監督・脚本・主演を務めたネイト・パーカー

写真拡大

 今年のサンダンス映画祭で審査員大賞と観客賞をダブル受賞した話題作『バース・オブ・ネイション』(2017年日本公開予定)について、監督・脚本・主演のネイト・パーカーが10月5日(現地時間)、ニューヨークのAOL開催のイベントで語った。

 バージニア州で育った奴隷の少年ナット・ターナー(ネイト)は、彼を所有する白人から聖書を通して読み書きを学び奴隷のための説教師になった。だがある日、ナットの説教で金を稼ごうとする主人にアメリカ巡業に連れ出され、訪れる場所で奴隷の真実を目の当たりにしたことから、やがて奴隷たちと共に反乱を企てていくというストーリー。

 いつ頃、この企画が実を結び始めたのか。「僕はバージニア州北部で育ち、ナット・ターナーの反乱の地から東に42マイル(約67キロ)離れた所に住んでいたが、彼のことを全く学ばなかった。大人になって学んだが、僕と同様の体格の人物が、英雄としてアメリカ創生期の社会に命を捧げたことを、もし子供の時に知っていたなら、僕の進んできた人生や自信、そして自尊心なども変わっていただろう。その後僕は(俳優として)アーティストになったが、もし映画『ブレイブハート』のような壮大なストーリーを、アーティストとして伝える機会があるならば、それは『ナット・ターナー』になるだろうと思っていた」と答えた。

 ナットのストーリーを構築していく上で「通常、奴隷時代の話を描くと、奴隷解放を背景にしたり、(黒人が)正義のために戦ったりすることはあまりなくて、むしろ(奴隷を支配する)ひどい白人が登場することが多かった。それに僕らが学校で学ぶ奴隷制度よりも、実際の歴史はもっと複雑なものだ」と答えた。その奴隷の実態を掘り下げた上で、自由のために全てを犠牲にしたナットを描いていったそうだ。

 原題が巨匠D・W・グリフィスの『國民の創生』と同名なのは「あの映画はトーマス・ディクソンの小説『クランズマン』を基に描かれ、(南北戦争の)南部連合軍の子息によって脚本は記され、南北戦争とその後の連邦再建の時代が描かれていた。その後、有色人種が政府の役人として就任することが増え、白人の特権が失われ、国がひっくり返った。そこでD・W・グリフィスは、あの映画で白人至上主義を容認して描いた。現在も(有色人種を)映画で描くと、あの『國民の創生』に縛られている気がして、真のアメリカの英雄(ナット)を通して洗い落とす必要があった」と明かした。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)