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By OnInnovation

ビル・ゲイツ氏やマーク・ザッカーバーグ氏、さらにはWebの考案者ティム・バーナーズ=リー氏やWikiLeaks創設者ジュリアン・アサンジ氏などが過去に登場したことがある、著名人が一般ユーザーの質問に直接回答するRedditの名物コーナー「AMA(Ask Me Anything: 何か質問ある?」にイーロン・マスク氏が降臨して、SpaceXが開発に関わっている「火星移住計画」について質問に答えています。

I am Elon Musk, ask me anything about becoming a spacefaring civ! : spacex

https://www.reddit.com/r/spacex/comments/590wi9/i_am_elon_musk_ask_me_anything_about_becoming_a/

Here’s what we learned from Elon Musk’s SpaceX Reddit AMA - The Verge

http://www.theverge.com/2016/10/23/13375220/elon-musk-reddit-ama-spacex-mars

マスク氏は2016年9月にメキシコのグアダラハラで開催された国際宇宙会議の場で、2020年代に惑星間輸送システムで火星に人を送り込む計画を発表しました。マスク氏はこの計画の中で、人類の火星入植に加え、人類を地球だけではなく複数の惑星に暮らす「マルチプラネタリー」な種族にすることを狙っていると語っています。

今回のAMAでは、この計画についての質問が数多く投稿され、マスク氏本人からの回答が寄せられています。

◆ロケットと推進装置について

火星まで人類を運ぶ計画では、SpaceXのロケット「Falcon 9」およびその大型版である「Falcon Heavy」を打ち上げに用いる「Interplanetary Transport System (ITS:惑星間輸送システム)」で人員や物資などを輸送することが発表されています。

このITSが火星上空に到達して着陸に向けた準備を行う際に「待機中でホバリング(空中浮遊)できるのか」と尋ねられたマスク氏は「予測していなかった風などの不測の事態に直面しない限りは、ホバリングする必要はありません」と回答。これは燃料を節約するという目的のためのもので、上空で着陸ポイントを決めたら一直線に着地することになるようです。

また、ITSは最大で20G(重力加速度の20倍)の力に耐えることができるよう設計されているとのこと。通常の使用では5Gを上限として運用されることになりますが、さまざまな事態に対応するために、通常の2〜3倍程度の負荷にも耐えられるように作られることとなります。

ITSの次に取り組むべき課題としてマスク氏は、「ロケットエンジンのメイン燃焼室のように、高温の酸素ガスが300気圧という高圧になる環境でも燃えてしまわないという極めて高い耐酸化性を持つ新しい合金の開発」であるとしています。そのような環境下では通常の物質であればほとんどが燃え尽きてしまうことになるため、高い性能を持つロケットエンジンの開発には新合金が不可欠だとのこと。以下のムービーのように、ITSで用いられる予定のロケットエンジン「Raptor」のテストがすでに開始されており、必要な性能は得られつつあるようですが、まだ開発できる余地は残っているとマスク氏は語っています。





また、エンジン同様に燃料タンクの耐食性向上も課題の1つとのこと。炭素樹脂で作られるタンクに、極低温の推進剤を加圧して注入するという過酷な環境に耐えられるための素材や方法の開発が重要であると語り、これには鉄とニッケル、マンガンなどから作られる合金のインバー(アンバー、不変綱とも)の薄い層を設けることで対処できるかもしれないと見通しを明らかにしています。

Falcon 9ロケットの今後の発展について尋ねられたマスク氏は、Falcon 9シリーズの最終バージョンは「Falcon 9 Block 5」という名称のバージョンが最終形になると言及しています。Falcon 9の大きな特長の一つが打ち上げ後に地上に帰還するという「再利用可能」な点ですが、Block 5の段階に達したFalcon 9は再利用が非常に容易なものとなり、定期的なメンテナンスを行うことでほぼ無限に打ち上げを繰り返すことができるようになると語っています。

◆火星での物資や住環境について

実際に火星に到達した後に、活動に必要な燃料の補給について尋ねられたマスク氏でしたが、現段階ではあまり多くを語れる状況にはなかった模様。ただし、そのヒントとして、まず無人の「偵察用ロケット」を火星に送り込み、安全に着地する方法を調べつつ、サバティエ反応を用いて水素と二酸化炭素からメタンと水を取り出す方法を検証するつもりであることを明らかにしています。これは、人間が吐き出す二酸化炭素から、触媒を用いることで生存に必要な水を作り出すもので、火星への入植を進める上で非常に重要な技術と言うことになりそう。

また、実際に人類が生活を送る環境についてマスク氏は「初期段階では、カーボンファイバーのフレームにガラスがセットされた三角形のパネルを組み合わせた半球状のドーム「ジオデシックドーム」を地表に造る。そして地面を掘り進むロボットを大量に使って、地下にトンネルと空間を作り、大気圧に加圧された生産活動用の空間を作る。地表のドームは生活を送る温室として使用する」というプランを述べています。

なお、ロボットについていえば、マスク氏はAI(人工知能)を開発する団体「OpenAI」を複数のIT企業などと立ち上げています。この技術の活用については、今回のAMAではほとんど触れられていません。

◆火星へのフライトについて

マスク氏は今後、火星へのフライト回数を大幅に増加させると語っており、26か月に一度訪れる最も低エネルギーで火星に到達できるホーマン遷移軌道を利用できるタイミングに打ち上げるロケットの数を2倍に引き上げる構想を述べています。とはいえ、このタイミングを利用するのは医療物資などの緊急物資や、必要な専門家を送り込むときだけになるだろう、とも述べており、打ち上げが26か月に一度しか行われないというわけではなさそうです。

このほかにも、マスク氏のAMAには5000件以上の質問が投げかけられているとのこと。もちろん全てに回答しているというわけではありませんが、宇宙に関心のある人から寄せられる質問の数々は以下のスレッドで見ることが可能です。

I am Elon Musk, ask me anything about becoming a spacefaring civ! : spacex

https://www.reddit.com/r/spacex/comments/590wi9/i_am_elon_musk_ask_me_anything_about_becoming_a/