■2016−2017シーズン展望
@ウェスタン・カンファレンス編

 今季のウェスタン・カンファレンスは、ケビン・デュラント(SF)が加入したゴールデンステート・ウォリアーズの話題で持ちきりだ。最強ウォリアーズは、今季何勝を挙げるのか――。ただそれは、「すべてが噛み合えば」の話。予想外の波乱が巻き起こる可能性だってある。はたして、ウェスタンに君臨するオールスター軍団を凌駕するチームは現れるのか?

 昨季のウォリアーズは、マイケル・ジョーダン率いるシカゴ・ブルズが1995−1996シーズンに残した72勝を上回る73勝を挙げ、NBA記録を更新した。しかし、レブロン・ジェームズ(SF)擁するクリーブランド・キャバリアーズにNBAファイナルで敗退。連覇の夢を断たれたウォリーズは今オフ、FAとなったデュラントに触手を伸ばした。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。

 デュラントは昨季、オクラホマシティ・サンダーの一員としてカンファレンス・ファイナルでウォリアーズと戦い、僅差(3勝4敗)で敗れ去っている。ポール・ピアース(SF/ロサンゼルス・クリッパーズ)はデュラントの移籍が報じられた直後、「勝てないのなら、仲間になれ」とツイッターで皮肉った。

 こんなに僻(ひが)まれるほど、今季のウォリアーズの戦力は他を圧倒している。ステファン・カリー(PG)、クレイ・トンプソン(SG)、デュラント(SF)、ドレイモンド・グリーン(PF)と、スターター4人までもがオールスター選手。その強さを表すように、『CBSSports.com』がこんな記事を掲載している。

「ある球団のフロントが選手たちのスタッツをもとに、今季の成績をコンピューターで試算。すると、昨季王者のキャブスは『レギュラーシーズン64勝』という数字が出た。それに対し、ウォリアーズは『83勝』という数字が算出された」

 ご存知のとおり、レギュラーシーズンは82試合。今季のウォリアーズの戦力はそれほどまでに圧倒的で、将来「NBA史上最強チーム」と呼ばれる可能性すらある。

 そのウォリアーズを追うのは、昨季ウェスタン2位のサンアントニオ・スパーズと、4位のロサンゼルス・クリッパーズだろう。

 スパーズはティム・ダンカンが引退したものの、パウ・ガソル(C/前シカゴ・ブルズ)の獲得に成功し、チーム力は落ちていない。それどころか、昨季のオールNBAファーストチームに選出された新エース、カワイ・レナード(SF)がさらなる進化を遂げそうだ。

 移籍2年目のラマーカス・オルドリッジ(PF)は今季、よりチームにフィットしてくるだろう。また、オーストラリア代表としてリオ五輪で平均21.3得点(全体2位)をマークしたパティ・ミルズ(PG)も、プレシーズンゲームで好調を維持している。スパーズのチーム力は、昨季以上と言っていい。

 クリッパーズは昨季、優勝候補の一角に挙げられたものの、得点源のブレイク・グリフィン(PF)が右手を骨折してシーズンの大半を欠場した。プレーオフ1回戦では司令塔のクリス・ポール(PG)も右手を骨折して離脱し、チームはあっさりと敗退。まさに"呪われたシーズン"だった。幸い両選手とも、今季は健康を保った状態でシーズンを迎える。9月にベテランのポール・ピアース(SF)が、「これで終わり。俺のファイナルシーズン」とメッセージを発表しているだけに、是が非でも今季は結果を残したい。

 一方、大幅に飛躍しそうと言われているのが、ミネソタ・ティンバーウルブズ(昨季ウェスタン13位)とユタ・ジャズ(同9位)の2チームだ。

 ウルブズはケビン・ガーネットが引退したものの、今季の戦力は充実している。新エースのアンドリュー・ウィギンス(SF)は昨季2年目にして平均得点を20点台(平均20.7得点)に乗せ、昨季の新人王カール=アンソニー・タウンズ(C)も10月19日のメンフィス・グリズリーズとのプレシーズンゲームで31得点・9リバウンドと大活躍。2年目の今季、成績をアップさせるのは間違いない。

 また、「スペインの至宝」リッキー・ルビオ(PG)や「ダンク王」ザック・ラビーン(PG)など、脇を固めるメンバーも魅力的で、今年のドラフト全体5位で獲得したクリス・ダン(PG)もサマーリーグ2試合で平均24.0得点を挙げ、新人王最有力という評価を得ている。幼少期を劣悪な環境で過ごし、賭けバスケで生活費を稼いでいたという22歳の新人ポイントガードは、チーム13年ぶりのプレーオフ進出に大きく貢献しそうだ。

 昨季わずか1勝及ばずにプレーオフ進出を逃しているジャズは、ジョージ・ヒル(PG/前インディアナ・ペイサーズ)、ジョー・ジョンソン(SF/前マイアミ・ヒート)、ボリス・ディアウ(C/前サンアントニオ・スパーズ)といったベテランを補強し、着実に戦力を増強させた。

 身長216cm、ウイングスパン236cmのルディ・ゴベール(C)はリーグトップクラスのビッグマンに成長し、左ひざ前十字じん帯を断裂して昨季全休したダンテ・エクザム(PG)も無事に復帰。エースのゴードン・ヘイワード(SF)が左手薬指を骨折して開幕には間に合わないため、スタートダッシュできるかは疑問だが、今季は確実にカンファレンス上位に名を連ねるはずだ。

 そして今季のウェスタンの大穴は、ヒューストン・ロケッツではないだろうか。昨季は優勝候補のひとつと言われながら、チームの内紛により失速。第8シードでプレーオフに進出するのがやっと、という体たらくだった。騒動の発端となったドワイト・ハワード(C)をアトランタ・ホークスに放出し、今季はリーグ屈指のスコアラーであるジェームス・ハーデン(SG)中心のチームへと変身する。

 ロケッツは今オフ、外からのシュート力に定評のあるエリック・ゴードン(SG)とライアン・アンダーソン(PF)をニューオーリンズ・ペリカンズから獲得した。まずはハーデンがドライブで得点を狙い、複数のディフェンスがハーデンに釣られれば、アウトサイドでノーマークになっている選手を探してキックアウトする。パスを受けた選手がアウトサイドショットで得点を狙うというスタイルだ。

 このオフにはヘッドコーチも変えた。新たにロケッツを指揮するのは、オフェンス好きのマイク・ダントーニ。フェニックス・サンズ時代に「ラン&ガン」で一世を風靡した新HCの手腕にも注目したい。

 多少の失点には目をつむり、とにかく大量得点を狙うスタイルは、ディフェンスで手を抜く傾向があるハーデンにピッタリ。今季のロケッツはまさに、ハーデンの、ハーデンによる、ハーデンのためのチームが完成した。その思惑どおり、プレシーズンゲームでは平均118.6得点を記録し、平均112.7得点のウォリアーズを2位に追いやり、リーグNo.1の攻撃力を披露している。

 ウォリアーズに総合力や正攻法で勝つのは、まず不可能。そう考えると、スパーズやクリッパーズは正面突破でいい試合こそすれども、競り負ける可能性が高いように思える。逆に、特化した武器とスタイルを持つロケッツのようなチームのほうが、ウォリアーズに勝つ可能性はあるのではないだろうか。

 最後に今季注目の選手として、フェニックス・サンズのデビン・ブッカー(SG)の名を挙げておきたい。プロ2年目で現在19歳のブッカーは、昨季後半戦から頭角を現し、レブロン・ジェームズ、コービー・ブライアント、ケビン・デュラントに次ぐ歴代4位の若さで通算1000得点を記録した。レブロンに「次世代のスーパースター」と評された逸材である。10月7日に行なわれたポートランド・ブレイザーズとのプレシーズンゲームには、30分出場して34得点と大爆発。今季、どこまで飛躍するか目が離せない。

 ウェスタン・カンファレンスは今季も、数多のライバルを蹴散らしてウォリアーズが独走するのか。それとも、強すぎるゆえにヒールとなったウォリアーズを打ち破るヒーローが現れるのか。待ちに待った2016−2017シーズンがいよいよ幕を開ける。

※数字は10月22日現在

水野光博●文 text by Mizuno Mitsuhiro