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By cea +

インターネットで最も巨大なフリー百科事典「Wikipedia」は、誰もが自由に内容を編集できるというインターネットならではのメリットを活かしたコンテンツですが、それがゆえに編集者による意図が多少なりとも反映されてしまうという事実から逃れることができません。しかし、ハーバード大学の研究チームによる研究から、かつては確かに政治的に偏りがみられたWikipediaの記事内容が、年数を経るにつれて徐々に中立なものへと変化しているという事実がわかっています。

Wikipedia is fixing one of the Internet’s biggest flaws - The Washington Post

https://www.washingtonpost.com/news/wonk/wp/2016/10/25/somethings-terribly-wrong-with-the-internet-and-wikipedia-might-be-able-to-fix-it/

この研究を行ったのは、ハーバード・ビジネス・スクールのShane Greenstein教授およびFeng Zhu教授らによる研究チームです。同チームでは、英語版Wikipediaのページを過去15年にさかのぼって分析して、政治的に右寄りなキーワードと左寄りなキーワードの出現回数の統計をとり、それぞれの時代における傾向を調査しました。

その結果、過去には左寄りにバイアスがみられた記事内容でしたが、時を経るにつれて右へ寄ったり左へ戻ったりしながら、最終的には中立な位置へと落ち着く傾向が見られたとのことです。この中立性の高さは、世界でも最も評価が高い百科事典の1つ、ブリタニカ百科事典にも相当するレベルになっているとのこと。



By Sarah & Renuka Photography

研究チームは、議会での発言を保守的か革新的かに分類する手法を応用して、Wikipediaのページに含まれる単語から政治的なバイアスを測定するという手法を取り入れたとのこと。例えば、「illegal aliens (違法移民)」や「death tax (相続税)」、「border security (国境警備)」といった単語は保守勢力であるアメリカ共和党寄りで、「poor people (貧困層)」「tax breaks (減税)」、「change the rules (法・ルール改正)」といった単語はリベラルなアメリカ民主党寄りであると判断されます。

以下のグラフはそんな分析の一例です。「アフガニスタン」というアメリカではセンシティブに扱われそうな単語について、2006年内に変化した政治的バイアスを測定すると、当初はプラス側に振れて「右寄り」を示していたグラフが途中から大きくマイナス側の「左寄り」へと大きく変化し、その後は徐々に中立へとシフトしている様子がわかります。



研究チームではこのようにして、2001年から2011年にかけて延べ290万人の編集者によって編集が加えられたアメリカの政治に関する合計7万件の記事を分析し、全体的な傾向としても政治的に中立な立場へと編集内容の多くがシフトしていることを解明しました。この傾向に、論文主筆者の1人であるGreenstein教授は「結果には非常に驚かされました。過去には非常に偏りのあった編集者でさえも、時を経るにつれて中立的な立場を取るようになっていました」と、実際の様子を語っています。

状況から察するに、最初は左右どちらかに振れていた編集者の多くも時を経るにつれてバイアスを弱め、徐々に中立な見方で編集を行うことに慣れてきたと考えられるとのこと。Wikipediaのガイドラインには、「善意にとる」という編集における姿勢や、記載には必ず事実による裏付けが必要とされるという内容が記載されています。また、実際に編集を行う際のアドバイスとして、「Take a breath and let's see what we can agree on. (ひと息ついて、内容に合意できる部分を探しましょう)」とも書かれています

研究チームによる論文は、以下のリンクから閲覧することが可能です。

(PDFファイル)15-023_e044cf50-f621-4759-a827-e9a3bf8920c0.pdf