に持ち出すと、右からダイアゴナルランでペナルティエリア内のスペースに走り込んだFW岩崎悠人の足もとにグラウンダーのパスを通す。対応したDFと競り合う形で岩崎が右足でボールをトラップすると、ボールはやや後方にズレてしまった。次の瞬間、スピードに乗っていた岩崎は急停止をして、軸足となる右足をバックステップした状態から腰をひねらせて左足一閃。そのまま尻もちを付いたが、鋭い弾道が左サイドネットに一直線。ゴールに突き刺さった。
 
 ただ、このシーンを見ただけでは、トップスピードに乗った状態でのトラップミスを急停止から上手くリカバーして、強引に左足でねじ込んだゴールだと感じるかもしれない。
 
 もちろんこの一連の流れには、彼のずば抜けた身体能力の高さが凝縮されていたが、実はこのプレーは『直前で判断を変えた頭脳的なプレー』だったのだ。
 
 再びゴールシーンを振り返る。タジキスタンCBの脇に出来たスペースに岩崎がスピードに乗って走り込む。その足もとに、坂井からのパスが届く。ここまでは想定通りだった。しかし、次の瞬間に想定外のことが起こった。
 
「最初は前にトラップして、そのまま抜け出そうと思ったのですが、背後から相手が縦のコースを閉めて来たので、トラップを内側に置いたんです」
 
 岩崎がトラップをしようとした瞬間、タジキスタンのボランチが猛スピードで戻り、岩崎の死角から現われて縦のコースを切ったのだ。
 
 後ろにズレたと思われたトラップは、一切ボールコントロールのミスなどではなかった。相手の動きに気付いたことで、意識的にボールを奪われない遠目の位置に止めた。つまり、明確な判断に基づいた『超絶トラップ』だったのだ。
 
 そして、「あそこからのシュートは持ち味ですね。身体が柔らかいので、それは親に感謝です」と笑顔を見せたように、驚異的なボディバランスを持つ岩崎にとって、あの場所は難なくシュートを打てるボールの置き所でもあったというわけだ。
 
 自分の特徴、身体の稼働域を理解するとともに、変化する状況を瞬時に捉えて判断し、自分の得意な形に持ち込んでシュートを決める。これがどれだけ高度なことなのかは想像に難くないだろう。
 
 これで今大会4試合に出場し、3得点。同じくFWの小川航基と並んでチーム得点王だ。つい先日までJリーグのスカウト陣が、この高校ナンバーワンFWを巡り「我こそは」と争奪戦を繰り広げていたのも頷ける活躍ぶりを見せている。
 
「僕の役割は走ること。走りながら、なんとかして結果を残したいと考えています。たとえ相手がリトリートをしてきても、必ず裏にはスペースがあるので、どんどん背後に抜ける動きをやり続ける。それが僕の持ち味だと思っています」
 
 屈託のない笑顔の裏には、驚異的な能力と冷静さが秘められている。その能力に甘えることなく、自覚と責任感を持って自らの役割をやり続けられるからこそ、そのポテンシャルを結果にも結びつけられる。
 
 小川と並んで二大エースと称されるようになった岩崎悠人。準決勝以降も、この年代初のU-19アジア選手権制覇に向けて、彼は走り続ける。驚異的なフィジカルと冷静な頭脳という武器を携えながら――。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)