内山篤監督率いるU-19日本代表はチームの基本スタイルであるサイド攻撃によってアジアの壁を破った

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[10.24 AFC U-19選手権準々決勝 日本 4-0 タジキスタン]

 取り戻した武器は、この日も健在だった。AFC U-19選手権準々決勝・タジキスタン戦。10年ぶりの世界切符を懸けた決戦に際して、U-19日本代表は特別な術策を持っていたわけではない。チーム首脳陣が意識させていたのは「ずっと積み上げてきたものを出す」(木村康彦コーチ)ということ。イエメンとの初戦、イランとの第2戦と「あまり良い内容のゲームができなかった」(内山篤監督)のだが、その最大の要因は、そもそもチームが取り組んできたことを出せていなかったことにある。

 悪く言えば自分本位なプレーが目立った初戦の内容を受けて、個々人に対するアプローチはもちろん、チームとしての方向性を再確認する必要があった。「両サイドハーフに(堂安律と三好康児という)タメを作れる選手がいる」(FW小川航基、磐田)ことを活かし、SBのオーバーラップを活用しながらのサイド攻撃は、ずっと取り組んできたものである。にもかかわらず、ドリブルとワンツーを使った中央攻撃一辺倒で、自滅するシーンが目立ってしまった。4-4-2という配置のメリットも、クロスからの得点を狙いやすい点にあるのだから、いわば本末転倒。内山監督の言葉を借りれば、「横を使うから縦も空く」のである。

 ベストゲームと言える内容になったカタール戦の事前練習では、サイド攻撃からのフィニッシュの形を徹底して繰り返した。イメージも大切なので、過去の映像も見せた。「自分の得点はクロスからのものが多い」(小川)とあらためて、外からのボールに合わせてゴールを奪うというチームの基本が確認された。最初の2試合はクロスを入れられる場面でも個人がボールを持ってしまう場面が目立ったが、直近2試合はシンプルに中へ入れる形が増加。この2試合で、中で待つタイプの小川のシュート数が急増したのは必然だった。

 対タジキスタンという意味でも、「サイドを起点に2対1を作るシンプルな攻撃が有効という共通意識は持っていた」(DF中山雄太、柏)。実際、小川の先制点は堂安律(G大阪)が迷わずクロスを選択した形から生まれているし、2点目も速攻から三好がサイドを突破してこれまたシンプルにクロスを選択し、ファーの堂安が決めたゴール。2トップに加えて逆サイドのMFがクロスに入っていく形は練習から徹底してきたもので、まさに練習の賜物と言えるシーンだった。

 イエメンとの初戦は、もしかすると選手たちの描いた絵と監督が思っていた絵に差があったのかもしれない。ただ、この決戦に至って描いた絵にズレはなかった。試合前に堂安が「自分たちのサッカーを貫く」と言ったときに、間違いなくサイド攻撃からの得点というイメージはあったはず。内山監督は「ようやく選手がこのプレッシャーの中で、逆につかんできた」という表現をしたが、監督と選手の描く絵が共有され、ピッチ上で11人がしっかりとシンクロした結果が、10年ぶりの世界大会出場という形で結実することとなった。

(取材・文 川端暁彦)