中国人の「爆買い」の勢いは止まったが、訪日観光客は増え続けている。中国人の関心は「モノ」から「コト」へと移った。中国人エリートは東大など日本の一流大学への留学を志向。中島恵著『中国人エリートは日本をめざす』は「爆留学」の実態に迫った力作だ。

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中国人の「爆買い」が昨年の流行語になったが、今年に入って円高や税関制度の変更などにより下火に。ところが今年1〜9月に日本を訪れた中国人観光客は500万人を突破、早くも、昨年年間実績を超えた。

中国人の関心は「モノ」から「コト」へと移った。「日本好き」は買い物から観光イベント、さらには留学へと向かう。日本の一流大学をめざす予備校まで日本と中国に存在するというから凄まじい。本書は「爆留学」の実態に迫った力作だ。

「日本の一流大学を卒業して、日本の一流企業に就職する。そして将来は日本に永住したい」というのが中国人学生の願望。この結果、東大はじめ日本の一流大学は中国人学生で溢れている。少子高齢化と景気低迷の中で閉塞状況が続く日本のどこに憧れるのか?

急増しした中国人訪日客が自分の目で見た日本への評価から、口コミで「日本好き」を拡散。若者の多くが、日本留学を目指すきっかけにもなっているという。日本の“平均水準”の高さ、生活しやすさ、学習環境の素晴らしさに魅力を感じているらしいが、どこまで長続きするか不安もよぎる。

中国と30年以上も係わってきたベテランジャーナリストならではの綿密な取材と鋭い分析に裏打ちされており、「中国人論」「日本人論」としても有用だ。中国競争社会の凄まじい実態や日本企業のダイバーシティ(多様人材の積極的活用)への問題点も描かれ、ビジネス論としても興味は尽きない。

著者がかつて上梓した『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』(中公新書ラクレ)や『「爆買い」後、彼らはどこに向かうか』(プレジデント社)と同様、「日中の政治体制は異なっても庶民は皆同じだ」という考え方が基本となっている。庶民同士が共感し合えば、日中の平和友好ムードも醸成されるだろう。

著者の「中国と日本国内に住む中国人エリートに的を絞り、彼らの個人的な体験やエピソードを一件一件聞いて歩く」丹念な取材が奏功。中国人の日本への“熱い思い”も伝わってくる。中国で、留学や就職の豊富な経験を持つ著者ならではといえよう。(評・八牧浩行)

<中島恵著『中国人エリートは日本をめざす―なぜ東大は中国人だらけなのか?』(中公新書ラクレ、780円税別)>