オーテックジャパンは、エルグランドやセレナのライダーやマーチボレロなどのメーカー純正のカスタムカーを手がける日産の特装車メーカー。1986年に設立され、今年で30周年を迎えました。

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創立30周年記念してリリースされた「マーチボレロA30」は、限定30台、356万4000円で発売。即完売となりました。

今回、この限定30台というレアなモデルに試乗できることができました。

これまでオーテックジャパンは技術継承を目的として、創立10周年にA10、創立25周年にはA25や、マーチをベースにエンジンをミッドシップに搭載したMID-11というクルマを課外活動にて製作しました。

しかし、これらのクルマは販売を目的としたものではなく、あくまでも社内活動の一環による“まかないクルマ”でした。

こうしたクルマたちは年に一度大磯プリンスホテルで開催され、全国のオーテック車ユーザーが終結するオーテックジャパン主催のAOG(オーテック・オーナーズ・グループ)湘南里帰りミーティングでなどで展示され、ユーザーからは販売を望む声が多く聞かれました。

そこで、今回の30周年記念車は販売を前提としてプロジェクトが発足。アンケートを行った結果ベース車はマーチに決まったのです。

ノーマルのマーチ・ボレロは158万6520円、最高グレードのNISMO Sでも184万2480円のマーチ。A30の356万4000円という価格に驚くかもしれませんが、細部に至るまで徹底的に手が加えられています。

搭載する1.6L直列4気筒DOHCエンジンのHR16DEは、ノーマル比+1000回転の7000回転まで最高出力が発生するように高回転化が図られています。

専用のカムや強化バルブスプリング、バランスを向上したクランクシャフトなどを使用。コンロッドやピストンは重さの誤差がわずか0.1gという精密さを誇ります。そして職人の手によるシリンダーヘッドのポート研磨を施したうえ、一基ずつ手組されています。

パワーアップしたエンジンを十二分に楽しめるよう、約90mmワイドトレッド化されたボディは、リアフロアのフラット化&メンバーの追加をはじめとして5点の剛性強化パーツを追加することでボディ剛性を向上。

足まわりには、専用のサスペンション、サイズアップしたスタビライザーを装着。さらにエンケイと共同開発した専用の16インチ鍛造アルミホイールには、30周年記念車の刻印が施されています。専用ホイールに組み合わされる205/45R16インチのタイヤは、優れたハンドリングとロングドライブの直進安定性を両立させたミシュランパイロットスポーツ3チョイス。

そのほかにもブレーキの大径化や、VDCのリセッティングなど、ここでは書ききれないほどのチューニングが施されています。

 

筆者はマーチボレロA30のプロトタイプを追浜のグランドライブで試乗していますが、完成車の大きく張り出したブリースターフェンダーから、ただならぬポテンシャルを期待させます。

ドライバーの体をしっかりとホールドしてくれるレカロシートに腰掛け、触り心地のより革巻きステアリングを握ると、ワクワク度が一気に上昇します。

今回の試乗は、アンジュレーションや段差のある一般道で行いました。乗ってまず感じるのが、乗り心地の良さ。ボディ剛性の向上やストリートでの使用を重視したサスペンションシステムによって抜群の乗り心地を実現しています。

試乗コースの西湘バイパスは、路面のつなぎ目などがありバンピーなうえ、路面もガタガタで乗り心地が悪い部分があります。しかし、マーチボレロA30はそんな路面状況でも路面からの入力をいなしてくれ、非常にフラットな乗り味となっています。

そしてエンジンですが、「本当に気持ちイイ!」の一言につきます。アクセルを踏んでいくと、高回転までパワーの落ち込む部分がなく、気持ち良くレッドゾーンまで回ります。ただ、エンジンの回りが気持ち良すぎるため、ミッションがもう一段欲しくなるシーンもありました……。

最近では国産車でも最高出力600psというハイパワーなクルマもありますが、このマーチボレロA30の150psはドライバーが楽しく使い切るベストなパワーだと思います。誰が乗っても扱えるようにボディやサスペンションがセッティングされており「思わずにやけてしまう走行性能」に偽りはありませんでした。

2016年は日産とプリンスが合併して50周年を迎えます。航空機系の企業だったプリンスはスカイラインなどがモータースポーツシーンで活躍した自動車メーカーでした。そして今年創立30周年を迎えるオーテックジャパンの初代社長はプリンス出身でスカイラインの父を呼ばれた櫻井眞一郎さんです。

30台の限定車であるマーチボレロA30には、メイドイン茅ヶ崎の職人の誇りと高い技術力というプリンスのDNAが息づいているのを感じました。

(萩原文博)

マーチ ボレロA30の楽しい乗り味に、プリンスのDNAを感じた(http://clicccar.com/2016/10/25/410298/)