第55味 マレーシア
狎治と金〞問題が、大きな足かせとなるマレーシア株式

政府系投資会社から巨額の不正資金が…。首相への疑惑が浮上

2016年もいよいよ終盤に入ります。これまでの株式市場のパフォーマンスは、新興国株式の回復基調が目立っていました。

この背景には、資源価格の下げ止まりによる景況感の改善や、当初は「年4回」といわれた米国の利上げペースが鈍化し、新興国からの資金流出懸念が後退したことなどが挙げられます。

とはいえ、こうした回復基調のペースが遅れている国があります。ASEAN(東南アジア諸国連合)の主な3カ国の株式市場の動向を比較してみると、マレーシアの株価指数の伸びが出遅れていることがわかります。

マレーシアは、原油、天然ガス、パーム油などを産出する資源国であるほか、人口も約3000万人と、さほど多くはありません。そのため、ASEANの中でも外需依存度が高く、世界景気の影響を受けやすい経済構造になっています。また、同国内の狎治とカネ〞の問題も、資金還流の妨げになっていると思われます。

実はこの問題、数年にわたってくすぶり続けています。事の発端は、1MDBという政府系投資ファンドです。主な投資対象は不動産や発電所で、ナジブ・ラザク首相の主導で2009年に設立されました。ところが、2013年から2014年にかけて、この会社が巨額の債務や赤字を抱えていることが判明し、1MDB自体の破綻やマレーシア国債の格下げ懸念などが高まりました。そして今年、1MDB発行の債券利払いのデフォルト(債 務不履行)が発生。

ここまでは典型的な債務問題でしたが、2015年に米国紙の報道をきっかけに、1MDBから巨額の不正資金がナジブ首相に送金されたのではないかという疑惑が浮上し、政治不安を絡めた問題へと発展しました。

今のところ、ナジブ政権の基盤が大きく揺らいだわけではありませんが、現在も米国やスイス、シンガポール当局が、同社の不正会計やマネーロンダリング(資金洗浄)の疑いで捜査を行ない、進捗次第では事態の急変が心配されます。

昨年、マレーシアは「第11 次マレーシア計画」(2016〜2020年)を策定しました。インフラ強化や技術成長、福祉向上などを通じて年平均5〜6%のGDP(国内総生 産)成長を目指し、先進国入りを目標としていますが、現時点では計画の先行き不透明感が強まってしまったといえそうです。

楽天証券経済研究所 シニアマーケットアナリスト
土信田雅之
新光証券などを経て、2011 年10月より現職。ネット証 券唯一の中国マニアでテク ニカルアナリスト。歴史も大 好きで、お城巡りと古地図 収集が趣味。