国内女子ツアーも、残り5試合。限られた選手しか出場できないTOTOジャパンクラシック(11月4日〜6日/茨城県)と、LPGAツアーチャンピオンシップ・リコーカップ(11月24日〜27日/宮崎県)を除けば(※)、わずか3試合となる。賞金ランキング上位50位までに与えられる、来季の賞金シード争いはまさに佳境を迎えている。
※TOTOジャパンクラシックは、富士通レディース(10月14日〜16日)終了時点で賞金ランク上位35名。ツアーチャンピオンシップは、今季ツアー優勝者、大会前週までの賞金ランク上位25名など。

 シード権獲得ラインを行ったり、来たりという戦いを強いられている選手にとって、シーズン終盤の10月から11月の試合は、それこそ正念場だ。10月24日現在、賞金ランク47位の香妻琴乃(24歳)は、そんな瀬戸際に立たされている。

 2014年から2年連続で賞金シードを獲得している香妻。今季は開幕戦から8月上旬のmeiji カップまで、19試合に出場して13試合も予選落ちを喫した。しかしその後、NEC軽井沢72からNOBUTA GROUP マスターズGCレディースまでに出場した11試合では、予選落ちはわずか2回。逆に3度のトップ10入りを果たしている。

 特に9月のミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンでは、初日に首位発進。2日目を終えても、首位と2打差の2位と優勝争いに絡んだ。結局、最終的には5位にとどまり、その悔しさは相当大きかったようだが、今季最高位の順位に手応えを感じた試合でもあった。

 夏場以降、確実にゴルフの調子は上向いている。その結果、当初は厳しい状況にあった賞金シードも、3年連続で獲得できる位置まできた。しかしながら、香妻本人は「まだまだ褒められるようなゴルフはできていない」という。

「(終盤戦を迎えて)ピンに向かって、しっかり攻めるイメージが持てるようになり、パットの距離感も合ってきました。ただ、全体的にショットの安定感、特にアイアンがまだまだですし、反省しなければならない点がいくつかあります。チャンスをモノにできれば、もっと上にいける手応えがあるだけに、悔しい気持ちがありますね。とにかく今は、前を向いて、がんばるしかありません」

 笑顔が似合う香妻だが、厳しい現状について語るときは、彼女の目は険しく鋭い。「勝ちたい」という気持ちが強い中で、結果が出ないことへの焦りが、そうした雰囲気にさせるのだろう。

 それでも、結果が出始めた後半戦。その要因のひとつは、専属コーチを務める中島弘二プロが、試合会場にもよく姿を見せるようになったからだろう。中島プロは今年で70歳を迎えるが、今年の日本プロゴルフグランド・ゴールドシニア選手権(ゴールドの部)で優勝するほどの実力者。日本女子プロゴルフ協会(LPGA)の小林浩美会長とも、かつて師弟関係にあった。

 練習場でスイング指導する中島プロのアドバイスは的確で、言われたことが香妻の中にスッと入ってくるのだという。

「スイングの教えでもそうなんですが、(中島プロは)自分のプレーをよく見てくれているな、と驚かされることが多いです。『あのときは、もっとこういう気持ちで打ったほうがよかったね』とか、『あのホールのセカンドショットから、すごく集中できていた。そこから確実によくなった』とか、試合中で感じたことをいろいろと伝えてくれるんです。それが、すごく励みになっています。

 あとは、精神的に楽になることや、ゴルフをやるうえで大切なことなど、心に刻まれる話をたくさんしてくれます。例えば、『自分でひとつだけ、これだけはやるっていう決め事を持っておかないと、ブレてしまうよ』と。そういう言葉は、自分の(成長するうえでの)財産になっていますね」

 その中島プロに、香妻のゴルフをどう見ているのか、聞いてみた。すると、こんな答えが返ってきた。

「まだ、自分の力を十分に発揮できていません。ゴルフがうまくかみ合っていないというか、スイングにも迷いがあります。"迷い"というのは、攻め方やコースマネジメントにおける迷い。まだまだ自分の中で"これ"っていうものがつかめていないのだと思います。それをつかめれば、もっと上位にいけますよ」

 香妻にはまだ伸びしろが十分にある――中島プロは、そう太鼓判を押す。そして、こう続けた。

「今は、スイングプレーンがよくなってきましたし、試合を見ていると、本人も徐々に何かしら手応えをつかみつつあるようです。今季は、あまり休まずに試合に出ていて、疲れもあると思いますが、とにかく実戦で慣れていくしかないんです。若くて、体力のある選手は、試合に出ることで学ぶことがたくさんあると、私は思います。だから、間を置くよりも、練習したことをすぐに実戦で試していくことが大事。そこで、自信をつけていかないといけませんから」

 70歳を迎えて、なおプロゴルファーとして現役を続けている中島プロの言葉には、説得力と重みがある。もちろんそれは、香妻への貴重なアドバイスでもある。

 中島プロからの熱心な指導と温かい助言を受けて、さらなるステップアップを目指す香妻。残り少ないシーズンにおいても、秘める決意は変わらない。

「現状、ゴルフの内容は悪くないんですけど、"いい"という感覚でもないんです。だから本当に、もう少しゴルフがかみ合えばいいなって思っています。賞金ランキングについては、シード権ぎりぎりのところにいますけど、そこは気にしていません。いつも言っていますが、私は優勝しか見ていませんから。

 そのために、今気をつけているのは、どうやったら勝てるかな、と考えすぎないようにすること。『うまくやろう。きれいにやろう』としすぎないようにもしています。1打、1打を大切にしながら、プレーしています」

 香妻が出場できる試合は、現時点では残り3試合。「優勝すること」しか見ていない彼女なら、シード権争いの重圧に負けることはないだろう。それが、最終的に好結果につながっていくのかもしれない。

text by Kim Myung-Wook