秋はスポーツの季節であり、日本をはじめとするアジアの国々では、「テニスの季節」である――。ATP(男子)とWTA(女子)のツアー大会は、9月から10月にかけてアジアが主戦場となるからだ。

 日本では9月に「ジャパン・ウィメンズ・オープン」と「東レ・パンパシフィックオープン」が立て続けに開催され、10月上旬には「楽天ジャパンオープン」を戦うべく、錦織圭をはじめとする世界の男子トップ選手が日本に集結した。さらに今年は、大阪の靭(うつぼ)テニスセンターで「国別対抗戦デビスカップ」の日本対ウクライナ戦が行なわれ、日本の勝利に多くのテニスファンが熱狂したのは記憶に新しいところだ。

 そのように秋の日本で燃え盛ったテニス熱をそのままに、12月2日から4日にかけての3日間、 "テニスの一大フェスティバル"とも言えるイベントが昨年に引き続き日本(さいたまスーパーアリーナ)に上陸する。それが、「インターナショナル・プレミア・テニス・リーグ(以下:IPTL)」だ。

 IPTLとは2014年に産声をあげたばかりの、革新的かつ野心的な、アジアを主戦場としたテニスの国際大会。ATPやWTAのツアー大会とは大きく異なる、エンターテインメント性に重きを置いたフォーマットやルールを採用しているのも特徴だ。

 提唱者は、ダブルスでグランドスラム11回のタイトルを誇る"インドの英雄"マヘシュ・ブパシ。彼の「アジアでのテニス人気を広めたい。多くの人たちに世界トップのプレーを間近で見てもらいたい」との願いに共感した者たちによって実現した、豪華絢爛のイベントである。

 大会形式はチーム対抗のリーグ戦で、アジアの主要国や都市を拠点とする5つの参戦チームが、15日間かけて各地を転戦。各チームは、現役の男女トップ選手と往年の名プレーヤーによって構成され、シングルスとダブルスにより雌雄を決する。さらに戦いを盛り上げるのが、1試合に1回、リターン時のみに使える「ポイント2倍チャンス」などのオリジナルルール。ベンチ采配やチームワークも、試合の行方に大きく関わってくる。

 そのような"テニス界の革命児"とも呼ばれるテニスイベントに、我らが日本代表も豪華メンバーを引っ提げて参戦することが決まっている。 チーム名は、その名も「JAPAN WARRIORS(ジャパン・ウォリアーズ)」。メンバーを牽引するのはもちろん、世界5位の錦織圭。日本女子代表としては、昨年に続き奈良くるみの参戦も決まっている。

 もうひとり、こちらも昨年から引き続きの参戦となるのが、元世界1位のマラト・サフィン(ロシア)。端正なルックスとコート内外で見せるチャーミングな言動、そして驚異のストロークで対戦相手を粉砕してきたテニス界の人気者が、今年も"ジャパン"の看板を背負って戦ってくれる。ちなみにこのサフィン、昨年は選手入場の際に奈良を"お姫様だっこ"して登場するなど、常にファンを喜ばせることを忘れぬエンターテイナーだ。

 さらに今年、新たに参加が正式決定したのが、"元祖・天才少女"ことマルチナ・ヒンギス(スイス)である。1990年代にテニス界を席巻し、グランドスラムでシングルス5回、ダブルス12回、混合ダブルスでも5度の優勝を誇る、まさにテニス界のレジェンドだ。

 しかも、彼女が何よりすごいのは、36歳になった今も主にダブルスで、その天与の才を遺憾なく発揮していること。契約ラケットがヨネックスということもあり、日本に深い愛着を感じているヒンギスである。才能に経験で磨きをかけたその妙技を、IPTLでも存分に発揮してくれることだろう。

 その日本が迎え撃つのは、インドやフィリピンに拠点を置く、いずれもスター選手から成る豪華チーム。昨年は、錦織とガエル・モンフィス(フランス)によるアクロバティックな攻防がコート狭しと繰り広げられたり、小柄な奈良が女王セリーナ・ウィリアムズ(アメリカ)を破るなど、数々の魅力的なカードが実現した。日ごろのツアーではまずお目に掛かれない"珍ダブルス"や、選手間の交流などが見られるのも、IPTLの魅力のひとつである。

 ATPとWTAによるツアーがテニス界の基本フォーマットとなっている現状では、IPTLのルールや存在そのものが、どこか異質に映る側面もあるだろう。だが、1968年に"オープン化"される以前のテニス界には、「ナショナルテニスリーグ」や「ワールドチャンピオンシップテニス」など複数のリーグや組織が存在し、プロ選手たちはそれらの団体と契約することで賞金を稼ぎ、技を磨き、そして卓越したプレーで観客たちを喜ばせてきた。その意味では、IPTLのようなイベントはテニス普及の原点回帰であり、現存のツアーシステムから漏れてしまう地域でその魅力を伝えるという、伝道師的な役割を担っているとも言える。

 また、新旧のスターたちが集うこの場から、思わぬ化学反応が生まれることもあるのも興味深い点だ。その最たる例は、元世界1位のカルロス・モヤ(スペイン)とミロシュ・ラオニッチ(カナダ)による「新師弟誕生」。実は両者が直接顔を合わせ、コーチ就任話を本格的に進めたのは、昨年のIPTL会場(それも神戸)だったのだ。

 テニスの魅力を再発掘し、時勢に合わせて構成し、新たなアイディアを提唱する――。伝統と革新がブレンドされるこのイベントから、テニスの次なる可能性が生まれるかもしれない。

内田暁●取材・文 text by Uchida Akatsuki