レジョン・ドヌール勲章を受章した北野武

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 北野武がフランスで、民間人に与えられる最高の国家勲章「レジョン・ドヌール勲章」における、オフィシエを受章した。北野はこれまでフランス政府から芸術文化勲章のシュバリエとコマンドールを授与されたことはあったが、レジョン・ドヌールは今回が初。

 10月25日(現地時間)には、北野が2010年に北野武/ビートたけし「絵描き小僧」と題された展覧会をおこなったパリのカルティエ財団で叙勲式が開かれた。元フランス文化大臣で現アラブ世界研究所所長のジャック・ラング氏は長いスピーチを披露し、「完全無欠のアーティスト」「限界がない」などあらゆる賛辞を贈り、幅広い分野で活躍する北野をたたえた。隣で真剣に聞き入っていた北野はそれを受けて、「こんな素晴らしい賞を頂いて感激です。ここにいられないほど恥ずかしい褒め言葉を頂いてどうしていいかわかりませんが……(笑)、自分がいろいろなジャンルの垣根を超えたと言われますが、本当のところは超えようとして超えられず引っかかっているところで、この受章でまた新しいジャンル、違うジャンルでも活躍できるようにと、力をもらったような気がします。本当に感謝しています」と語った。

 式に続いて記者会見を開いた北野は、フランスで全方位的なアーティストとして評価されていることについての印象を尋ねられると、こう語った。

 「アートというのは解釈の仕方に拠って、くだらないことがアート的なのかと分け隔てをする人がいますが、自分にとってはお笑いもアートだし、真面目な作品もアートなので、あまり気にはしていないですけれど、日本はやはりその道ひと筋と言いますか、その仕事以外のことに手を出すことがあまりよしとされない国民性があるのかな、と。自分はオリンピックとか陸上競技で言えば“10種類競技のチャンピオン”かと思いますけれど、単一の100メートル競技や陸上ではベスト10にも入らないだろうな、という気がして。フランスという国は(自分が)何をするにもそれなりの理解をしてくれるので、非常にありがたいと思います」

 また受賞のスピーチを受けて、「新しいジャンル、違うジャンルでの活躍とはどんな分野か」と尋ねられると、「そのためにはまず壊さなきゃいけない部分があって、いまのテレビやラジオについては(自分が)かなりの番組を企画して作ってきたことは間違いないと思うのですが、それを見たり聴いたりして育ってきた世代がいまのテレビを引き継いでいるなかで、ほとんど自分の作った番組のコピーしかないという現状も自分が作ったものだと思っているので、それをまず壊してから、新しいエンターテインメントに挑戦したいということです」と、いまのテレビ界への挑戦とも思える意欲的なコメントを寄せた。また最後に、「いい賞はたくさん欲しい。それは“落差”が出るから。『ホームレスの人がバナナを踏んで転んでも誰も笑わないけれど、総理大臣がバナナを踏んで転ぶとみんな笑う』とチャップリンが語った言葉がありますが、それと同じように、お笑いのためには素晴らしい賞を一杯もらって、それから落ちることが“落差がつく”ということだと思います」と語って、お笑い芸人の神髄をのぞかせた。

 叙勲式には、デザイナーの高田賢三、作曲家のアレクサンドル・デスプラ、カンヌ国際映画祭のディレクター、ティエリー・フレモーらも駆けつけた。北野の映画を初期の頃から高く評価してきたフレモー氏は、「日本映画には偉大な監督がたくさんいます。しかしそのなかでも北野は独自の声を持ち、日本映画界のみならず世界の映画界においても唯一無二の存在であると思います」と、評価を惜しまなかった。(取材/文/写真/佐藤久理子)