秋はスポーツに適した時期。これから冬にかけてはマラソンイベントも盛んになるが、万が一のアクシデントから参加者の命を守ってくれるのが自動体外式除細動器(AED)である。日本で公共機関や商業施設などで設置が進んだAEDを、中国でも普及させよとの声が出始めているが、一方で「今設置しても意味がない」との意見もあるようだ。(イメージ写真提供:(C)coward_lion/123RF)

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 秋はスポーツに適した時期。これから冬にかけてはマラソンイベントも盛んになるが、万が一のアクシデントから参加者の命を守ってくれるのが自動体外式除細動器(AED)である。日本で公共機関や商業施設などで設置が進んだAEDを、中国でも普及させよとの声が出始めているが、一方で「今設置しても意味がない」との意見もあるようだ。

 中国メディア・中国経済網は14日、「AEDよりも救急知識の普及が急がれる」とする記事を掲載した。記事は、これまで馴染みのなかったAEDの普及を呼びかける声が日増しに大きくなっているとする一方で、「単にAEDばかりを推進するのは、本末転倒の感を否めない」と主張、応急救護に対する知識の普及が進んでいない現状で、AEDを普及させても「宝の持ち腐れ」になるとの見方を示した。

 そのうえで、ドイツで80%、米国で33%以上など世界の先進国において応急救護知識の普及率が高いのに比べて、中国での普及率は10%に満たないと指摘。社会全体の関心や教育が不足しているとした。そして、9月に湖北省武漢市の赤十字団体が実施した初級救護研修に参加し、証書を得た時の話を紹介。「お金を払って証書を買う」ような違和感を覚えたほか、あくまで個人からお金を取ってレクチャーする姿勢であり、公益活動には消極的である状況が浮き彫りになったことを伝えている。

 記事は、「日本の街の至る所にAEDを見かけるのが羨ましいと思うとともに、日本人は小さい頃から応急救護知識を学んでいることを忘れてはならない」と説明。浙江省杭州市では2014年末に購入した15台のAEDが、約2年間全く用いられていないとのニュースを紹介したうえで、1台10万円以上はする外国製のAEDを普及させるよりも学校や職場、地域コミュニティを単位として応急救護知識を普及させていくことこそが賢明な判断であると訴えた。

 街頭で転倒した高齢者に救いの手を差し伸べるのにも「勇気と覚悟」がいると揶揄される、今の中国社会。少なからぬ費用を投じてAEDを設置するよりもまず、応急救護の知識を普及させるべしという記事の主張はごもっともだ。しかし、さらにそれ以前に「困った人には迷わず救いの手を差し伸べる」という社会観念を改めて培うところから取り組まなければならない。(編集担当:今関忠馬)(イメージ写真提供:(C)coward_lion/123RF)