ソウルから北に300キロも離れた北朝鮮の平安北道(ピョンアンブクト)で、韓国のテレビ放送が受信できることが明らかになった。この地域で韓国のテレビの受信が確認されたのは初めてだ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。

脱北して最近、米国に到着したキムさんは、北朝鮮にいた頃に平安北道博川(パクチョン)郡のある軍官(将校)の家を訪ねたところ、次のような光景を目撃したという。

「そこの家族は、隠すこともなく韓国のテレビを見ていた。韓流ドラマなどの視聴を取り締まる『109常務』は、軍の敷地に立ち入ることはできない。それを利用して軍人家族は、心置きなく韓国のテレビを見ていた」

これまでも、韓国に接している北朝鮮の黄海道(ファンヘド)、江原道(カンウォンド)や、平壌、平安南道(ピョンアンナムド)順川(スンチョン)、咸鏡南道(ハムギョンナムド)の咸興(ハムン)一帯で、韓国のテレビが受信でき日常的に視聴しているという証言はあった。

しかし、韓国から遠く離れた平安北道で受信できるという証言はかつてなかった。キムさんは、「もっと北に位置してソウルから300キロ離れた雲山(ウンサン)郡でも受信可能だ。ただしどの家でも映るわけではない。南側に山がないことが条件だ」と説明した。

さらにキムさんは興味深い事実を証言した。

「高さがある指向性アンテナを設置した家でも韓国テレビ放送は見られる」

一般家庭で、そんなアンテナを設置しようものならたちまち見つかるが、取り締まり班が立ち入れない軍の敷地内だからこそできる荒業だ。

韓国の釜山(プサン)、馬山(マサン)など南部の海岸部一帯では、70年代から90年代前半にかけて、自宅に高いアンテナを立てて、日本のテレビを見ていたが、それと同じことが現在の北朝鮮で行われているのだ。

「面白いから」「情報を伝えてくれるから」という理由まで同じだ。ちなみに当時の釜山では、取り締まりではなく「日本のテレビを見るのはやめましょう運動」が展開されていたが、さほど効果がなかったそうだ。

平壌より南の地方では、韓国のテレビを見る人が増えるにつれ、今までテレビアンテナの向きにさほど関心を示していなかった取り締まり要員も、南の方向を向いていないかチェックするようになったという。

匿名の情報通信技術者は「北朝鮮のアナログカラーテレビ方式はPALで、韓国のNTSCとは異なるので、PALに変更した上で軍事境界線のそばで高い出力で送信すると、より多くの北朝鮮の人が韓国のテレビを見られるようになるだろう」と述べた。

一方、北朝鮮で使われているテレビの多くが中国製だが、NTSCにもPALにも対応しているものが多い。また、国産テレビを銘打っていてもブランドをすげ替えただけで実は中国製が多いため、わざわざ方式を変更しなくても韓国のテレビが見られるとの指摘もある。

さらに、韓国のテレビが受信できる中国製の携帯型テレビが北朝鮮に出回るようになったのとの証言もある。